早期離職対策に関係する専門家へのインタビュー。
高卒新卒採用から中小企業の若手人材不足を解決する、株式会社セールスアドベンチャー 代表取締役の渡邉宏明さんにお話をうかがいました。株式会社セールスアドベンチャーでは、全国の中小企業に「高卒採用」の意義を伝え、その採用から定着・戦力化までのノウハウを提供しています。また、魅力ある中小企業の情報発信をお手伝いすることで、高校生の就職環境改善にも貢献しています。
今回は、企業から見た高卒採用と大卒採用の違いをはじめ、自社の魅力をうまく伝える方法、よくある失敗や改善策などについて、早期離職.comを運営する株式会社カイラボ代表取締役の井上がインタビューしました。
インタビュー
1. 企業から見た高卒採用と大卒採用の違い
渡邉さんが代表取締役を務めるセールスアドベンチャーでは、多くの高校生新卒採用の支援をされていると思います。まず、基本的な質問なのですが、高卒採用と大卒採用の大きな違いがあれば教えていただけますか?
今は18歳で成人ですが、以前は高校3年生の大半が未成年だったので、職業感や勤労感がない中で就職活動をしなければならない状況です。そこで学校がしっかりサポートする必要があるということでこのようなルールになったようです。
多くの高校生には就職先を自分の力で開拓する力もないので、採用したい企業はハローワーク指定の高卒求人票を出す必要がありますよとなったのでしょう。要するに、比較検討しやすくするという理屈だと思います。
高卒採用の場合は、進路指導室に求人票が届き、それを見て就職先を決めるのが一般的なのですね。
ところで、高卒採用は基本的には1人1社応募、内定をもらったら辞退できないという流れだったと思うのですが、最近の流れとしては変わりつつあるのでしょうか?
とはいえ、同時応募が2社であるとか、同時応募する会社数に上限があるエリアが多いと思います。この流れで徐々に全国に解禁していくのだろうという気はしますね。
ただし、高校生の場合は職場見学に行けるのが夏休み期間中だけなので、大学生のように同時に何十社も受けることは現実的には難しいと思います。
複数応募可になったとはいえ、大学生の複数応募とはイメージが違いますね。
2. 高校新卒の定着率における課題
2018年の3年以内離職率は、高卒が36.9%で大卒が31.9%と、約5ポイントの差しかありません。
この差の内訳を見ると、高卒の場合はとくに1年以内離職率が高く、3年目の離職に関しては、実は高卒と大卒が逆転しています。そのため、高校新卒の場合は、1年以内離職、つまり定着が課題なのかなと感じています。
高卒の場合は最初の1年目が大きな壁なんですね。
離職理由をいくつか挙げると、
- 一人暮らしをはじめて、自炊や洗濯などの家事もすべて自分でやる必要がある
- 社会人デビューして仕事も覚える必要がある
- 親元から離れてホームシックになる
など、こういった部分でストレスが溜まって離職にいたることもあります。これを正しく捉えられていない企業が多いのですが、実は職場外の問題が離職要因になっている可能性が高いので、ここをケアする必要があるのだと思います。
そのため、その1年目を過保護と思われるくらい、手厚くサポートすることがカギなのかなと思います。1年目を乗り越えると、大卒の離職率よりも低くなってきている状況なので。
3. 企業の魅力を高校生にうまく伝える方法
高卒求人票や文字と画像だけの会社案内では良さは伝わりませんし、高校生の夏休みは短いので何社も職場見学に行くことはできません。そのため、本気で採用するつもりなら自社でのムービー制作がいいと思います。
ちょっと変な意見ですが、採用支援をしていると企業の大学生向け仕事紹介ムービーを見ることもあります。正直、雰囲気がかっこいいだけで何が言いたいのかわからない動画も結構ありますよね(笑)
そうならないように、どんな風にムービーを作っていけばいいのか教えていただけますか?
