さまざまな離職対策に取り組む企業にお話を聞く企業インタビュー。
今回は岡山県にある株式会社WORK SMILE LABOの代表取締役、石井聖博さんにお話しをうかがいました。

WORK SMILE LABOは岡山県にある社員34名の会社。女性の働き方改革でテレワークを導入し、中小企業としては先駆的な事例を残し、その結果2018年総務省テレワーク先駆者百選総務大臣賞受賞を受賞しています。また2022年、岡山県の希望就職先ランキング第一位と注目のWORK SMILE LABOさんに先駆的な働き方の秘訣をお聞きしました。

1.働きやすい環境整備はビジネスモデルの転換がきっかけ

カイラボ代表 井上
カイラボ代表 井上
WORK SMILE LABOは数年前に経営危機に直面しながら、働きやすい環境を整備してV字回復を果たし、さらに2022年の岡山県希望就職先ランキング第一位ということで、今日はお話し聞けることが非常に楽しみです。よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
石井社長
石井社長
カイラボ代表 井上
カイラボ代表 井上
まずは、経営危機からV字改革をしていく中で、社員の働きやすい環境の整備をはじめた理由やきっかけを教えていただけますか?
経営危機の時に、オフィス用品の販売ではなく「よい働き方を提供する会社」へと自社のビジネスモデルを変える必要がりました。その変革の過程で「顧客に真似をしてもらいたいような働き方をしよう。」と思ったのがきっかけです。自社が働きやすくないのに「このツールを導入すれば働きやすくなりますよ」とは伝えられないですから。
石井社長
石井社長
カイラボ代表 井上
カイラボ代表 井上
最初は ビジネスモデルの転換がきっかけだったんですね。ビジネスモデルの転換は簡単ではないと思いますが、どのように進められたのですか?
まずは社員から働き方に関する課題を出してもらい、それを解決する働き方を作り出し実践していきました。その中からうまくいった方法を顧客に商品として提供する。というビジネスのやり方です。
自社の社員が満足した働き方をしていないと、顧客に良い働き方の提供はできませんからね。
石井社長
石井社長
カイラボ代表 井上
カイラボ代表 井上
なるほど。課題の洗い出しというのは、どんな風に進められたのですか?
毎月の会議で社員の方から働き方の改善のための意見をだしてもらっています。
様々な例がありますが、テレワークの導入などがその例です。

2016年頃のことですが、子供が頻繁に体調を崩すので会社を休んだり、早退したりする機会が多い女性の社員から「どうにかなりませんか?」という声が上がりました。
当時まだテレワークという言葉もない時代でしたが、家で仕事ができる環境を整えれば課題を解決できると思い、在宅勤務の導入にトライしてみることにしました。その結果、その女性の社員は仕事を退職せずに済んだし、働きやすい環境も整備できました。
元々は男社会の会社でしたが、今は男性20人に対し女性社員が14人と、少しずつ女性の社員が定着しつつあります。

石井社長
石井社長
カイラボ代表 井上
カイラボ代表 井上
2016年からテレワークを開始しているのは早いですね。新型コロナが2020年なので、4年も早くから実践されているんですね。
実際に自社の社員の方に実践してもらい、それをお客様にも提供できるビジネススタイルは確かに説得力がありますね。

 

2.テレワークだからこそ評価制度の整備は力を入れている

カイラボ代表 井上
カイラボ代表 井上
多様な働き方実現のために導入している仕組みや制度があれば教えてください。
そうですね、特に評価制度は力を入れて整えています。
やはりテレワークだと自由度が増しますので、生産性が落ちないように、一人当たりの時間の生産性をはかる「人時生産性」という制度を導入していて、そこは評価のウエイトを高くしています。テレワークなどの多様な働き方ができる環境を、ひとりひとりが「生産性を上げるツール」として社員には活用してもらいたいからです。
石井社長
石井社長
カイラボ代表 井上
カイラボ代表 井上
生産性の向上は今いろんな企業でテーマになっていますが、生産性を測るためにどのような測定基準を設けていますか?
期間ごとに目標を設定して、その達成率を測っています。
営業は売り上げなどの数字があるので目標設定を定量化しやすいんですが、定量化しにくい事務職や技術職にも取り入れています。
具体的には、社員の成長度合いなども数値化して、目標を立てることで成果を数値化、定量化しています。
石井社長
石井社長
カイラボ代表 井上
カイラボ代表 井上
営業以外の職種の方へも生産性の指標をつくってしっかり運用されているのは素晴らしいですね。

