「メンターになったけれど、どんな役割かいまいちわからない」
「メンターとして新入社員のサポートをうまくできるか不安」
はじめてメンターになった方にとっては、不安なことや心配事が多いと思います。
多くの企業で導入しているメンター制度ですが、メンターになっても何をしたらいいかわからない、メンターとしてやっていく自信がないという方もいます。 はじめてメンターになった方に知っていて欲しい「傾聴」と「フィードバック」のポイントをお伝えします。
こちらの記事の内容は株式会社カイラボ代表取締役の井上が動画でも解説中です!動画も是非ご覧ください。
本記事の要約
メンターとOJT担当の違い
まずは、メンターとOJT担当との違いについて整理していきましょう。
会社によっては、OJT担当者とメンターを同じ方が担当しているケースもあるかと思いますが、メンターとOJT担当は目的が異なります。
OJT担当者の役割は主にこの2つです。
・実務の指導
・スキル習得のサポート
OJT担当者は、新入社員や新しく入社した社員の方に対して、現場で実際に仕事をしながら必要なスキルや具体的な仕事のやり方を教えたり、業務上で得た気付きや発見をフィードバックしたりしながら社員を育てていくことが主な役割です。
一方、メンターの役割はこちらの2つです。
・仕事内外の相談
・心理面のサポート
メンターの仕事としては、プライベートで悩んでいることの相談に乗ってあげたり、または職場での人間関係の悩みなどを聞いてあげたりすることがあるでしょう。このように社員の方のメンタル面を支え、サポートすることがメンターの役割です。
役割はイメージで伝えてもOK
メンターになった方は、新入社員の方に自分がメンターであることを伝える場面があると思います。
「悩み事があったらメンターの私に相談してください」と言われてもどんな悩みを相談すればいいか伝わりにくいですが、新入社員の方にメンターをよりイメージしやすくするために、
「メンターは、優しいOB・OG、優しい母校の先生」
と伝えてみてもいいかもしれません。
具体的には
「学生時代、一個上の先輩よりもOB・OGの先輩の方が優しく面倒を見てくれたり、悩み事を話しやすかったりしたりしませんでしたか?メンターは、そんなOB・OGのような存在です」
のような伝え方をしてあげることで、新入社員の方がメンターの方がどんなことをしてくれるのか、理解できるでしょう。
メンターの役割
メンターになった方は「メンターとは、どういう役割や目的なのか」を認識し言語化できていることが大切です。
ただ、メンターやOJTの目的は会社によって違いがあるため、役割に正解があるわけではありません。そのため、それぞれの企業で、自社での役割や目的を考えていく必要があります。
社内での役割の情報共有が大切
メンターの役割は、メンター本人だけが認識しているだけでは十分ではなく、自社内でしっかりと共有されている必要があります。
メンターの役割だけはなく、OJT担当や上司など新入社員の育成に関わる担当者が、それぞれの役割や立ち位置を把握していることが大切です。
情報共有のレベルとしては、
・メンターとして今どんなサポートをしているのか
・OJT担当が今どんな指導をしているのか
など、具体的に共有するとよいでしょう。
担当者同士で情報共有をしっかりと行っていくことで、それぞれの役割ごとの担当範囲が明確になり、たとえば「面談はOJT担当がやると思っていたので、メンターの担当だとは思っていなかった」のようなサポートの漏れを防ぐことができます。
新入社員の育成に関わる担当者の間で、それぞれの役割や関わり方、現在のタスクを共有しておきましょう。
信頼関係づくり 相互理解のポイント
メンターは、新入社員の方と信頼関係を構築していくことが非常に大切です。
新入社員の方の社内外を含めた悩み事の相談や心理面でのサポートは、信頼関係がないとうまくいかないからです。
相手のことをどれだけ知っていますか?
