人手不足でもSNS活用で採用勝者になれる時代 -SNS採用で企業が知っておきたい注意点-(後編)

株式会社カイラボ

前半は採用活動においてツイッターでの発信の仕方をテーマに、松本さんと対談しました。

企業の公式アカウントだけよりも、社長が先陣切って社員一人一人がアカウント運用しながら、ツイッター上での社員同士の掛け合いも全部オープンにした方が良いというお話でした。

 

後半では、入社した後のミスマッチが起きる可能性を大前提に考えて、情報発信の仕方やターゲットを決める重要性について伺いました。

(前編の記事はこちら)

人手不足でもSNS活用で採用勝者になれる時代 -SNS採用で企業が知っておきたい注意点-  (前編)

ゲスト紹介

インタビュアー紹介

井上 洋市朗

株式会社カイラボ 代表取締役

2008年 株式会社日本能率協会コンサルティングへ入社し、大手企業の業務改善などに従事。その後、社会人教育のベンチャー企業などを経て2012年3月に株式会社カイラボを設立。

2013年に新卒入社後3年以内で会社を辞めた早期離職者100人へのインタビューをまとめた「早期離職白書2013」を発行。

早期離職の実態と対策に関するコンサルティングのほか、セミナーや研修を全国で実施。現在は高校生や大学生向けのキャリア教育の授業にも登壇し、年間100件以上のセミナーや研修などを行っている。

企業にも選考過程で応募者に見られている意識が必要

井上:企業がツイッターでの情報発信のテクニックだけを実践しても、「この会社って良いな」と感じた応募者が、入社後にミスマッチが起きてしまう可能性もありますよね。
ミスマッチが起きないための見極め方や、情報発信をするうえでのターゲティングの仕方をお聞きしたいです。

松本:見極める方法もありますが、まずは現時点の採用活動の仕方に対して意識改革が必要ですよね。
企業は応募者に会社を選んでいただくという意識が本当に大事なんですよ。
まだ意識に変わっていない人事の方が多くて、これだけ採用難なのに自分たちが応募者を選んでやる意識が根付いています。

転職したい人が真っ先に思い浮かべる会社にブランディングする

松本:企業が採用したい応募者をターゲティングして発信する話にもつながりますが、アメリカでは5年ほど前からキャンディデイト(転職希望者)を大切にする姿勢が表れてきています。キャンディデイト企業が応募者に対して、どのように構築するかが肝だと言われています。
採用計画には中長期単位の採用プランニングがあり、長期のプランニングは3年後に入社して欲しい人たちに対しても企業のブランディングしておくものです。今すぐ採用したのではなくて、先を見越して自社の特徴をアピールしたりなどですね。
もし、転職を考えた人がパッと思い浮かべてくれるような会社というブランディングが必要になります。

井上:今すぐ転職したいわけではないけれども、転職するならば第一候補に入れてもらうブランディングですよね。

松本:そのために応募者には採用後のポジションではなく、自社の文化やビジョン、そして社員にはこのような人たちがいるといったアピールを長くやっていかなくてはなりません。
だから、企業は採用専用のサイトではなくてツイッターの方が、自社の雰囲気が広く伝えられるようになります。

井上:私は今、自分で会社をやっていますが、もし自分の会社が潰れたらこの会社で社員として働きたいと思う会社はツイッターを見ていると出てきますね。

応募者に面接を辞退されてしまう会社の特徴

松本:井上さんの「社員として働きたい」と思うことも、採用ブランディングの力ですよね。人事は書類選考から面接まで応募者を見ていると思っていても、一方で応募者に見られてる立場なんです。

井上:私は新卒・中途採用で転職活動をしましたが、特に中途採用は面接官としてふさわしくない人が対応している印象を受けるときがありました。

松本:確かにいますよね。結局は企業が面接のトレーニングをしていないから、応募者に断られてしまうんですよ。でも、面接は独自のやり方で良いからとトレーニングをしない企業が多いです。
面接官は応募者にどう見られているかが分かりませんし、会社の説明が面接官によってバラバラなケースも聞きます。だから、会社のビジョンなど最低限の情報は社内で統一しないとですし、面接官が自分の対応の仕方がどう見えているかも共有しておく必要があります。
あと面接は応募者の話を聞くだけではなくて、会社をアピールする場なので、それを含めた面接のやり方を学ぶと良いです。
それに、採用結果の通知にも注意が必要です。企業は選考結果を早く出さなくてはいけないと意識すべきです。不採用だとしても冷たい感じのお祈りメールを送るだけなら、ネットですぐに拡散されますし、どんどんその会社に人が入らなくなっていきます。 だから、残念ながら自社に縁がなかった方に対しては、最大限の誠意を尽くして良い経験をしてもらうと、企業の風向きが変わります。

