2020年以降、急激に問い合わせが増えているのが「リーダーシップ教育」の分野です。リーダーシップの強化は組織のパフォーマンスにも直結するとともに、変化の激しい時代においては一人ひとりのリーダーシップが重視されています。
また最近では、「中堅社員(リーダー層)」に向けたセルフリーダーシップ研修のご依頼が増えています。
このレポートでは2024年7月24日に実施した大手シンクタンクグループ企業様での「セリフリーダーシップ&キャリア開発研修(全2日間)」の中から、第1日目の様子をお伝えします。
また今回の研修では、TAC株式会社様と共に密に連携をとりながら、お客様の課題抽出から解決の方向性決めを共同して行いました。お客さまの課題に沿ったオーダーメイド型の研修をご提供しております。
研修概要
研修日程 :2024年7月、11月の全2回
研修時間 :9時~17時30分(昼休憩1時間含む)
実施方法 :対面形式
受講人数 :全員で33名 各回10名程度で分散開催
受講対象者 :次期管理職の等級者
研修プログラム
1.管理職・リーダーの世代を取り巻く環境
2.セルフリーダーシップ-すべての人に求められるリーダーシップ-
3.キャリアオーナーシップのポイント
(キャリアアンカー、あなたのキャリアを英雄の旅に例えると?人生のストーリー整理)
4.自分の未来と会社の未来を重ねる(Will Can Must、自分と会社のPEST分析)
それでは、カイラボの秋山がオブザーブした研修の一日をご紹介したいと思います。
本記事の要約
1.管理職・リーダーの世代を取り巻く環境
研修の初めに行われた自己紹介では、講師から「ご自身のリーダーシップについて、できていること、意識していること、もしくは不安なことは何ですか?」という質問が投げかけられました。
その際に多くの受講者の方が”リーダーシップ”に対する不安を率直に共有していました。
例えば、「前職でリーダーの経験がない中で、リーダーとしてチームを引っ張れているか不安がある。」「リーダーシップにはあまり自信がないと自覚している。」「プロジェクトがうまく遂行できるか常に不安を感じている。」といった意見が挙がりました。
一方で、リーダーシップを発揮するために意識していることも多く語られました。
例えば「チーム内で積極的にコミュニケーションを取るよう心がけている」「迅速な情報共有を意識し、仕事の依頼が上から目線にならないように注意している」など、具体的な努力も挙げられました。
仕事に対する満足度が低いのは、特に40代の層に多いと言われています。なぜなら、この年代はリーダーシップを発揮しなければならない立場にありながらも、部下やチームメンバーとの人間関係に悩みを抱えており、リーダーシップがうまく取れないことで自身のキャリアビジョンに不安や不満を感じている方が多いことが理由です。
今回の研修はセルフリーダーシップに重点を置いています。セルフリーダーシップとは外部からの指示に依存せず、自らの意志で行動し、リーダーシップを発揮するための基本的なスキルです。
このスキルを磨くことで主体的に働く姿勢が育まれ、それが結果として「キャリアの自律」にもつながります。セルフリーダーシップの強化は組織全体のパフォーマンスの向上にも繋がるため、いま多くの企業が研修に力を入れています。
2.セルフリーダーシップ-すべての人に求められるリーダーシップ-
続いて、リーダーを取り巻く環境変化を理解したうえで、理想のチームにおけるリーダーとメンバーの行動特性について考えていきました。
ここでは、理想のチームの「リーダーの行動特性」について、参加者から挙がった声の一部をご紹介します。
リーダーの行動特性
- メンバーが提案や発信した内容にちゃんと耳を傾け、常に聞く姿勢を持ちながらも、最終的な決断をしっかりと行う。
- 全体を俯瞰し、メンバーやお金、時間を考慮した上で、スケジュールの調整やタスクの割り振りを行い、リスク管理を徹底する。
- 全体の課題や業務を把握し、メンバーの特性を理解した上で役割を分ける。常にコミュニケーションを取り、フォローしながら業務の方向性を確認し、正しい方向に進んでいるかを把握する。
- リーダーとしてチームの役割や目標をしっかりと設定し、コンセプトをきちんとメンバーに共有し、プロジェクトが成功できるようにフォローを行う。
では、理想のチームの「メンバーの行動特性」はどうでしょうか?以下が、参加者から挙がった声の一部です。
メンバーの行動特性
- メンバー全員が発言し、提案を活発にする。他のメンバーが提案した内容は否定せずに一意見として捉えること。
- 割り振られたタスクをしっかりとこなす。スケジュールの進捗をチームできちんと共有する。