信頼関係を作っていくためには、新入社員の方とメンターの相互理解が必要です。
私たちカイラボではメンターを対象にした研修で、このようなシートを使って相互理解度を確認してもらっています。どれだけ書けるか、試してみてください。
シートの項目が信頼関係にとってなぜ大切なのかいくつか解説します。
名前
自分の漢字フルネームを間違われて、少し嫌な経験をしたことはないでしょうか?小さいことかもしれませんが、社内文章などで漢字が間違って書かれていたりすると、新入社員の方は、メンターの方と距離を感じてしまうかもしれません。
新入社員の方の漢字フルネームで書けるようにしましょう。
苦手な食べ物
たとえば、新入社員の歓迎会で、苦手な食べ物がメインのお店に招待されても、せっかくの歓迎会も気分良く参加することができません。また、普段の飲み会に誘うときにも苦手な食べ物があるお店は避けられるなら避けた方がよいでしょう。
好きな食べ物を知っておくことも大切ですが、苦手な食べ物についても知っておきましょう。
入社動機
入社動機は、面接用に準備していたものと本音があります。人によっては、本音の部分では「地元の企業だったらどこでもよかった」という方もいるでしょう。建前ではない本音の部分を知っておくことは、メンターにとってとても大切なことです。
メンターとの最初の面談で、雑談の流れで聞いてみるといいかもしれません。
メンターを悩ますジェネレーションギャップ問題
メンター研修の場面で受講者の方々からよく聞くのが、ジェネレーションギャップ問題です。私も新入社員と接していて、ジェネレーションギャップを感じることはあります。
しかし、みなさんがジェネレーションギャップだと思っていることが、実際にはジェネレーションギャップではないというケースもあるかもしれません。
「世代が違うからジェネレーションギャップがある」という思い込み
「若い新入社員と話していると、ジェネレーションギャップで話題が合わない」
メンターの方でこんな悩みを持っている方が、よくいらっしゃいます。
ただ、同じ世代であっても、話題が合うかというと必ずしもそうではありません。そもそも、その話題について知っている方が少数で、世代が同じでも話が通じないかもしれません。
はじめから「若い人だから、話が通じない」と思い込んで、新入社員の方に接してしまうと、話が合わないことを世代のせいにしている可能性もあります。
話が合わない原因が、ジェネレーションギャップ以外の要因にないかを考えることも大切です。
ジェネレーションギャップは、埋めることができる
また、ジェネレーションギャップは、少しの努力で埋めることもできます。
たとえば、
・新入社員の世代の価値観
・今、流行っていること
などはネットで検索すれば、ある程度知ることができます。また、新入社員の方から聞いた話題などを興味をもって自分で調べてみるのもいいでしょう。
信頼関係づくりには相互理解が不可欠ですが、相手が興味を持っていることに自分も興味をもつことを心がけてみてください。
メンターと新入社員の相互理解に活用できるツール
メンターと新入社員の方の相互理解していくためツールをいくつか紹介します。
ストレングスファインダー
『ストレングスファインダー』には、パソコンから受けられる自己診断テストが付いており、そのテストの結果でその人の強みや価値観を知ることができます。本の中では、それぞれの強みや資質の詳しい解説がされており、強みの活かし方などを理解できます。
『ストレングスファインダー』を使って、新入社員の方の強みや資質を理解していくのも、相互理解の1つの方法です。
モチベーショングラフ
モチベーショングラフは、今までの人生で楽しかったことや落ち込んだことなどを年齢ごとにグラフ化してもらうワークです。モチベーショングラフを作ってもらうことで、その人がどんなことを大切にしているかを理解することができます。
たとえば、「部活で結果を残せたことが嬉しかった」という方は「結果を出す」ことを価値を見出しているかもしれません。また、「大学で好きなことに打ち込めたことが最高」という方は、「好きなことを追求する」ことを大切にしていることがわかるでしょう。
新入社員の方の過去のストーリーや背景、価値観を理解することができるため、是非活用してみてください。
年表クイズ
新入社員が生まれた年からの出来事をクイズ形式にして、クイズを回答しながら相互理解を図る方法です。研修の場だけではなく、飲み会の場で景品付きのイベントとして行ってみても楽しめるかもしれません。
お互いのことを知らずに信頼関係は成り立たない
信頼関係を築いていくには、まずは相手のことを知ることが不可欠です。お互いのことを少しづつ知っていく上で、日々のコミュニケーションや面談で信頼関係は醸成されていきます。
まずは、新入社員の方の価値観や背景などを理解するとともに、メンター自身も新入社員の方に知ってもらえるように取り組んでみてください。
メンターの傾聴力を高めるコツ
新入社員の方と信頼関係が築けた上で大切になるのが、「傾聴力」です。傾聴の基本として有名なロジャーズの三原則について解説します。
傾聴の基本 ロジャーズの三原則
ロジャーズの三原則は、
・共感的理解
・無条件の肯定的関心
・自己一致
と言われています。
「共感的理解」とは、相手の話を相手の立場になって共感的に聴くことです。たとえば、新入社員の方が「〇〇という上司が、私にだけ厳しく接してきて、辛いです」と相談してきたとします。