3.採用は徹底的な理念・ビジョン型

カイラボ代表 井上
カイラボ代表 井上
新卒採用を積極的におこなっているとお聞きしました。地方の中小企業は新卒採用をしたいけどうまくいかないという声もよく聞きます。御社が新卒採用を行うにあたって工夫していることなどを是非、教えてください。
私が8年前に新卒採用をやり始めたとき社員は10数名の会社 でした。当時は社名も石井事務機センターという会社だったのですが、今後の会社の成長を考えると、若い人材が入ってくる仕組みづくりが必要だと考え、新卒採用に踏み切りました。
最初はなかなか人材が取れないので自社独自のやり方を考えたところ、自社の理念・ビジョン・価値観で引き付ける「理念・ビジョン共感型採用」に行きつきました。
その結果、応募人数も増えてビジョンに共感する社員が増えていきました。
石井社長
石井社長
カイラボ代表 井上
カイラボ代表 井上
理念やビジョンは大切ですよね。
理念やビジョンを伝えたいと思っている経営者の方々に話しを聞くと、学生に最初に認知してもらうのに苦戦している中小企業が多いのですが、どのようにして理念を伝える学生との接点を増やしていったのでしょうか?
主に合同説明会の場で理念とビジョンを伝えていきました。
石井社長
石井社長
カイラボ代表 井上
カイラボ代表 井上
合同説明会だったんですね。理念やビジョンは社長ご自身がお話しされたんですか?
理念は代表が話した方が伝わると思ったので、最初は全部私がフロントに立って直接話しました。
今はそうしてビジョンに共感して入社した社員が理念やビジョンを発信してくれているので、私が合同説明会などの場で話すことはなくなりました。
石井社長
石井社長
カイラボ代表 井上
カイラボ代表 井上
やはりトップからの情報発信は大切ですよね。今は社員の方々その役割を担っているというのも素敵ですね。

4.採用は「見抜く」のではなく「共感してもらう」ことを重視

カイラボ代表 井上
カイラボ代表 井上
採用における課題としてよく聞くテーマが「どうやって自社に合った人を見抜くか」です。WORK SMILE LABOでは、自社に合う人や理念・ビジョンに共感する人をどのように見抜いているのでしょうか?
当社の場合は「見抜く」という感覚はほとんど持っていないんです。まずはしっかりこちらの希望を伝えるようにしています。
「とにかくうちに来てください」と伝えるのではなくて、「うちはこういう人が欲しい、こういう人は来てほしくない。」という基準を明確に伝えるようにしています。
石井社長
石井社長
カイラボ代表 井上
カイラボ代表 井上
来てほしい人だけではなく、こういう人はうちの会社には合わないというところまでしっかり伝えているのは、就活生にとってもありがたいですよね。むしろそれくらいはっきり言ってくれた方が誠実な会社という印象すら覚えそうな気がします。
私たちの選考フローは「学生を選ぶ」という気持ちではやっていないんです。あくまで自社の価値観を伝える場にしています。ですから、面接ではなくて体験型の選考フローになっています。
もし当社に興味がわかないならば、我々と理念やビジョンが合わないと考えています。ですから選考を重ねるごとに自社を好きなる、共感してもらえるような選考にしています。
石井社長
石井社長
カイラボ代表 井上
カイラボ代表 井上
体験型のイベントというのはおもしろそうですね。ちなみに専攻は何次選考まであるのですか?
4次選考までおこなっています。
具体的な選考内容としては営業体験です。実際に自社の顧客先に学生を連れていき、お取引先の社長にプレゼンをしてもらいます。
あとは大きなホールを借りて10年後の自分のビジョンをステージで発表してもらっています。
私たちは「挑戦」を大切にしている社風ですので、普段の学生生活ではできないような挑戦できる体験をつくっています。そのため成長意欲がない人は応募してきません。結果的に新しいことにチャレンジをしたい学生がたくさん応募してくれています。
石井社長
石井社長
カイラボ代表 井上
カイラボ代表 井上
営業体験は聞きますが、大きいホールを借りて自分のビジョンを発表する体験はなかなか他社では聞きませんね。たしかに学生のうちにはできない経験ですよね。

