さまざまな離職対策に取り組む企業にお話を聞く企業インタビュー。

今回は、株式会社グッド・クルーの執行役員である野村尚史さんにお話をお聞きしました。
同社はHRコンサルティングや人材支援、就職支援、キャリア形成支援サービスをおこなっています。野村さんは採用担当兼セカンドキャリアエージェントという立場で離職対策や人材育成のためにさまざまな取り組みを実施しています。

今回は離職対策や人材育成の具体的な施策について、早期離職.comを運営する株式会社カイラボ代表取締役の井上がインタビューをおこないました。

記事は前編と後編に分かれています。

インタビュー

1.社員の定着や活躍につなげるための施策

カイラボ代表 井上
カイラボ代表 井上
本日はよろしくお願いいたします!
さっそくですが、グッド・クルーでおこなっている離職対策や人材育成の施策について教えていただけますか?
人材育成の面では、GCカレッジというカレッジ制度や1on1、新卒向けに月1の研修をベースにした育成プログラムである「成長実感プログラム」、フォロー面談などさまざまな施策があります。
グッド・クルー 野村
グッド・クルー 野村
カイラボ代表 井上
カイラボ代表 井上
かなり多様な取組みをされていらっしゃいますね。
育成面以外では何か取り組みはあるのでしょうか?
採用面においては、弊社でキャリアを一から積み上げたい層をターゲットに新卒採用と中途採用(主に第二新卒)、請負事業のキャンペーン案件に関わる学生アルバイト採用の3つを管理しています。
とくに社員採用に関して、今季は新卒と中途で合計200名以上の採用数を追い、社員の定着や個人の活躍にも繋げる採用をやっていく工夫をしています。
そのために、まずエンプロイージャーニーマップを構築しました。
グッド・クルー 野村
グッド・クルー 野村
エンプロイージャーニーマップで想定する状態
エンプロイージャーニーマップで想定する状態(野村さんよりご提供)

2.エンプロイージャーニーマップとEX(従業員体験)

カイラボ代表 井上
カイラボ代表 井上
エンプロイージャーニーマップとは、どのようなものなんでしょうか?
エンプロイージャーニーマップとは、社員が入社してから教育期間を経て活躍し、そして退職していくまでの流れを可視化したものです。
弊社のエンプロイージャーニーマップはいわゆるEX(Employee Experience:従業員体験)だけではなくてCandidate Experienceつまり候補者体験(以下、CX)も描かれているのが特徴です。候補者のうちから、どうアプローチをするのかを考えています。
エンプロイージャーニーマップを活用して入社後に活躍するイメージはもちろん、退社・退職するときのイメージも持って採用をおこなうようにしています。
グッド・クルー 野村
グッド・クルー 野村
カイラボ代表 井上
カイラボ代表 井上
エンプロイージャーニーマップは聞いたことがありましたが、Candidate Experienceははじめて聞きました!

今まではリクルートチームが採用して、入社後は他部署にバトンを渡していました。
ですが、採用側としては出会ってからがその方のCXのスタートなので、出会った瞬間から入社後の活躍のイメージをして、そのイメージから逆算して「選考時の面接は誰がやるのか?」という部分まで構想しています。
グッド・クルー 野村
グッド・クルー 野村