- メンバー間で業務をフォローしあうのが大事。
- そのプロジェクトが実現できるのかどうか、リーダーだけでなくメンバーも主体的に考えるべき。
チームの置かれた状況によって、必要とされるリーダーシップの種類は異なります。ある研究結果によれば、状況に応じてリーダーシップのスタイルを柔軟に使い分けるリーダーの方が、より良い成果を残しやすいことが示されています。
このような背景から、カイラボの研修では、「受講者が状況に応じて適切なリーダーシップを発揮できるようになること」が重要であるとお伝えしています。
3.キャリアオーナーシップのポイント
キャリアアンカー
リーダーシップの柔軟な使い分けが重要であることを理解していただいたうえで、次にキャリアンカーを行っていただきました。
キャリアアンカーは、仕事やキャリアの方向性を考えるためのツールです。簡単に言えば「自分がどんな仕事を大切にし、どんな仕事をしたいか」を知るための「自己分析」の一つです。
今回の研修では、事前課題としてキャリアに関する40個の質問に答えていただきました。この質問に対して6段階の評価を行い、回答を集計します。その結果、各項目の得点が高い順に、あなたが重視しているキャリア志向が明らかになります。
これにより、仕事において自分が何を大切にしているのかがわかります。例えば、「自分のスキルや知識を活かしたい」という人は「専門能力志向」が強いと言えます。「自分で決めて動きたい」という人は「自立志向」が強いかもしれません。他にも、「社会の役に立ちたい」や「安定した仕事がしたい」など、さまざまなタイプがあります。
今回の受講者の方々には、「専門能力志向」と「社会貢献志向」を重視する傾向が見られました。グループ内で自分のキャリアアンカーを共有し、その特徴にあてはまることや、それに関連するエピソードを振り返っていただきました。
調和志向
「親の介護を行うようになってから、調和を意識するようになった。」
「昨年結婚して家族ができたので、調和志向が強まったのかもしれない。」
「妻が管理職なので、そのケアを重視したいから調和を大切にしている。」
安定志向
「この会社に入社する前、ブラック企業に勤めていた経験があり、そこから安定志向が強まった。」
チャレンジ志向
「チャレンジ志向は3位になったが、自分ではそうは思っていない。」
キャリアアンカーによって自分のタイプを知り、将来の働き方を考えるヒントを得た方もいれば、結果に納得できない方もいらっしゃいました。しかし、この自己理解は将来のキャリアを考える上での重要なステップとなります。
英雄の旅
次に、受講者の方の今までのキャリアを「英雄の旅」に例えてより深く考えてみましょう。
「英雄の旅(Hero’s Journey)」は、ジョーゼフ・キャンベルが提唱した物語の構造理論であり、世界中の神話に共通する物語の流れをフレームワークとしてまとめたものです。
この「英雄の旅」のフレームワークは、多くの映画や文学作品でも見られ、特にヒット作の多くがこのプロットに基づいていると言われています。例えば、『スター・ウォーズ』や『ハリー・ポッター』シリーズ、『ライオン・キング』などの作品がその典型です。
「英雄の旅」は、人材教育やリーダーシップ開発プログラムで効果的に活用できます。なぜなら、未来のキャリアを描くためには、過去の経験に意味を見出すことが重要だからです。このフレームワークに沿って今までのキャリアの振り返りを行いました。
実際の内容を一部抜粋してご紹介します。
社会人のスタート時、どのような基準で会社や仕事を選びましたか?
- 美大で映像デザインを専攻後、漠然と「音楽に関わる仕事がしたい」と考え、映像制作会社に入社しました。
- 興味のある分野で楽しそうだと感じ、アルバイトの流れで深く考えずに選択しました。安定性を重視して選びました。
上記の価値観やミッションに関連して、「今の会社への入社理由」を説明してください。
- キャリアアップを目指し、安定した環境が欲しかったため。ビジネスコミュニケーションを通じて人の役に立つ仕事がしたく、大手企業に入社しました。
- 今までの知識や経験を生かして即戦力として働けると感じ、自分の得意分野で活躍できそうだったからです。
- 親会社が安定しているため、子会社も安定していると思いました。また会社の雰囲気も良かったからです。
社会人になって最初に直面した試練は何でしたか?また、その試練をどのように乗り越えましたか?
- メモを見ながら仕事をしていた際、「覚えるのが仕事だ」と叱られたため、なるべく頭に叩き込み、メモを取らないように努力しました。
- 直属の上司とうまくコミュニケーションが取れず、他の上司に相談して解決しました。
仕事であなたを支えてくれる人は誰ですか?
