メンター制度って何?メンター制度を導入するときに注意すべき4つのポイント

編集部

新入社員の成長と定着のためにメンター制度を導入している企業は多くあります。(呼び方はメンター制度のほかに「ブラザー・シスター制度」「チューター制度」など様々です) その一方で、メンター制度が十分に機能しているかといえば、そうではないケースも数多くみられます。たとえば、メンターはつけたけれど、実際にはほとんど新入社員とのコミュニケーションができていない、メンター個人によってサポートの仕方に大きなばらつきがあるなど。 カイラボでは、これまでメンター研修もご提供してきました。今回は、メンター制度を導入する際の注意点を紹介します。

メンター制度とは?メンターって何する人?

メンター制度とは企業の人材育成において、上司やOJT指導などの社員とは別に新入社員をサポートする先輩社員(メンター)を置き、継続的に新入社員をサポートしていく制度のことです。
会社によってメンターの役割は異なりますが、業務指導よりも新入社員の悩み相談や精神面のサポートをメインにすることが多くなっています。

メンターという言葉は「メンタリング」が由来になっていますが、メンタリングについてWilkipediaには以下のように記載されています。


メンタリング英語:mentoring)とは、人の育成、指導方法の一つ。指示や命令によらず、メンター(mentor)と呼ばれる指導者が、対話による気づきと助言による被育成者たるプロテジェ(protégé)ないしメンティー(mentee)本人と、関係をむすび自発的・自律的な発達を促す方法である。
プロテジェがメンターから指導・支援・保護されるこの関係をメンター制度(メンターせいど)ないしメンターシップ(mentorship)と呼ぶ。

(Wilkipediaより)

ここからは、今回の本題である、メンター制度導入の際に注意したい4つのポイントをご紹介します。

ポイント1:全社員でメンターの役割認識を共有する

メンターの役割は、メンター本人だけが認識しているだけでは十分ではありません。

メンター本人に加えて、人事、メンターの上司、OJT担当者、新入社員の五者で、しっかりとメンターの役割についての認識を共有することが大切です。 メンター本人が認識しているメンターの役割と、人事がメンターに期待している役割が異なるといったケースがあります。

また、メンターの上司が、部下がメンターになったことすら把握できていなかったケースさえも聞いたことがあります。

これらはいずれも、認識のすり合わせができていないことが原因です。 メンターの割り振りが決まった際に、人事からメンターの上司に「あなたの部署のAさんがメンターになりました」とメール一本で済ませるだけでは、十分ではありません。

上司の方も忙しく、そのメールの重要性を認識できていない可能性もあるからです。

メンターの役割は、会社によっても、メンター制度の目的によっても変わります。自社で規定したメンターの役割について、メンター本人と新入社員だけでなく、彼らを取り巻く周りの方々も共通認識を持っておくことが非常に大切です。

ポイント2:メンターへの事前教育

メンターへの事前教育をしっかり行うことも大切です。特に必要なのは、傾聴力とコミュニケーション力のアップです。それぞれの力について少し詳しくご説明します。

傾聴力のアップ

入社直後、仕事について右も左もわからない新入社員はたくさんの悩みを持っています。そんな時にもっとも相談しやすい身近な人がメンターです。

ただし、メンターが「何か悩みがあったら相談してね」と声をかけるだけではうまくいきません。新入社員は自分の悩みをうまく言語化できないこと自体が悩みになるケースも少なくないからです。

新入社員の中には
「なぜ上手くできないのかわからない」
「どういう風に相談すれば良いかわからない」という方もいます。
このような時にメンターによっては「相談してって言ったよね?」「なぜ相談してくれないの?」と新入社員に対してきつくあたってしまいがちです。

メンターの方の気持ちもわかりますが、一度でもこのようなことがあると、それ以降、新入社員がメンターに相談しにくくなってしまいます。メンターの方は、新入社員からの相談がなかった場合でも、相手の言葉にしっかりと耳を傾ける力を養うことが大切です。傾聴力とは、その場で話しを聞きだす技術だけでなく、相手が話しても大丈夫と思える安心感や信頼関係を日頃から築ける力も含みます。