カイラボ代表 井上
カイラボ代表 井上
めちゃくちゃ興味深い内容ですね!
EXという概念自体は最近出てきている印象はありますが、言われてみるとCXの考え方も大切ですね。
順番としては、いわゆる入社後のEXが先にあって、候補者が応募してきてから入社するまでの設計を考えるようになった感じなのでしょうか?
おっしゃる通りです。
どのような人を採用したいのかペルソナ設計をした後、ペルソナを採用するためにはどのような募集をしないといけないのか、最後から最初までを一気通貫させたマップを作りました。
グッド・クルー 野村
グッド・クルー 野村
カイラボ代表 井上
カイラボ代表 井上
エンプロイージャーニーマップは離職対策でも活用できそうですか?
もちろんです。まさに弊社の課題は離職率を下げること、定着率上げることなので、起点を考えるとやはり採用なんです。離職をイメージして、どんな人が辞めるのか、どんな価値観を持っているのか、どんな性格なのか、など採用時に把握していないと離職が止められないという思いがあり一気通貫でやっています。
施策の効果は2年後3年後にならないとわからないんですが、離職率が徐々に解消していく感覚は得られていますね。
グッド・クルー 野村
グッド・クルー 野村
カイラボ代表 井上
カイラボ代表 井上
一気通貫というのは、採用から育成までということでしょうか?
その認識で合っています。少し表現を変えると「ひとりの人が候補者という立場から社員の立場になる」というニュアンスに近いですね。
グッド・クルー 野村
グッド・クルー 野村
カイラボ代表 井上
カイラボ代表 井上
まさにCXからEXまでを含めた一気通貫ですね。
僕自身さまざまな部署を経験しているからこそ、候補者と社員で立場は違っても、その人自身は変わっていないのに関わり方が変わることに違和感を覚えたんですね。入社したからこう、まだ入社してないからこう、みたいなことがあるから入社前後でギャップが生じたり、早期離職に繋がったりすると思っていたので「関わり方は変えないでいこう」というニュアンスを強調させたかったんです。
グッド・クルー 野村
グッド・クルー 野村
カイラボ代表 井上
カイラボ代表 井上
よくわかります!
最初はお客様扱いなのに、言い方が悪いんですが入社したら奴隷扱いみたいな。
そうなんですよね…だからすぐに辞めてしまうんだと思います。
グッド・クルー 野村
グッド・クルー 野村
グッド・クルー社内の様子

 

カイラボ代表 井上
カイラボ代表 井上
関係性ができあがったからこそできるコミュニケーションも当然ありますが、ベースの部分は変えないでいかに関わっていくかが大切ですよね。仕事の関わり方を変えるならば、ジャーニーマップで言う「ここが変わったから、ここを目指すために関わり方を変えましょう!」みたいな。
「ひとりの人なんだから」というのを強調したかったのがありますね。
グッド・クルー 野村
グッド・クルー 野村
カイラボ代表 井上
カイラボ代表 井上
ありがとうございます!
エンプロイージャーニーマップについてもう少し教えてください。カスタマージャーニーマップで言うと、ペルソナ設定がぶれていることで個別の戦略に落とし込むときにぐちゃぐちゃになるケースもあると思うんですが…エンプロイージャーニーマップは1パターンだけなんでしょうか?
エンプロイージャーニーマップの理想の姿は、1パターンしかありません。
今、社内でさまざまな施策が走っているんですが、これまでは一つひとつの施策がどんな理想に対してやっているのかが可視化されていませんでした。これをエンプロイージャーニーマップを活用し、理想の状態を明確にしました。
たとえば「〇〇さんは今こういう状態でこのフェーズだったら理想の状態はこの状態だから、このギャップを埋めるためにどんな施策が必要かな?」のように、名前を出しながら施策構築の道しるべに使っています。
そのため、何か新しい施策を走らせるときの議論には、必ずエンプロイージャーニーマップを引っ張り出して「今〇〇さんはどのフェーズでどの状態を目指したいのか?そのためにどのようにギャップを埋めていくのか?」という話をしています。
グッド・クルー 野村
グッド・クルー 野村
カイラボ代表 井上
カイラボ代表 井上
エンプロイージャーニーマップを基本にして、施策一つひとつが何を目指しているのかを明確にしているんですね。
人事の施策は、やったらやりっぱなしになったり、立ち消えになったりしがちですもんね。
はい、おっしゃる通りです。
エンプロイージャーニーマップは完成しているので、今年度はそれを1つの基準にして、施策を走らせていこうと動いています。エンプロイージャーニーマップは毎年ブラッシュアップしていく予定です。
グッド・クルー 野村
グッド・クルー 野村
カイラボ代表 井上
カイラボ代表 井上
ちなみに、エンプロイージャーニーマップは、社員とアルバイトのそれぞれにあるんでしょうか?
アルバイトは人によって温度感に差があるので、今は作っていません。弊社の場合、登録型で仕事を提供していて、意欲的な人とそうではない人がいるので難しいのが現状です。温度感の高いアルバイトが増えてきたフェーズのときに、アルバイト用のジャーニーマップを作ろうかなとは考えています。
今後、新卒の人材紹介の事業も伸ばしていく予定なので、そこと交えながらアルバイトの就職活動を支援するというゴール設定も描けるかなと思っています。
グッド・クルー 野村
グッド・クルー 野村
カイラボ代表 井上
カイラボ代表 井上
なるほど…新卒と第二新卒の場合は、別のエンプロイージャーニーマップなんですか?
そこは一緒にしています。
グッド・クルー 野村
グッド・クルー 野村
カイラボ代表 井上
カイラボ代表 井上
それは、新卒と第二新卒だとあまり差がないからということですか?
はい、弊社の場合はキャリア中途採用のようなイメージではなく、一からキャリアを積み上げたい新卒的なメンバーが多いですし、最近は高卒の18歳19歳も増えてきているので、そこは新卒と一緒で良いかなと思いますね。
一番多いのは、大学卒業して就職活動を継続してやっている層ですね。
グッド・クルー 野村
グッド・クルー 野村
カイラボ代表 井上
カイラボ代表 井上
仮面浪人ならぬ仮面就職みたいな感じですかね。
自分の希望通りにならなかった、いわゆる不本意な就職みたいな人たちを採っていくみたいな。
はい、おっしゃる通りです。もうまさに今弊社はそこをターゲットにしていますので。
グッド・クルー 野村
グッド・クルー 野村

