若手新卒社員(入社1年目~3年目程度)の離職率が高い場合、よくある企業の対応のパターンが二つあります。
パターン1 研修期間を長くして新卒のサポートを手厚くする
パターン2 採用にこだわり、お金をかけたり採用基準を引き上げたりする
先日久々におうかがいしたある企業では、パターン2の採用基準を引き上げるという対策をとっていました。具体的にはこれまで新卒採用の面接は3回だったのを4回にしたほか、いままで役員面接で通っていたレベルの学生でも落とすようにしたそうです。結果的に一次面接を担当する人事の方も「今までと同じレベルの人を通しても役員面接で落ちてしまうので、最近は私のところでかなりの人数を落とすことにしています。仮に通しても、絶対に役員面接通らないので。」
採用基準を引き上げることは悪いことではなく、むしろ妥協して採用することの害悪の方が大きいくらいですが、若手の離職率が高いから採用基準を引き上げるというのは、個人的にはあまり意味がないと思います。
採用時の評価と1年後、3年後の在職率を比較する
面接での採用基準を引き上げても離職率に影響がないと考えている理由は、採用面接時の評価と3年後の在職率の間には明確な相関がないケースが多いからです。役員や人事担当者は「面接で優秀だと思った人は入社後も優秀」と思っていても、じつは各年代の採用面接で一番優秀という評価の人が活躍しているだけで、それ以外は採用時の上位評価の人が退職していたり業績がよくなかったりの一方で、入社時の評価は一番低かった人が活躍しているなんてこともあります。印象とデータは必ずしも一致しません。
採用時の評価を入社後も活用することが大切
採用支援に入るときに「過去の面接の評価結果と今の業績評価を見せてください」というと、「面接時の評価は合否しか決めていないからそんな記録はありません」と言われることがかなりの頻度であります。また、一次面接や二次面接は面接官が評価シートを記入しているものの、最終面接は社長がその場で採用・不採用を判断しているため記録は一切なしという会社も少なくありません。採用面接も人と人の関係性なので、最終的には直感で判断することが悪いとは思いません。評価項目をガチガチに固めてしまうことの弊害もないわけではありません。
ただ、採用時の記録をとっておき、数年後の業績評価との関係性を見ることは、採用活動でのPDCAを回していくうえで非常に重要なことだと思います。点数化できていないのであれば、面接官のメモが残っているだけでも、最近ならテキストマイニングをして「面接官がこんなコメントを残すタイプは入社後に活躍する」などの傾向を見つけられるかもしれません。
直感を信じる面接が悪いとは限らないけど活用できるデータは活用しましょう
応募者の目を見ればいい人材かどうかわかるという面接官の方もいます。もしかしたら本当に目を見ただけでわかる人もいるかもしれません。また、ベテラン面接官の方の中には、うまく言語化できないけど降下率で人を見抜く力のある方もいます。直感的な面接が必ずしも悪いとは思いません。ただ、せっかく活用できるデータがあるのであれば活用しないのはもったいないと思います。
もし、まだ採用時のデータをうまくとれていないという企業の方は、まずは採用面接などで面接官が記録を残すことからはじめてみてください。すでに記録がある方は、そのデータと業績評価と比較して分析してみてください。きっと、今まで気づかなかったことにも気付けると思います。