さまざまな離職対策に取り組む企業にお話を聞く企業インタビュー。

今回は、株式会社グッド・クルーの執行役員である野村尚史さんにお話をお聞きしました。
同社はHRコンサルティングや人材支援、就職支援、キャリア形成支援サービスをおこなっています。野村さんは採用担当兼セカンドキャリアエージェントという立場で離職対策や人材育成のためにさまざまな取り組みを実施しています。

今回は離職対策や人材育成の具体的な施策について、早期離職.comを運営する株式会社カイラボ代表取締役の井上がインタビューをおこないました。

前編では、エンプロイージャニーマップの構築について詳しくお聞きしました。後編でも興味深い内容が盛りだくさんです!

前編はこちらからご覧いただけます。

インタビュー

4.エンプロイージャーニーマップ作成時の苦労

カイラボ代表 井上
カイラボ代表 井上
エンプロイージャーニーマップは「先月辞めた〇〇さんは、もう少し活躍できそうな場があったのに、うまく会社として伝えきれなかったよね。どうしてだろう…?」みたいな感じで作り上げていったのですね。
エンプロイージャーニーマップ作成時に苦労したことはありますか?
その議論をするなかで難しいと感じたことは、辞めていく人は別に悪者ではないのに、社員としては辞めていく人よりも自分たちを肯定したい気持ちが出てしまうことですね。
たとえば「〇〇さんは給与の上がり幅が少ないから辞めた。でも給与は提供できる金額が決まっているし、すぐに変更する予定はないからしょうがない。」みたいな議論で済ませてしまうことがあります。
ですが、そこで議論を終わらせると会社は何も良くなりません。
グッド・クルー 野村
グッド・クルー 野村
カイラボ代表 井上
カイラボ代表 井上
確かに「給料が不満なら仕方ない」で片付けてしまうと解決策が「給料を上げる」しかなくなってしまいますもんね。そうなると人事担当としては「自分たちだけではどうしようもない」という結論になる、と。
はい、その通りなんです。
でも、そもそも高い給料が欲しいからと弊社に入社するメンバーはほとんどいません。ということは、内的報酬を得たいと考えて入社をしたにもかかわらず、どこかのタイミングで外的要因に視点を置いてしまうきかっけがあったはずなんです。
そのきっかけは周りの社員の関わり方や仕事の環境など、さまざまな要因があると思います。
本来ならそこまで原因を追究するべきですが、これまでの関わり方やメンバーとのタッチポイントのログがないので難しいのが現状です。そのため、今はさまざまなログを残すように会社として仕組化しようとしています。
グッド・クルー 野村
グッド・クルー 野村
カイラボ代表 井上
カイラボ代表 井上
仕組化できれば、さらなる原因追及ができそうですね。
そのために1on1などの履歴を追えるように整えていっているということですか?
はい、おっしゃる通りです。
グッド・クルー 野村
グッド・クルー 野村

