今、企業が社員のキャリア自律に向けてキャリア研修を行う機会が増加しています。
バブル崩壊以前、キャリアは入社した会社とともにあり、主に会社の主導で形成されていくものでした。
しかし現在では、キャリア形成は個人のキャリア自律によってなされるべきだという傾向にあります。
社会の変化にともなって、キャリア形成に求められる姿勢も変化しているのです。
この記事では、企業内でのキャリア研修が増加している理由について詳しく解説していきます。
本記事の要約
会社で社員にキャリア教育を行う時代
最近、会社が費用を負担して社員にキャリア研修を行う事例が増えてきています。
カイラボでも、サービスの一つとしてキャリア研修を行っています。
この3年ほどで、社員向けのキャリア教育の引き合いは以前に比べてかなり増加しました。
カイラボは、創業当初から企業に対してキャリア研修を提案・実施していました。しかし、わざわざ会社の費用を使って社員のキャリア教育をする必要性が理解されず、実施される会社は少ない状況でした。
実際、キャリア研修は2018年ごろまでは年に2、3社の実施でしたが、2021年は8社で16回の実施になりました。
これは、新入社員研修内のキャリア研修を含みません。純粋に社員に対するキャリア研修だけの回数になります。
さらに2022年では、キャリア研修の実施数はこれより増える見込みです。
【解説動画】
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時代別の企業とキャリアとの関わり方
なぜ今、企業内でのキャリア研修は増えているのでしょうか。
まず、企業とキャリアとの関わり方が、時代の変遷とともにどのように変化していったのか考えてみましょう。
- 高度経済成長期:キャリアは会社とともにある
- バブル崩壊:キャリアは自己責任
- 現在:各自のキャリア自律が求められる
これらはあくまでイメージですが、会社とキャリアの関係はこのように変わっていったと考えられます。
高度経済成長期
高度経済成長期では、いわゆる終身雇用、年功序列が当たり前でした。
入社した会社の中で、退職までキャリアがどんどん上がっていくという考えです。
バブル崩壊
バブル崩壊によって会社が倒産、あるいはリストラされたとしても、それは今まで自分のキャリアと真剣に向き合ってこなかったためであるという考え方です。キャリアは会社責任ではなく、自己責任だという流れに変わってきました。
現在
キャリア自己責任論の流れは、そのまま現在にも引き継がれています。
現在では、個人にキャリアの自律ができるような能力やスキルを身につけることが求められています。
キャリアの自律は、ある意味でビジネススキルの一つとして考えられているのです。
そのため、会社は社員にビジネススキルを身につけるのと同様に、キャリア研修を行い始めたという経緯がありす。
企業の社員のキャリアに対する方針
企業における、社員のキャリア形成に向けた今後の方針についての調査があります。
回答としては、主に以下の2つになりました。
- 社員本人の自律性を重視したキャリア形成が基本、しかし特定層の社員に対しては会社が積極的に関与 54.4%
- 会社の主導によるキャリア形成が基本、しかし社員本人の意向もできるだけ尊重 35.9%
これらを見ると、全体的には個人のキャリア自律を重視している傾向にあることがわかります。
キャリアは会社がつくっていくものではなく、社員自身の考えが重視されるという社会の流れの中で、会社も社員のキャリア自律を促していくための研修を行っていく必要があるのです。
社会の変化を前提としたキャリア形成
なぜ、社会は個人のキャリア自律を求めているのでしょうか。
現在の社会はVUCA(ブーカ)という言葉で表されるように、変化のスピードが早く今後の予想は難しい状況です。
このような社会の中で、計画に沿ったキャリア形成の運用というのは困難であるといえます。
例えば、4年制の大学を卒業して新卒採用で入社したとしましょう。
入社した会社で40年間働くとしてキャリアを計画していても、40年後の社会自体がどうなるかは予測できません。
計画はある程度立てておきながらも、環境の変化に応じながら随時軌道修正をしていく必要があるのです。
このように、社会が大きく変化していくという前提がある中で、企業が社員のキャリアを保証・担保することも難しくなっています。
だからこそ、社員一人ひとりに対してもキャリア自律をしてほしいという思いがあるのです。
まとめ
企業が社員へ提供するキャリア教育は、かなり増加している傾向にあります。
企業によって様々ですが、多くは社員の自発的なキャリアを重視している傾向が強いことがわかります。
キャリアに関してもこれからの社会の変化に対応していくということが、個人・企業両方にとってキーワードになっていくでしょう。
キャリア論については、他の記事・動画でも解説しています。合わせてぜひご参考ください。