最近話題になっている「ゆるブラック企業」というワードをご存知でしょうか。 これは、ブラック企業のように過度な残業やパワハラなどはないものの、仕事で成長できない会社を指します。 近年、働き方改革などによってブラック企業は減りつつあります。 しかし、ブラック企業より労働環境が改善されているはずの企業においても、若手社員が早期離職してしまうことが問題視されているのです。 この記事では、ゆるブラック企業について解説するとともに、自社がゆるブラック企業と認定されないためにはどのような点に注意すべきか解説します。
本記事の要約
「ゆるブラック企業」とは
SNSやニュースで「ゆるブラック企業」というワードを目にする機会が多くなりました。
ゆるブラック企業に明確な定義はありませんが、仕事量は多くないけれど成長できない環境を指す場合が多いようです。
「ブラック企業」のイメージは、残業時間が長く休みも取りにくい。社内の雰囲気が悪いなどの印象の方が多いでしょう。一方「ゆるブラック企業」とは、ブラック企業ほど仕事量は多くないものの、単純作業がずっと続いて成長できない環境の会社と言われています。
(この記事の内容は、こちらの動画でも解説しています。)
ブラックはダメ・ホワイトもダメ 今どきの会社選びの基準
少し前に、ブラック企業から環境を改善してホワイト企業になっても、ホワイト過ぎるとまた良くないというのが話題になったことがありました。
2022年12月の日経新聞に「職場がホワイトすぎて辞めたい 若手、成長できず失望」というタイトルの記事が掲載され、Yahoo!ニュースのトップニュースにもなっています。
これ以降Yahoo!ニュースを見ていると、他にも「ホワイト企業を辞めたい」「ホワイト企業を若手が辞める理由」などの記事が多く見られるようになりました。
ここで言われているホワイト企業は、一見ホワイトのようですが、実はゆるブラック企業なのかもしれません。
業務量は多くないが成長できないというゆる企業に、あなたの会社も陥ってはいないでしょうか。
就活生が企業を選ぶ基準は「成長できるかどうか」
ところで、ゆるブラック企業は就活生や若手社員からはどのように捉えられているのでしょうか。
株式会社文化放送キャリアパートナーズが実施した調査の中に、次のようなアンケートがあります。
あなたは企業を選びにあたり、「入社後成長できるか」を重視しますか
出典:株式会社文化放送キャリアパートナーズ 2024年卒ブンナビ学生調査2023年2月より
- はい 50.2%
- どちらかといえば、はい 41.2%
- どちらかといえば、いいえ 5.9%
- いいえ 2.8%
上の結果から、90%以上の人が入社後成長できるかどうかが大事だと考えていることがわかります。
「成長できないから辞める」はアリかナシか
では、「このままこの会社にいても成長できないから辞める」という意見は若手社員にとってありなのでしょうか?
先ほどと同様、文化放送キャリアパートナーズが就活生に対して実施したアンケートに、次のような質問があります。
出典:株式会社文化放送キャリアパートナーズ 2024年卒ブンナビ学生調査2023年2月より昨今、入社後に「ブラック企業でないものの、成長できないから」という理由での早期離職について報道があります。どう思いますか。
- その理由に同意できる 30.1%
- どちらかといえばその理由に同意できる 35.6%
このアンケートの結果からみると、回答者の6〜7割の人が「成長できない環境ならやめても仕方がない」と考えているようです。
つまり、若手社員は仕事を通じて成長したいと考えているのに加えて、「成長できないから辞める」ということにネガティブな感情をもっていないというのがわかります。
ゆるブラック企業は不人気
前述の調査とは別に、株式会社AlbaLinkが「ゆるブラック企業に関する意識調査」を行いました。
出典:株式会社AlbaKLink「ゆるブラック企業に関する意識調査」ゆるブラック企業で働きたいと思いますか?