5.社員の定着と活躍のポイントはスキルアップよりも仕組みづくり

カイラボ代表 井上
カイラボ代表 井上
ここまでは採用のお話しをうかがってきましたが、ここからは採用後の社員を戦力化するための取り組みについてお聞きできればと思います。
そうですね。基本的には社員個人のスキルに頼るのではなく、売れる仕組みをつくることに力を入れています。
我々は営業会社ですが、新人がいきなり売上げをあげることは難しいため、会社がやってほしい仕事がきちんとできれば、成果が出せる仕組みづくりをしています。
石井社長
石井社長
カイラボ代表 井上
カイラボ代表 井上
会社の仕組みとして新人でも成果が出るような環境をつくっているのですね。
入社後のキャリアプランの支援などは何かあるのでしょうか?
仕事だけでなく人生の自分のキャリアを考えてもらうビジョン深堀会を年に2回設けています。
将来どうなりたいか明確にしてもらったうえで、会社としてどういうサポートができるのかを考えています。
仕事やプライベートを含めた人生のキャリアプランを明確にし、こういう風になりたいと社員自身が強く思わなければ、モチベーションの源泉は沸かないので、そこは社員の方に大切にしてもらいたいと思っています。
石井社長
石井社長
カイラボ代表 井上
カイラボ代表 井上
プライベートも含めたキャリアプランを定期的に考える機会はとても大切だと思います。
また定着率を、上げるための取り組みとしては、入社前のビジョンの共感をさらに重要視して採用をおこなったことです。
あとは、成果が出やすい仕組みづくりが重要です。成果が出ないと自信を失ってしまい、結果退職につながるので、それを防ぐためにビジネスモデルのブラッシュアップに力を入れています。
石井社長
石井社長
カイラボ代表 井上
カイラボ代表 井上
スキルアップではなくビジネスモデルのブラッシュアップに力を入れている企業は少ないと思いますが、そのようなアイデアはどこから出てくるのでしょう?
良い人材の定義は何か?と考えると、スキルよりも自社の理念、ビジョンに共感して、会社がやってほしいことを実行できる人が良い人材だと私は考えます。
そのため、そのような社員が評価され定着するような仕組みづくりが必要と考え、ビジネスモデルのブラッシュアップに力を入れるようになりました。スキルアップ支援ももちろんやっていますが、重視しているのはビジネスモデルのブラッシュです。
石井社長
石井社長

6.中小企業での良い人材の採用ができることを証明していく

カイラボ代表 井上
カイラボ代表 井上
ありがとうございました。最後に今後の展望を教えてください。
そうですね。地方の中小企業は人材不足という営課題が多いので、無名の中小企業でも新卒採用で「良い人材を採用できる」という事例をつくり、一社でも多く広げていきたいです。それが私たちの使命だと考えます。
採用に関しては毎年ブラッシュアップをして、新しいツールを取り入れています。様々な方法を試すことが我々のビジネスにもつながりますから。
地方の企業の中でも、新しいものをいち早く取り入れていきたいですね。最近だとSNSのTikTokとインスタに力を入れています。
石井社長
石井社長
カイラボ代表 井上
カイラボ代表 井上
今後の発展がますます楽しみですね。本日はお忙しいところお時間いただきまして、誠にありがとうございました。

株式会社WORK SMILE LABOのご紹介

ー会社概要ー

社名株式会社WORK SMILE LABO
Webサイトhttps://wakusuma.com/
所在地本社
〒702-8035 岡山県岡山市南区福浜町15-10
Tel:086-263-2113 Fax:086-263-2605
代表者代表取締役 石井 聖博
設立明治44年11月15日
払込資本金5,300万円
関連会社株式会社ワークスマイルコンサルティング
株式会社WORK SMILE SATELLITE
一般社団法人中小企業働き方支援協会

インタビューにご対応いただいた石井聖博さんプロフィール

株式会社WORK SMILE LABO 代表取締役 石井聖博さん略歴

岡山市出身。大学卒業後、キヤノンマーケティングジャパン株式会社を経て、2015年から家業である老舗事務機屋の4代目として現職につく。50名以下の中小企業へより良い働き方を提供する企業となるべく、まずは自社の働き方改革へ着手し、テレワークやICTを活用した多様な働き方改革に常に挑戦している。
本社をライブオフィス化し、実際に働いている姿を見て体験頂ける”ワクスマ”に力をいれている。