コミュニケーション力のアップ

日頃からの信頼関係を築くためには、コミュニケーション力も大切です。

コミュニケーションといっても、ただ単に話がうまければよいという訳ではありません。信頼関係を築くために、相手のことを尊重しながら会話のキャッチボールができることが大切です。

傾聴力とコミュニケーション力をどう上げていくのか。
このポイントを事前教育の際にメンターへ伝えてあげてください。

メンターへの事前教育は、私たちカイラボへも問い合わせの多い内容です。最近ではメンター研修として多くの企業様へご提供させていただいています。

ポイント3:メンターを孤立させないフォロー体制づくり

新入社員のフォローをするのがメンターの役割ですが、メンターの方へのフォローも大切です。メンターの方へのフォローにおいて大切なポイントをいくつかご紹介します。

メンターの負担の理解とすぐに相談できる体制作り

自らの実務がある中で新入社員の相談に乗るメンターの役割は、想像以上に大変です。そのため、メンターが疲労で体調を崩したり、精神的にダウンしてしまうケースもあります。 周囲の方々は、まずはメンターが抱える負担をしっかりと認識しましょう。その上で、メンターにも相談役を付けたりすることで、すぐに相談できる体制を作ってあげることが大切です。

メンターのメンターという役割をつくる

ある会社では、入社3年目の社員が原則的にメンターの役割を担い、翌年(入社4年目)にメンターのメンター役を担う仕組みを作っています。

このケースでは、入社3年目にメンターを担当する方は、悩んだ際に一つ上の先輩、つまり前年にメンターを経験した先輩に相談することが可能です。

メンターから相談を受ける入社4年目の社員も、自身がメンターの時は一つ上の先輩社員に相談しています。この流れを毎年繰り返すことで、良い循環を作ることができるのです。

ポイント4:メンター制度を形骸化させないための職場全体でのバックアップ体制

せっかくつくったメンター制度が形骸化してしまうケースもよく見られます。

形骸化を避けるためには、職場全体でのバックアップが必要です。

メンターやOJTの役割を担う社員がいると、新入社員の教育と育成を担当の社員丸投げしがちです。その背景には、一人ひとりの社員が日々の仕事で忙しく手が回らないこともあるのでしょう。

一方、新入社員や若手社員が今後の戦力になった際に恩恵を受けるのは、職場全体です。ですから、職場全体が教育と育成に関わっていく必要があるのです。

メンターやOJT担当などの役割を設定していても、担当者が全てを担わなければならないわけではありません。メンターではない先輩や上司にもバックアップできることはあります。

メンターやOJT担当の後輩、つまり新入社員の先輩にあたる入社2〜3年目の社員ができることも、また存在します。

大切なことは、部署に入ってきた新入社員や若手社員を育てるのは部署全体である意識を持つことです。その上で、メンターの役割は何なのか、部署全体としてどういったサポート体制を敷いていくのか、部署のメンバー全員でしっかりと認識を統一しておきましょう。

メンター制度を形骸化しない仕組みをつくり、職場全体で人材育成の課題に向き合うことが大切

ここまでご紹介したメンター制度を導入するときに注意すべき4つのポイントを押さえておけば、メンター制度が形骸化することなく成功に近づきます。

一方で、新入社員とメンターには相性があるのも事実です。うまくいく組み合わせもあれば、うまくいかない組み合わせもあります。

まずは本日紹介したポイントを参考にしながら形骸化しない仕組みづくりをしていただきたいのですが、その上で相性の問題を考慮した人材配置や、その他の課題に対して職場全体で取り組んでいくことが重要です。

このようにPDCAサイクルを回しながら新入社員の教育と、育成、定着を両立できるように取り組んでみてください。