- 全く思わない 21.9%
- あまり思わない 46.1%
- まあ思う 27.3%
- とても思う 4.7%
働きたいと思わないと回答しているのは、合わせて60%以上になりました。
つまり、半数以上の人がゆるブラック企業は嫌だと考えているようです。
ゆるブラック企業=成長できない
ではなぜ、ゆるブラック企業で働きたくないのでしょうか。
前述の「ゆるブラック企業に関する意識調査」では、その理由も調査しています。
出典:株式会社AlbaKLink「ゆるブラック企業に関する意識調査」ゆるブラック企業で働きたくない理由
- 成長できない 134
- 収入が増えない 123
- やりがいがない 38
- 将来が不安 30
- 頑張っても評価されない 19
- 雰囲気が悪い 16
- ストレスが大きい 7
理由の中で最も回答が多いのは「成長できない」で、ゆるブラック企業は成長できないという事実とリンクしています。
さらに、「将来が不安」という点にも回答が集まっていることにも注目できます。
次点における仕事のやりがいのなさや将来が不安だという回答にも、つまるところ成長と収入の不安がベースになっていると考えられるでしょう。
「ゆるブラック企業で成長できないから辞める」というのは、今の時代ではスタンダードになってきているのかもしれません。
早期離職の三大要因の一つ 成長予感
この「ゆるブラック企業は成長できない」という点を考察する前に、まず早期離職の三大要因の一つである「成長予感」について考えてみましょう。
カイラボでは、若手社員の早期離職の三大要因を次のように提唱しています。
【若手社員の早期離職 三大要因】
- 存在承認
- 貢献実感
- 成長予感
ゆるブラック企業を辞める理由は、まさにこの中の「成長予感」の不足にあたります。
この会社でこの仕事を続けていても自分が成長できるような予感がしない、なりたい自分になっていく感じがしないから辞める、ということです。
これはゆるブラック企業に限らず、いわゆる大手企業といわれる会社や、就職人気ランキングで上位になる会社を辞めた人にも多い離職理由です。
ちなみに、パワハラ・セクハラが理由で辞めた場合は「存在承認」の不足であるケースが多く、スタートアップ企業や上場したベンチャー企業などでは「貢献実感」不足が多いようです。
では、この成長予感はどのように醸成していけばよいのでしょうか。
成長予感を醸成するには、若手社員にどのような業務を任せるかというのも大事ですし、上司や先輩がしている仕事を見せることも大切です。
例えば、こなしている仕事が単純作業に思えたとしても、上司や先輩の華やかな仕事との関連性を説明して納得すれば、一見地味な仕事でもがんばってもらえるでしょう。
なぜならこの地味な仕事をがんばることが、自分の成長予感につながっていくためです。
しかし、華やかな仕事は能力がある人だけに任されるもので、能力がない人はとりあえずの雑用を任されていると捉えられていると、成長予感は高まりません。
目の前の仕事一つへ取り組むにしても、なぜそれをする必要があるのか、将来取り組みたい仕事へどのようにつながっていくのかをきちんと伝えられるかどうかが大切なのです。
例えば、新人の仕事でいうと、資料印刷や議事録作成かもしれませんし、一次対応のメール返信かもしれません。
単純に見えて誰でもできるような仕事でも、なぜそれが最終的にあの業務につながるのか、進みたいキャリアにどのようにつながるのかをきちんと伝えることが非常に重要になってきます。
まとめ
成長できない環境=ゆるブラック企業という認知は、徐々に広がってきています。一方でパワハラやひどく残業させるようなブラック企業自体は、以前に比べると減少していると感じます。ゆるブラック企業はおそらく、これからさらに社会が良くなっていくための過渡期として出てきているものなのではないでしょうか。
とはいえ、仕事で成長できないというのは大きな問題です。
特に若手社員の場合、自分が仕事を通じて成長できるかどうかというの企業選びにおける大きなポイントです。
ですから、企業側は若手社員の成長予感を高めるような努力をしていかなければ、ゆるブラック認定をされる可能性があります。
では、若手社員の成長予感はどのようにして高めれば良いのでしょうか・
若手社員の成長予感を高めるには、リーダーの考え方のアップデートが不可欠です。
リーダーをいかにアップデートしていくか、その上で会社の仕組みをどうやって作っていくかということが重要です。
新しく作るのは仕組みだけでもいけませんし、リーダーがとにかくビジョンやパーパスを提唱しても、どちらかだけではいけません。
リーダーの考えと仕組み、どちらも大切なのです。
カイラボでは、企業のご状況に応じて、リーダー研修の企画提案を行っています。研修はすべてお客様向けにカスタマイズしてご提供しておりますので、ご興味のある方は下記参考資料をご覧いただくか、当社問い合わせフォームよりご連絡ください。