まさに言いたかったことを言われてしまいました(笑)
基本は高卒で入社した方がいれば、その方へのインタビュー形式です。
ただしインタビューは原稿を用意しません。会社から社員に話してほしいことを事前に聞いておき、インタビュアーがうまくその話しを引き出します。弊社の場合、絶対に話してほしいMust事項だけ決めておき、あとは当日のインタビューの自然な流れで進めるようにしています。
また、必ずではありませんが、できるだけ入れるように意識しているのは「仕事の厳しさ」です。
いいことばかり言っても胡散臭いムービーになってしまうので。入社して辞めようと思った瞬間や、どのような理由でそれを乗り越えてきたのかなどのエピソードを必ず入れるようにしています。
私たちのムービーでは編集してかっこいいものを作るというより、リアルを伝えることを大切にしています。
弊社のクライアントは中小企業なので、ムービー作成については「あまりかっこよく見せても実際入社した後にイメージとまったく違えば離職者が増えるだけです」と伝えています。
4. 定着につながる高卒採用のコツ
シンプルなことですが、本当にそれだけですね。中小企業にも、シンプルにターゲット設定を行なう方法としてお伝えしています。
5. 高卒採用で失敗しがちなパターンと改善策
社内に育成担当の方がいても、現場の先輩やメンターがしっかりサポートできないという感じで、採用に力をいれても育てられないという状態です。
高卒採用に苦戦している会社の場合、先ほどご紹介いただいた動画を使ってうまくPRすることは、比較的取り組みやすい対策なのかもしれませんね。そのほかにも、対策があれば教えていただけますか?
また、見落としがちなのですが、高卒求人票のテコ入れが大事です!
やはり高卒求人票が一番の採用広報ツールですので。
たとえば、事業内容や会社の特徴、仕事内容などですね。そのフリースペースをいかに魅力的な言葉で埋めていくかがポイントかなと思っています。
高卒採用に関しては私もあまり詳しくなかったのですが、高卒求人票でのキャッチコピーの使い方やターゲット設定を行なった上での動画作りなど、興味がある人をしっかり引きつけるという部分は大卒と一緒だなと感じました!
ただ、ほぼ未成年であることを理解して、地元や学校とのつながりを意識して行なう必要があると。また、大卒の定着率は2000年をピークにがくんと落ちているので、もしかしたら「高卒採用がいいかも」という流れが来るかもしれないですね。
ただ、従業員規模で見ると100名未満の企業は3年以内離職率が高いのも事実です。それでも高卒全体で見ると下がってきているのは明らかです。また、数字を見て驚いたのですが、高卒よりも短大や専門の3年以内離職率の方が高いんですね。これも面白いデータだなと思います。
本日は貴重なお時間いただき、ありがとうございました!
インタビューに対応いただいた渡邉宏明さんプロフィール
渡邉宏明(わたなべ ひろあき)
福岡県福岡市出身。2003年株式会社リクルート入社。タウンワーク福岡版営業メンバーとして配属後、営業責任者として大分版・社員福岡版を創刊。
その後かねてより関心のあった高校生の職業選択(就活実態)を知るべく 2012年に就職指導員として私立高校に入職。このときに高校生の就職活動期間が短期であることや、十分に企業を知ることがないまま親や先生の勧めで就職を決めるなど、高校生の職業選択の問題点や現状を目の当たりにし、 “企業と就職希望する高校生、双方に事業を通じて貢献したい” という思いを強くする。
2015年より企業の高卒採用広報に携わり、2018年株式会社セールスアドベンチャーを設立。新卒高校生の確保という角度から企業成長を支援しているが、就職を考える高校生の視点や保護者の目線で支援する企業を決定。フルパッケージの支援に関しては、一業種一社限定とすることにもこだわりをもっている。
会社概要
会社名:株式会社セールスアドベンチャー(18歳新卒人材ラボ)
設立:2018年3月
所在地:
【本部事務局】福岡県福岡市中央区大名2-3-3 ラピスラズリ
【首都圏サテライト】東京都港区浜松町1-21-4 港ビル 4F
Webサイト:https://sales-adventure.jp/