5.グッド・クルーでおこなっている定着支援の施策

カイラボ代表 井上
カイラボ代表 井上
ありがとうございます。
最初のお話で成長実感プログラムやGCカレッジ、1on1などさまざまな施策が動いているとのことでしたが、定着支援のために行っている施策を改めて教えてください。
まず、新卒で入社をした人を対象にした3年間の研修プログラムが「成長実感プログラム」です。同じ時期に入社をした新卒のメンバーで集合研修をするのがベースの機会になっています。月に1回からスタートして2ヶ月に1回になって四半期に1回、という感じで年数を経るごとに頻度は少なくなります。
日々の振り返りをしたり、21新卒22新卒で合同研修をしたり、22新卒に対して21新卒がメンターとして日々の指導をしたりしています。1年目2年目3年目で理想の姿を設定して、3年間かけてこの状態になってもらいますという施策ですね。
グッド・クルー 野村
グッド・クルー 野村
カイラボ代表 井上
カイラボ代表 井上
入社から時間が経つにつれて顔を合わせる頻度が減るのは多くの会社であてはまりますね。先ほど話しが挙がったGCカレッジについても教えてください。
「GCカレッジ」は、社員が講師となって社内の人におこなう研修プログラムです。
講師は他薦の場合もあれば立候補することもあります。自分の経験を活かして社内のメンバーに伝えていきたい講師を募り、基本的に業務時間外でオンライン授業の形で実施をしています。
僕自身も、週に1回講師としてキャリア研修をしています。一部の講義については、リアルタイムだけではなく、オンデマンド型講座のような形でいつでも申請すれば受講できるようになっています。
たとえば
・「モバイル接客の領域で役立つ〇〇の獲得の仕方」
・「キャリア構築の勘どころ」
・「キャリア構築の仕方やノウハウ」など、さまざまなテーマがあります。
グッド・クルー 野村
グッド・クルー 野村
カイラボ代表 井上
カイラボ代表 井上
抽象的な話ではなく、現場の生きた知見を具体的に伝えていく時間という感じですよね。
まさにその通りで「誰が」語るのかが重要な講義かなと思います。
グッド・クルー 野村
グッド・クルー 野村
カイラボ代表 井上
カイラボ代表 井上
たとえば、モバイルだったら、〇〇店の〇〇さんはすごい人というのを知っていて、その人の話を聞きたいみたいな感じですね。
その通りです!
ほかの施策としては1on1です。弊社の1on1制度はメンティーがメンターを指名するのが特徴です。
元々メンターが声掛けをしていたんですが、それだとメンティーのやらされている感が出て効果を最大化できていない部分があったので、このような形で実施しています。
グッド・クルー 野村
グッド・クルー 野村
カイラボ代表 井上
カイラボ代表 井上
それはすごく面白いですね!
そうですね!大前提として弊社の強みとして、従業員の人がいいという特徴があります。
頼られたら業務時間外であろうと、喜んで応えてくれるみたいな感じですね。
この特徴を逆手にとって、メンティーが指名すればいいのでは?ということで、若手、中堅にかかわらず、誰でも、誰に対しても1on1を申し込める制度を全社に展開しています。
グッド・クルー 野村
グッド・クルー 野村
カイラボ代表 井上
カイラボ代表 井上
1on1は週1〜月1回程度定期的に継続していくイメージがあるんですが、メンティー指名式の1on1は定期的におこなっているんでしょうか?
仕組み上は頻度も自由設定にしていて、何か月に何回はやらなければならないと強制はしていません。
ですが、定期的にするのが効果的だと思っているので「2週間に1回もしくは1か月に1回誰かを頼ろう」「まずは3か月間~半年程度〇〇さんを頼ってみよう」というやり方を推奨しています。実際に、この方法で1on1をしている人が多いですね。
グッド・クルー 野村
グッド・クルー 野村
カイラボ代表 井上
カイラボ代表 井上
やはり頻度の確保は1on1のキモですよね。
はい。さらにちょっとアレンジを加えて、メンターがメンターを紹介するパターンも大事にしています。
僕がメンターをしている社員に「このフェーズだったらこのタイミングで〇〇さんに1on1してもらってもいいかもね!」という感じで。
グッド・クルー 野村
グッド・クルー 野村
カイラボ代表 井上
カイラボ代表 井上
普段は野村さんにメンターをしてもらっている社員さんが、次の2週間は別の〇〇さんにやってもらって、また野村さんに戻ってくることもあるんですか?
あります。「前回〇〇さんと1on1したみたいだけどどうだった?」みたいな話もしますね。
グッド・クルー 野村
グッド・クルー 野村
カイラボ代表 井上
カイラボ代表 井上
