早期離職や転職が多くの人事や経営者が抱える企業課題になっていますが、みなさんの企業は具体的な離職対策ができていますか?離職対策に非常に重要な効果をもたらすツールとしてエンプロイージャーニーマップは最近高い注目を浴びています。
エンプロイージャーニーという言葉を聞くのが初めての方も、他のネット記事や解説を読んでも具体的なイメージがわからなかったという方に向けて、今回はエンプロイージャーニーについて解説します。
この記事の内容は動画解説でより詳しくご覧いただけます。
本記事の要約
エンプロイージャーニーとは?
エンプロイージャーニーとは、社員が会社を知ってから退職するまでの一連の出来事や感情の変化を可視化したものです。
「社員=エンプロイー」の会社での一連の出来事を「旅=ジャーニー」に例え、エンプロイージャーニーと呼ばれます。
会社での出来事を昇給・昇進等の客観的事実だけでなく、その時の感情面も併せて記載するのが特徴です。
似た言葉として「カスタマージャーニー」という言葉があります。
「カスタマー=消費者、お客様」が、どういう体験(=旅)をしているかを感情面も含めて捉えていくものが、マーケティングの分野に活かされています。
マーケティング分野で活用されているカスタマージャーニーの考え方を社員に置き換えて考えているのがエンプロイージャーニーマップです。
エンプロイージャーニーマップの活用方法
エンプロイージャーニーマップの用途は多岐にわたりますが、具体的には、採用の改善や社員のエンゲージメント向上などに活用できます。
カイラボでは離職対策の一環として、エンプロイージャーニーマップワークショップを開催しています。ワークショップの開催は、社員が辞める理由を可視化したり、共有することに非常に有効です。
では、社員が辞める理由とは何なのか。皆さんそれぞれ思っていることがあると思います。企業によっては、若手社員、中堅社員、管理職、人事、経営者それぞれで社員が辞める理由についての認識が違うケースはよくあります。認識の違いは当たり前であり、対策のための共通認識を持つことを優先的に行っていきましょう。
エンプロイージャーニーマップの作り方
エンプロイージャーニーの書き方は様々な方法がありますが、ここではカイラボが企業向けに実施しているワークショップでの方法をご紹介します。なお、このワークショップの目的は早期離職の対策立案ですが、いきなり対策を考えるのではなく現状把握のためにエンプロイージャーニーマップを作成しています。
【エンプロイージャーニーマップ・ワークショップでの手順】
1. ペルソナ設定
2. キャリアイベントの洗い出し
3. 感情面や思考面のイメージと記入
4. エンゲージメントスコア記入とグラフ化
5. きっかけと決め手の推測・書き出し
6. 離職対策の立案
※上記1~6でおおむね3時間の実施時間です。
カイラボで使用しているエンプロイージャーニーマップの例
エンプロイージャーニーマップ作成のメリット
エンプロイージャーニーマップ作成のメリットは、会社の認知から退職までの流れを可視化できる点です。ポイントは、「入社」時から実施するのではなく、入社以前の「認知」から実施することです。
入社前に「この会社にすごく入りたいです!」と思って入社する社員は一部の有名企業を除けば多くないはずです。けれども、新人に接する管理職や経営陣は「うちの会社に入りたくて来たんだろ?」というスタンスで接してしまったらコミュニケーションは上手くいきません。
これらの会社や仕事に対する認識のギャップを確認する意味も含め、認知から退職までの流れを可視化することが重要です。
最初に会社を認知する場面から現状を整理することで、効果的な離職対策が可能です。
また、ジャーニーマップ作成の過程で議論が深まり、社員の退職理由について共通認識を持つことができる点も大きな特徴です。離職対策への共通認識を持つことは、対策検討をする際にも非常に有効です。離職理由の共通認識が合っていれば対策の大まかな方向性について組織内でブレることなく共有できます。
エンプロイージャーニーマップ作成は誰が行うべきか?
マップ作成には、できる限り様々な立場の人が参加することを推奨しています。経営陣、管理職、人事、ベテラン社員、若手社員など様々な立場の方々を混合して3~5名程度のグループをつくります。グループごとにペルソナ設定から行えば、一度で複数のエンプロイージャーニーマップをつくることも可能です。
まとめ
エンプロイージャーニーマップは社員の離職対策にも有効で、短時間で離職原因や対策の方向性について、社内の認識を統一できます。
共通認識を持つことは、経営陣や現場社員を離職対策に巻き込みやすくなること、話が振り出しに戻るのを防ぐことができるなど、様々なメリットがあります。
そして、エンプロイージャーニーマップは一度作成して終わりではなく何度も繰り返し作成することも重要です。1年に1回、2年に1回等を繰り返すことで離職原因の解像度が上がり、離職対策の実現可能性が高まります。