この場合、相談内容に新入社員の方の主観が入っていても批判せず、感じことを同じ立場になって聴き、共感してあげるような聴き方をしましょう。
「無条件の肯定的関心」とは、相手の話を善悪や好き嫌いで判断したり否定したりせず、なぜその考えになったのかを深堀りするように話を聞くことです。
新入社員の方と話していると、考えの甘さや間違っている点について指摘したくなる場合もあるでしょう。ただ、話の途中でメンターの方が指摘を入れたり否定するような言葉を投げてしまうと、安心して話すことができなくなります。
まずは、否定したり指摘したりせずに、なぜそう思ったのかについて肯定的な言葉で深堀りしてみてください。
「自己一致」とは、必要以上に自分を凄く見せようとせずに、わかりにくいときは正直に伝え、聞き直すことです。
話を聞いている中で、よくわからなくなってきたときには、わかったふりをするのではなく、聞き返しても大丈夫です。
自分にも素直になり、相手の話を聴いてあげることが大切です。
「共感的理解 」「無条件の肯定的関心」「自己一致」の3つを意識しながら、話を聞くだけでも相手が感じる印象は大きく変わります。
是非、心がけて新入社員の方の話を傾聴してみてください。
メンターのためのフィードバックのコツ
新入社員の方の話をしっかりと傾聴したあとは、フィードバックを行う必要があります。普段何気なくやっているフィードバックにもポイントがたくさんあります。フィードバックのポイントについて一つひとつ整理してお伝えします。
フィードバックの目的
フィードバックの目的は、メンターの役割によっても異なりますが
・自分の状態を客観的に捉えてもらう
・行動の改善と成長を促す
この2つが大きな目的です。
新入社員にとって、今自分がどういう状態なのかを客観的に把握することは難しいでしょう。メンターからフィードバックを行うことで、自分の状態を理解してもらうことが目的の1つです。
また、自分を客観的に把握した上で、新入社員の方が目標に向けて成長できるようにすることが2つ目の目的です。
フィードバックの3つのポイント
フィードバックの目的を理解したうえで、効果的にフィードバックを進めるためには3つのポイントがあります。
その3つのポイントとは
・事実と感情の区別
・腹落ち感の醸成
・目的と背景の説明
それぞれのポイントにわけて説明していきます。
事実と感情の区別ができていない状態とは、例えばミスをしてしまった新入社員に対して「やる気がないから、ミスをするんだ!もっとやる気出せ!」とか「いつまで学生気分なんだ!仕事ナメてるだろ!」などのフィードバックをしてしまっているケースです。
これらのフィードバックがNGな理由は、「やる気がないように感じた」というメンターの感情をあたかも事実のように伝えているからです。やる気があるかどうかは本人しかわかりません、ミスや失敗の原因が「学生気分」にあるかどうも本人の話を聞いてみないとわかりません。
そのため、フィードバックを行うときには「私からみると、そういう行動はやる気がないように見えてしまうのだけど、最近モチベーションはどう?」というように、感情と事実を分けてフィードバックすることが大切です。
次のポイントは腹落ち感の醸成です。フィードバックを行う際には、相手が腹落ちして納得できるような伝え方をしましょう。
たとえば「そんなに文句があるんだったら、会社の制度を使って申請書を書けばいい」という理詰めのフィードバックを行う先輩上や司がいたとします。
このフィードバックを受けた新入社員は、言われたことについて頭では理解できるかもしれませんが、納得はしないでしょう。新入社員の方が納得して次の行動に移れるようなフィードバックをできるように意識してみることが大切です。
最後のポイントが目的と背景の説明です。
行動の改善を促す際には、目的と背景を含めて伝えるようにしましょう。腹落ち感の醸成ともつながりますが、ただ「ここがダメだから、次からこうやれ!」と伝えても本人の納得感がないため、行動の改善は難しいでしょう。
行動の改善を伝える際には、
・なぜ、その方法の方がいいのか
・なぜ、その制度が会社に必要なのか
をメンターなりの考え方で構いませんので、背景とセットでフィードバックしましょう。
また、最近では、社会情勢の影響で働き方が大きく転換しており、今まで推奨されていたものがNGになったり逆にこれまで禁止されていたものが許可されたりしています。
メンターの役割として、こうした変化する働き方を新入社員に納得してもらうような場合には、新入社員の方が納得できるように目的と背景も一緒に伝えてみてください。
はじめから完璧なメンターはいない!メンター自身も成長していきましょう
初めてメンターになった人が知っておきたいメンターの役割と傾聴力・フィードバック力のまとめ
以上、メンターの役割や傾聴やフィードバックについて解説してきましたが、傾聴やフィードバックを初めからうまく出来る方はいません。つい自分の意見を挟んでしまったり、相手の納得が得られないようなフィードバックをしてしまうこともあるでしょう。
そのため、メンターの方自身も新入社員の方との関わりの中で、成長していくことが必要です。
PDCAサイクルを回しながらメンター自身の方が成長し、そして新入社員の方が活き活き働けるような職場になるように取り組んで行ってみてください。
カイラボでは、企業のご状況に応じて、メンター研修の企画提案を行っています。研修はすべてお客様向けにカスタマイズしてご提供しておりますので、ご興味のある方は下記参考資料をご覧いただくか、当社問い合わせフォームよりご連絡ください。