自律型人材って何?「自律」を分解して考えてみる

編集部

今、会社からの指示だけによらず自主的に仕事を生み出したり、発展させられる「自律型人材」の需要が高まっています。

自律的な社員を目指す、あるいは育成するのは難しいように感じられるかもしれません。

「自律」のためには、まず個人・会社ともに自分の行動規範や価値基準を明確にすることが大切です。

この記事では、自律について具体的に考えるとともに、自律型人材を目指すためにはどうすればよいかを考察します。

多くの企業が期待する「社員の自律」

今、多くの企業では自律型の人材を求めています。

リクルートマネジメントソリューションズが実施したアンケート結果によると、ほとんどの人が会社から自律を期待されていると感じているようです。

  • 一般社員の80.7%
  • 管理職の94.3%

が自律を期待されていると回答

出典:リクリートマネジメントソリューションズ「自律的に働くことに関する実態調査」2020

(この記事の内容は、次の動画でも詳しく解説しています。)

自律とは?

では、自律とは一体何なのでしょうか。

辞書によれば、「自律」という言葉の意味は次のようになります。

「自律」とは、自分が設けた規律や規範に自分を従わせること、他者に管理されるのではなく自分自身で自分を管理すること、を意味する表現である。「他律」の対義語。「自立」と混同されやすい。

「自らを律する」という意味の語。「律する」は「規範を定めて管理する」ことを意味する語である。

要するに「自律」とは、他からの制約を受けること無く、自分で決めた規範に従って自分の行いをコントロールすることである。

出典:weblio辞書 実用日本語表現辞典

つまり自律とは、他者から何かを言われたり強制されたから行動するのではなく、自分の価値観や判断を基にして自らの行動を制御することです。

会社では今、社員に対してこのような「自律」を求めています。

5段階の自律

自律は、5つの段階・レベルに分けられるという考え方があります。

株式会社エスノグラファー代表・神谷俊氏の著書「遊ばせる技術 チームの成果をワンランク上げる仕組み」によれば、自律は次の表のような5段階に分けられるといいます。

上の2段階はセルフリーダーシップ、下の3段階はセルフマネジメントの状態であり、最も理想的なのはレベル5「価値体現」だといわれます。

もっとも自律レベルが低いレベル1「規則意識」の状態は、給料をもらっている・あるいは罰を受けるから、仕方なく仕事を行っているという状態です。

レベル2「責任意識」では、仕事への責任感やプライドから仕事を行います。周囲から指摘されると嫌だから実行する、という状態です。

セルフマネジメントの一番上位であるレベル3「価値理解」になると、自分にとっての仕事の価値や役割、重要性を理解して行動できます。

さらにセルフリーダーシップに入ったレベル4「価値実感」になれば、仕事を進める重要性を感じられ、自分から仕事に興味をもって進められます。

最終的にレベル5「価値体現」になれば、自分自身で仕事の価値を作り出していくことに楽しさや面白さを感じて、主体的に仕事を進められる状態になります。そうすれば、例え指示されていなくてもどんどん仕事への発想が生まれて、ますます主体性が高まるのです。

レベル5まで到達するのが理想ですが、企業の考え方によっては社員の自律にレベル5まで求めないかもしれません。どこまで自律レベルを求めるかは、企業によって考え方が大きく異なります。

仕事の「働きがい」という観点からみると、レベル4・5であるセルフリーダーシップの段階まで到達するほうがより大きくなるでしょう。そのためカイラボでは、社員の自律にはレベル4〜5に達するのが望ましいと考えています。

自律のカギは組織と個人双方の「仕事の意味」

それでは、自律レベルを高めるにはどうすればよいのでしょうか。

自律へのカギとして、会社が求める成果や個人の求める成果が重なっていることが大切です。

会社の規範と個人の規範が重なっていれば、自分の規範に従って行動することが会社の求めていることにもつながっていきます。

そうすると、まずは会社の求める成果・価値と個人の求める成果・価値の重なりの中で仕事をするのが重要です。

これらは完全に重なることはありませんし、また重なる必要もありません。しかし、重なっている部分の範囲内でしっかりと仕事をする、成果を出していくのが大切です。

そのためには、会社の求める成果・価値と自分の求める成果・価値それぞれが、具体的に何なのかを明確にすることが必要になります。

自律のための最初の一歩

個人の自律に向けた最初の一歩は、自分なりの行動規範や価値基準を言葉にすることです。

自分なりの行動規範や価値基準を明確に言語化するのは、自律型人材として重要な要素です。

ただ、普段から自律的に仕事している人でも、はっきりと周囲に対して言語化できていない人は多いでしょう。

そういう人も実は、普段口に出していないだけで自分の中で言語化はしているなど、自分の中での行動規範や価値基準の落とし込みが必ずあります。

まず、個人の行動規範や価値基準がなければ、自律的にはなり得ません。

自律的な社員育成のために必要なこと

一方で、会社側では自律的な社員育成のために何をすべきでしょうか。

それには、会社側の行動規範や価値基準を言葉にすることが必要です。

仮に、個人では言語化できているけれども会社側で言語化ができていない場合、個人では自分の行動規範に従って自律的に行動する一方で、会社から見るとそれがただの自分勝手な行動に映るかもしれません。

そういったことを避けるために、個人は個人で行動規範や価値基準を作る、会社側は会社側で行動規範や価値基準を明確に言語化することが大切になります。

自律とは、お互いの行動規範・価値基準が重なっている中で、それぞれの価値を発揮していくことだといえます。

行動規範や価値基準で有名なのは、ディズニーの「The Five Keys〜5つの鍵(SCISE)」などです。

会社側でこういった基準を作ることは、社員を自律化するのに重要です。

まとめ

職位に関わらず、今は多くの人が会社から「自律」を求められています。

自律はレベルを5段階に分ける考え方もあり、一言で自律といってもその種類は様々です。

自律型人材を育てるためには、個人・組織ともにまずは自らの行動規範や価値基準を言語化することから始めていきましょう。