3.社員が辞めるときの出口戦略からEXを考える

カイラボ代表 井上
カイラボ代表 井上
EXを考えるにあたり、出口、いわゆる会社の辞め方から考えたということですが、「会社も本人もお互いに良い関係を築ける辞め方」みたいなものを先に考えたのか、それとも「なんで辞めてしまうの?」という会社としての理由がわからないケースを想定したのか、どちらでしょうか?
両方の観点がありますね。
理想の辞め方は、弊社を辞めた後も口コミとして友達に紹介してくれたり、リファラル採用したりできるような関係がある状態ですね。いずれは、アルムナイのコミュニティを作りたいので、そこに繋がるような辞め方をしてもらいたいと思っています。
一方で現実はかけ離れていて「どうして〇〇さんは辞めたんだろう…」というケースがあります。この部分をかみ砕いていくと、辞めた理由に着眼点を当てざるを得なくなっていくんです。
そのため、エンプロイージャーニーマップを作るときは、関わり方や社内での機会創出方法、評価方法など、こういった部分にフォーカスを当てて「〇〇さんはなぜこうなってしまったんだろう」と名前を出してメンバーとすり合わせをしました。
グッド・クルー 野村
グッド・クルー 野村

 

後編ではエンプロイージャーニーマップを活用した具体的な施策についてお聞きしました。
後半はこちらから

株式会社グッド・クルーのご紹介

会社概要
社名:株式会社グッド・クルー
資本金: 8億4,626万円(グループ全体)※資本準備金含む
設立: 平成18年7月10日
本社所在地:東京都渋谷区渋谷2-21-1 渋谷ヒカリエ32F
Webサイト:https://www.good-crew.co.jp/
売上高:260億(グループ連結2022年度見込み)
関連会社
・株式会社ディ・ポップス
・アドバンサー株式会社
・株式会社STAR CAREER
・株式会社graghD
・株式会社フェイスフル
・opzt株式会社
・株式会社テックビーンズ
・株式会社アットマーク・ソリューション

インタビューにご対応いただいた野村尚史さんプロフィール

野村尚史さん略歴

株式会社グッドクルー
ヒューマンリソースコンサルティング事業部
リクルート担当兼セカンドキャリアエージェント担当
執行役員

高1で将来は建築構造設計職になると決意し、大学・大学院と建築を学び戸田建設へ就職。憧れの仕事についたが、「イキイキ仕事してる人が少ない。ものづくりの根底には人がいるから、まずは働きがいを作らねば!」と決意して、未経験の人事領域の仕事を目指し転職。採用担当を経て現在は企業価値創造部という、組織開発や人材開発、人事評価、採用までを担う。

 

後半はこちらから