9月、10月は新入社員の入社半年のフォローアップ研修とともに、新入社員を受け入れる部署の研修や、OJT担当者向けの研修も増える時期です。

新入社員の教育を担当する方は、育成担当者、OJT担当者、ブラザー・シスター、メンター、チューターなど様々な呼ばれ方の役割の方がかかわっていますが、呼び方も役割も会社によってバラバラです。場合によっては同じ会社でも部署ごとに役割の解釈が大きく異なっていたり、担当者によって異なっていたりということも珍しくはありません。

でも、本当に人材育成に力をいれるなら、役割が解釈によって大幅にずれてしまう事態はやはり避けるべきです。

 

「その都度仕事を教える」だけでは育成担当者失格

先日のとある企業での研修では、新入社員の育成担当者を集め、人事が用意した育成計画書を作成してもらいました。育成計画書には育成目標や指導項目、具体的指導方法などを記載します。

時間をとって各自に書いてもらうと、ほとんど手が動かない40代くらいの男性の方がいました。「うちの仕事がお客様によって個別対応だから、その都度教える以外に指導方法なんてない。目標も具体的案数値設定などできない。」というのです。

その会社の特性上、業務がお客様の個別対応になることは明らかでした。とはいえ、発生頻度の高い業務と低い業務、個別対応の幅が広い業務と狭い(比較的汎用化できる)業務など、分類はできるはずです。また、目標設定についても、「お客様からの依頼を受けたときに、自分一人で対応できるかどうかを判断できるようになる」という目標設定であれば、具体的な数値設定でなくても、あとで達成できたかどうかを判断することはできます。

先ほどの「都度教えるしかない」と言っていた方も、そのことをお伝えすると、再び育成計画書に向き合い、指導項目を埋め始め、それから数十分すると、最初とは見違えるほどの内容になっていました。

 

育成担当者に必要なのは「業務の棚卸」

発生した都度で仕事を教えざるを得ないことも現実には起こると思いますが、ほとんどの仕事では、ある程度仕事を分類して頻度や難易度で分けることは可能です。

育成担当者の研修というと、コミュニケーション能力やほめ方、しかり方という内容を依頼されることが多いのですが、計画的に育成をするのであれば「業務の棚卸」をすることも重要だと思います。当然、しかり方やほめ方も重要であることは確かなのですが、より早く業務遂行能力を高めるのであれば、業務を棚卸したうえで難易度の低く頻度の高い仕事から優先的に新入社員に任せていき、徐々に難易度を高める、頻度の低い仕事も任せるなどしていくことが重要です。