自由な使い方でいいですね。社員のみなさんにとっても使いやすそうです。
そうなんです、それがいいなと僕は思っています。
弊社にはまりやすいと感じているので、さらに推奨していきたいです。
グッド・クルー 野村
グッド・クルー 野村
カイラボ代表 井上
カイラボ代表 井上
会社にはまりやすそうという感覚は大切ですよね。
ほかにも何か施策はありますか?
中途入社のメンバーにおいては、1on1とGCカレッジの二つの施策を組み合わせて、成長実感プログラムっぽいことを構築しようとしています。
弊社に入るメンバーは成長志向が高いので「GCカレッジや1on1を活用しながら自己成長を追っていこう!」と入社時に推奨しています。強制の施策ではありませんが、入社後毎回のように僕のキャリア研修に参加してくれるメンバーもいるので、社内の制度を組み合わせた中途メンバー向けの定着施策っていうのは「浸透してきているな」という感覚があります。
また、会社の情報を伝えるときには、面談する人のバイアスがかかったり、主観が入ったりしないように「代表が全社に対して発信している情報を個別面談でもしっかり伝えていこう」という仕組みを今作ろうとしています。
グッド・クルー 野村
グッド・クルー 野村
カイラボ代表 井上
カイラボ代表 井上
それは全社の広報やプレス資料を使う感じですか?それとも別の方法で伝えていくのでしょうか?
これまでツールがなかったので、今まさに構築している最中です。
それを進めているのが、代表をプロジェクトリーダーに据え、役割もまったく違う社員を各オフィスで10名程度集めた「社内醸成プロジェクト」です。社内に展開するビジョンブックを構築し、共通メッセージを社内に浸透させていく動きも同時に進んでいる状況です。
グッド・クルー 野村
グッド・クルー 野村
カイラボ代表 井上
カイラボ代表 井上
ありがとうございます。成長実感プログラム・1on1・GCカレッジ、この辺が大きいところで、社内文化醸成プログラムが走り出していて、採用に関してはエンプロイージャーニーマップを作ってEXをきちんと設計していく感じなんですね!
そうですね、実は採用に関しては「入社後1年間の定着率」を最上位の目標にしているので、入社して1年間は採用メンバーがしっかり責任を持って個別に伴走していこうという意識でやっています。
グッド・クルー 野村
グッド・クルー 野村
カイラボ代表 井上
カイラボ代表 井上
いわゆる重要KPIということでしょうか?
そうですね。入社しても離職が頻発したら意味がないので…。だからこそ、エンプロイージャーニーマップとの繋がりは大事にしたかったんですよね。
グッド・クルー 野村
グッド・クルー 野村
カイラボ代表 井上
カイラボ代表 井上
1年後の定着率を参考数値にしている会社が多いなか、最上位の目標にするのは結構度胸がいりますね。
そうかもしれません(笑)
グッド・クルー 野村
グッド・クルー 野村
カイラボ代表 井上
カイラボ代表 井上
とはいえ、現場や経営陣からは採用数が少ないと言われることもあると思います。特に御社の場合は、人がいることが売上に直結するビジネスですよね。
そういうなかで、現場や経営陣との連携の仕方や説得、理解してもらうためにやっていることは何かあるんでしょうか?
それはやっぱりもどかしい日々ですね。
現在の全社共通認識として「採用数を増やしたい、ただ離職率も下げたい」という二兎を追っているような状態です。それを実現するために、定着して活躍していくイメージを持ちながら、採用側で採用活動のポリシーや採用基準を定めました。離職率を下げる起点は採用活動にありますから。そして、採用活動を進めていく中で大切にしているのは、営業サイドと採用基準の微調整をしたり、共通認識を作るということです。
グッド・クルー 野村
グッド・クルー 野村
今は選考シーンに営業部の事業部長も面接に実際に入ってもらっているので、全社として採用に対する温度感や採用が独り歩きしていない状態が作れてきているかなという印象はあります。
グッド・クルー 野村
グッド・クルー 野村
カイラボ代表 井上
カイラボ代表 井上
アプローチするときには「まずは社内の離職率を下げましょう!」という方向性だったのか「両方やるためにはまずエンプロイージャーニーマップです!」という感じだったのか、その辺はどうなんでしょうか?
そうですね。採用という役割がある以上、採用数を最大化させる視点で作ったのが正直なところです。
一方、離職率を下げるという課題も僕の立場上、捉えなければならない課題だったので、そこを捉えてかつ採用数を最大化するためには、もう一気通貫で構築するしかないと思ったという感じですね。
グッド・クルー 野村
グッド・クルー 野村

