早期離職者2019に向けたインタビューを週に数人のペースで進めています。

まだ集計・分析の段階には入っていませんので、過去との比較や早期離職者の傾向について明確なことは言えませんが、今回のインタビューでは以前に比べ「就活時に会社の理念に共感して入った」という方が多くなった印象があります。

 

最初に早期離職者インタビューを始めた2012年頃(08~12卒中心にインタビュー)の入社理由は「大手だったから」「人事の人が魅力的だった」「この業界に行きたいと思っていた」「地元だから」などが多かった気がします。今回のインタビューでも同様の声は数多く聞かれますが、先ほども書いた「会社の理念に共感した」という声も少なくありません。

 

理念採用って何?

 

新卒採用において福利厚生やネームバリューで大手企業と比べたらベンチャーや中小企業に勝ち目はありません。そこでベンチャー企業などが採用時に行うのが理念採用です。

会社の理念、存在理由、目指す社会の姿を語り、「その実現のために一緒に働きませんか?」と口説くわけです。

 

やりがい搾取なんて言葉もありますが、個人的には理念採用そのものは悪いものではないと思います。人によって働くときに重視するポイントは違うからです。福利厚生や給料などを重視する人もいれば、働く企業の理念を重視する人、職種や業種にこだわる人もいるでしょう。それぞれが重視するポイントに基づいて企業選びをできるのが就職活動の大きな特徴なので、理念を重視する学生に対して自社の理念を伝えることは悪いことではないし、中小企業なのに福利厚生をひたすらアピールする会社よりは効率的な採用だと思います。

 

理念に共感した社員が辞めていく理由

 

理念に共感して入社してきた新入社員が辞める理由はなんでしょうか。

やっぱりこの理念は違うと思ったからでしょうか。

 

私がインタビューをする中で多く聞いたのは「採用のときは理念と言っているけど、仕事中はとにかく売上、利益の話しばかりで理念の話しは一つも出てこなかった」というケースです。

採用時にはあれだけ理念を語っていたのに、配属されて上司から言われる言葉は「今月の売上目標」のことばかり。理念の話しが出てくるのは年に数回。確かにこんな状況では理念への共感度が高い社員ほど辞めたくなってしまいそうです。

 

新卒社員と中途社員との溝

 

同じようなケースで新入社員が「中途社員へ違和感を覚えた」という話しもよく聞きます。新入社員は理念に共感した入社したのに、中途採用の管理職は理念へは無頓着。そもそも転職理由も理念への共感ではなくて「今伸びてる会社で給料もアップするから」なので理念なんて頭にありません。企業が急激に成長する中で中途採用で人員拡大をしている場合、即戦力で実績を残す中途社員の意識と、理念に共感して入社してきた新入社員との間に大きなギャップが生じているのです。

 

理念採用をするならやり切る覚悟が必要

 

理念採用そのものを否定するつもりはありませんが、口では理念が大切と言いながら、経営陣の言動が「今は利益の方が大切」「今は理念が大切」と場合によってぶれているケースでは、いつか社員にも見透かされます。

また、新卒は理念採用だけど中途は条件面を訴求して採用というケースもあります。中途採用の方が家族を持っているケースや前職の収入など、新卒よりも働く条件にシビアになる面は仕方がない部分もありますが、理念採用をするなら中途採用であっても理念の理解と共感は必須条件にすべきです。

 

福利厚生を充実させるよりも理念採用の方がお金もかからないから、なんて理由で採用している会社は、どれだけ業績が良くて採用がうまくいっていたとしても「やりがい搾取」と言われても仕方ありませんし、遅かれ早かれ淘汰されていくと思います。