応募者に良い会社と思われるには3つのポイントがある

井上:まずは応募者が自社と合うかを見抜く以前に、応募者に見られている意識が大事ですね。
私が就活生の頃、スポーツマーケティングの会社に応募したことがあります。選考に落ちた時に「応募してくれてありがとうございます」と書かれた手紙が届きいたことがありました。そういうことがあると、落ちた会社でも好きになりますよね。

松本:(企業の対応は)すごく素晴らしいですね。

井上:面接官の態度や選考結果通知時の企業の姿勢ってけっこう見られていると思うんです。
カイラボが実施する面接官トレーニング研修では「応募者を自社に惹きつける」「自社に合うかを見抜く力」に加えて「応募者に嫌われない」という3つのポイントを伝えます。
面接官のトレーニングといえば応募者の評価を一定にしたり、誰が見ても同じ評価にするところに意識が行きがちですが、それよりも嫌われないことや会社の魅力を出すのが大事だと思います。

松本:応募者の評価基準を合わせるのはもちろん、同時に応募者に面接官がどう見られているかを意識するといったレベルアップも合わせてやるべきですよね。

面接の様子を撮影して面接官の態度を確認しよう

井上:社員数100~200人規模の企業のケースですが、人事が最終面接に通した人がことごとく社長に落とされるので、最終的には人事担当者は社長が通しそうな人だけを最終面接に通すようになってしまったことがあります。
似たようなことが起きているケースはあると思うのですが、こんなときに人事はどのように対策したら良いんでしょうか?

松本:1つは面接の様子を録画してシュミレーションすることですね。
録画したものを面接官自身に見てもらうことで、客観的に見て自分の態度って「こんな感じだったのか」と気づいてもらえば変わりますよ。面接官と応募者の両方を撮って面接官に見てもらうと、かなり効果があります。

井上:例えば、肘立てて聞いてるとかの態度にも気が付けそうですね。

松本:そうですね。あと、面接官の口調が偉そう、詰めている、話がわかりづらいとか。面接官には良い例のサンプルを先に見せて、後から面接官が実際に行った面接と比べると、とんでもない差があるので、より気付きが得られると思います。

ツイッターで応募者が信用できるかを見極めるには?

井上:ここまでは採用過程において、応募者を見極める前に必要な意識のお話しをうかがってきました。次からは応募者を見極めるポイントはどこなのかをお聞きしたいです。

松本:一般的には応募者の良し悪しを職務経歴書などから見極めると思いますが、今回はSNSならではの見極め方をお伝えしたいと思います。
今の時代は企業も個人SNSを見るし、個人も企業のSNSを見るので、SNSは貴重な情報源です。
特にSNSの良いところは嘘がつきづらいところです。SNSは多くの人が絡むほど客観的な評価が入りやすいし、人柄も出やすく信頼もしやすいです。企業が採用活動する場合も、個人のSNSで性格や信頼ができるかどうかをちゃんと見た方が良いかなと思います。
採用においてはSNS上で企業が個人と長く付き合って、緩やかな候補者探しをするのに適しています。

井上:企業の採用担当と個人がフォローし合っていて、お互いが良さそうと思っているときに、個人側が会社を辞めようと思っていると報告したりしますよね。

松本:あるベンチャー企業が業績の悪化が原因で中心的メンバーの5、6人が一斉に辞めざる得ない出来事があったみたいです。その人たちは転職活動しますと宣言していましたが、悪い印象を覚えないんですよ。その会社の経営幹部も社員の転職活動を支援していて、SNS上に「皆さん、良い会社があればぜひご紹介を」と書くと「うちの会社に来ませんか?」と返信が殺到していました。
リプ欄に人事部長や社長の返信がズラッと並んでいたのは感動的でしたね。これぞ、ツイッター採用の真髄です。
その会社が非常に良い情報を発信して信頼が上がってきて、他社から欲しいと言われるまでになった方が、絶対に社員のキャリアアップになりますよ。
新時代ならではのSNSを使った採用活動は、今後もっと増える気がします。

ツイッターは嘘がつきにくいSNSだから活用すべき

井上:(SNSを使った採用活動は)企業や個人にとってもWIN-WINな関係が作れますよね。
言語化能力やアウトプットの能力、普段の価値観もツイッターならちょっとしたところでポロっと出てしまうので。

松本:騙せないですよね。

井上:最近、私はツイッターをビジネス運用に若干切り替えています。
とはいえ自分の精神状態が少し弱っていると、同じような内容でも端々に出てしまいます。
ツイッターは弱っているときの対応の仕方も出ててしまう分、嘘がつきにくい。だから、公式アカウントよりは社員一人一人が個人アカウントで運用した方が良いんですね。人材業界を20年ほど見てきた松本さんによると、企業は採用活動でツイッターを運用した方が良さそうです。いつもはカイラボの動画にツイッターのアカウントを載せないんですが、今後は載せたいと思います。本日はありがとうございました。