6.今後の取組み課題

カイラボ代表 井上
カイラボ代表 井上
ありがとうございます!最後の質問です。
離職率の成果はすぐに結果が出ませんし、景気や他の変動要素によって効果検証は難しいと思います。そのなかで、今後考えている展開があれば教えていただけますか?
井上さんがおっしゃった通りで、変動要素をできる限り抑えることが大事かなと思っています。
弊社の場合、採用時の性格診断結果や配属先のクライアント様の企業文化、店舗店長の特徴、周りにいる人間関係の特徴などが離職率に大きく関わってきます。この要素をデータとして蓄積できていないがゆえに、離職分析にも限界があるという状況なので、なるべく多くの要素=データを蓄積するフェーズかなと今は思っています。
目的は当然掲げながら、とにかく多くのデータを蓄積して、そのデータから何がどのように離職に影響を及ぼしているのか、分析していきたいです。
グッド・クルー 野村
グッド・クルー 野村
カイラボ代表 井上
カイラボ代表 井上
私もそこまでやりたいし見たいっていうのはありますね。
クライアント先の企業文化の影響って結構ありそうですよね。
ありますね。
配属先を選定するときに、最寄り駅をはじめさまざまな要素を加味しますが、営業サイドで「このクライアントはこういう文化でこういう店長がいるから、この候補者はちょっとしんどいかもね」という風に話してくれる社員もいるんです。そのノウハウとか知見を一般化させたいんですが、経験則からくる感覚的な部分がやっぱりあるんですよね。
どこまでできるかわからないですが、このように会話できる営業マンを育て上げて増やしていくことも同時に走らせようとしている部分でもありますね。
グッド・クルー 野村
グッド・クルー 野村
カイラボ代表 井上
カイラボ代表 井上
派遣業の場合は、その離職率云々っていうのがある意味商材なので、そこの稼働率みたいなのは会社の売上にも直結しますよね。
そうなんですよね。正社員を雇用しているので、人の人生とキャリアをどう構築していこうかというのは同時に考えています。難しい側面もありますけど、それがやっぱり弊社の特徴や強みになると思っていますね。
グッド・クルー 野村
グッド・クルー 野村
カイラボ代表 井上
カイラボ代表 井上
本日はお忙しい中、お時間いただきありがとうございました!
エンプロイージャーニーマップのディープな話が聞けて、とても嬉しかったです!

株式会社グッド・クルーのご紹介

会社概要
社名:株式会社グッド・クルー
資本金: 8億4,626万円(グループ全体)※資本準備金含む
設立: 平成18年7月10日
本社所在地:東京都渋谷区渋谷2-21-1 渋谷ヒカリエ32F
Webサイト:https://www.good-crew.co.jp/
売上高:260億(グループ連結2022年度見込み)
関連会社
・株式会社ディ・ポップス
・アドバンサー株式会社
・株式会社STAR CAREER
・株式会社graghD
・株式会社フェイスフル
・opzt株式会社
・株式会社テックビーンズ
・株式会社アットマーク・ソリューション

インタビューにご対応いただいた野村尚史さんプロフィール

野村尚史さん略歴

株式会社グッドクルー
ヒューマンリソースコンサルティング事業部
リクルート担当兼セカンドキャリアエージェント担当
執行役員

高1で将来は建築構造設計職になると決意し、大学・大学院と建築を学び戸田建設へ就職。憧れの仕事についたが、「イキイキ仕事してる人が少ない。ものづくりの根底には人がいるから、まずは働きがいを作らねば!」と決意して、未経験の人事領域の仕事を目指し転職。採用担当を経て現在は企業価値創造部という、組織開発や人材開発、人事評価、採用までを担う。