- 先輩や各部署のプロフェッショナルが頼りになります。また、大学時代の友人からも刺激を受けています。
- 同僚や先輩、そして前職の先輩が支えてくれています。
社会人になってから最大の試練は何でしたか?また、その試練をどのように乗り越えましたか?
- 自分が取りまとめる立場になった際、売上やマネジメントの管理に苦労しました。人に聞いたり、本を読んだり、自分で調べたりして対応しました。
- 新しいシステムの立ち上げに参加しましたが、全く知識がない状態で臨み非常に苦労しました。上司に相談しながら乗り切りました。
現職に入社してからこれまでを振り返り、大切にしている価値観や、今のミッションを教えてください。
- コミュニケーションを目に見える形で計ることを大切にしてきました。それをプロジェクトや企画という広い範囲で考えるようにシフトしていきます。
- 未経験のことにも挑戦することも、公私のバランスを大切にすることも、両方心がけています。
- コミュニケーションを通じて業務を遂行し、内部の課題を解決することに努めています。リーダーとして、課題解決に力を入れています。
人生グラフの作成
続いて英雄の旅で振り返った過去のキャリアを参考にしながら、ここからは人生を振り返っていただきます。もちろん書きたくないことは書かなくて良いという前提のもと、今回は参加者が奇数だったため、オブザーブ参加の私もペアワークに参加しました。
以下が作成した秋山の人生グラフです。
人生グラフの作成とペアでの共有を終えて、お相手役の方から頂いたコメントをご紹介します。
「人生グラフを書いたことで、今まで忘れていた出来事や感情を思い出すことができました。特に転職の「理由」や会社を選ぶ際の「基準」について等、かつて自分が抱いていた「こんな風に働きたい」という理想があったことを再認識しました。これらの理想や目標は、日々の忙しさの中でいつの間にか忘れてしまっていましたが、今回の振り返りによってそれを再び思い出すことができ良かったです。」
普段、自分の人生を振り返ることは中々ありません。昔の自分が掲げていた理想や目標を、働くうちにつれて意識することが少なくなっている方も多いのではないでしょうか。
しっかりと時間をかけて内省し、自分が大切にしていたキャリアの軸を思い出していただくと同時に、今後のキャリアについても考えるきっかけにしていただきました。
4.自分の未来と会社の未来を重ねる
私と会社の未来予想図
これまでは過去を振り返る内容が中心でしたが、ここからは自分と会社の未来について考える時間です。
具体的には、文化資本、社会関係資本、経済資本の3つの観点から、それぞれの「ありたい姿」と「そのために会社でできること」を記入していただきます。
このワークで多くの方が挙げた答えは、経済資本における「積み立てNISAをする。」や「貯蓄額を増やす。」といった目標でしたが、注意すべき点としては、Willの思考(自分がありたい姿)とMustの思考(義務感に基づく考え方)を混同しないことです。
このワークで特に大切なのは、「義務」や「やらねばならない」という考え方から一旦離れ、まずは自分自身が心から望む「ありたい姿」をしっかりと描くことです。
ご自身の未来についてじっくりと向き合い、具体的なビジョンを描いていただきました。
「あなたのキャリア観を一言で表すとしたら?」
最後に、受講者の方にご自身のキャリア観について考えていただきました。
「あなたのキャリア観を一言で表すとしたら?」という問いを通じて、自身のキャリアに対する意識を言語化し、明確にすることが狙いです。カイラボでは「キャリアが充実しているリーダーが増えなければ、組織全体の発展は難しい」と考えているからです。
それでは実際に上がった受講者の方のキャリア観をご紹介します。
「生涯現役」
「アンテナを増やしフットワークを軽く」
最初はリーダーシップに対して不安を抱えていた受講者が多かったものの、研修の終わりには、前向きなキャリア観を記入している方が多い印象を受けました。
これは研修を通じて、リーダーシップやキャリアに対する考え方が前向きに変わり、自信を持って未来を描けるようになった結果だと考えます。「自分らしいキャリア観」を日々大切にしていただきたいと私たちカイラボは考えています。
セリフリーダーシップ&キャリア開発研修のまとめ
今回実施したセリフリーダーシップ&キャリア開発研修は2日間構成のため、第2回目に向けた行動目標を記入し研修は終了となりました。
今回はリーダー層のキャリアの振り返りに重点をおいた研修を実施しましたが、リーダー層の「ハラスメント対策」の一環としてアンコンシャスバイアス研修も行っています。松竹株式会社様の事例は下のリンクからご覧ください。
カイラボはお客様のオーダーに応じたカスタマイズ研修をご提供します。
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