ハーズバーグの二要因理論から考える“社員満足度の高い会社”をつくりたい会社が陥る罠

代表取締役 井上洋市朗

この1、2年は全国で経営者の方向けに講演をさせていただく機会を多くいただいています。地方自治体や業界団体などにお声掛けいただくことも増えました。経営者の方々をお話しすると「社員満足度の高い会社にしたい」「社員にとっていい会社にしたい」という思いを強く感じます。

一方で、思いを実現するために具体的な対策をとれていないケースも多いのが現実です。   今回は有名なハーズバーグの二要因理論から「社員満足度の高い会社にしたい」と思っている会社の施策が空回りしてしまう理由を考えてみます。

ハーズバーグの二要因理論に関してはこちらの記事も参考にしてください。

・ハーズバーグの二要因理論から考える4つの企業タイプ別、離職率の改善対策

・まともな人からなぜ辞める?企業のタイプ別に考える傾向と対策

ハーズバーグの二要因理論

二要因理論とはフレデリック・ハーズバーグが提唱した職務の満足と不満足に関する理論です。満足を生む要因と不満足を要因はそれぞれ違うものであるとしているのが大きな特徴です。

満足を生む要因は仕事に関するものです。例えば達成感や承認、仕事そのもの(のやりがい)などが該当します。不満足は仕事環境に関するもので、給与や労働条件などです。ハーズバーグは満足を生む要因を動機づけ要因、不満足を生む要因を衛生要因と名付けました。

動機付け要因が満たされなくても不満にはならないけれど、満たされれば満足につながります。

一方で衛生要因は不足していると不満に感じるけれど、一定程度満たされれば、それ以上はどれだけ充実しても満足にはつながりません。一定以上の年収になると年収と幸福度との間に相関がなくなるという話しからも納得感があるのではないでしょうか。

(二要因理論の概念図)

二要因理論でわける4つの企業タイプ

人事の担当者の方に二要因理論のお話をすると、意外と知らないことが多いです。感覚的にですが、マズローの欲求段階説は7割くらいの方が知っていますが、二要因理論を知っているのは3割くらいです。

私は、二要因理論の話しをするとき、動機づけ要因と衛生要因をそれぞれ縦軸、横軸にとり企業の状態を4分類してお伝えします。4つの分類は以下の通りです。

タイプ①:動機づけ要因も衛生要因も高い「ホワイト企業」

タイプ②:動機づけ要因が高く、衛生要因が低い「やりがい搾取企業」

タイプ③:動機づけ要因が低く、衛生要因が高い「ぬるま湯企業」

タイプ④:動機づけ要因も衛生要因も低い「ブラック企業」

(二要因理論から考える企業の4タイプ)

たとえば、給料は安くて労働時間も長いしパワハラもある。けれど仕事自体は刺激的でやりがいを感じる(そういう社員だけが生き残る)会社は「やりがい搾取企業」です。一方で、給与はそこそこ、労働環境もそれほど悪くはないけど仕事を通じた達成感や承認を得られることはない会社は「ぬるま湯企業」です。みなさんの周りにはどちらかのタイプの企業ありませんか?

過去の成功体験が足かせになってしまうことも

これは私の経験則ですが、不思議なことに「やりがい搾取企業」ほど、さらに動機づけ要因を強化して社員満足度を高めようとしますし、「ぬるま湯企業」ほど、さらに衛生要因を強化しようとする傾向があります。

残念ながら「やりがい搾取企業」がさらに動機づけ要因を強化しても「ホワイト企業」の領域には到達しません。同じように「ぬるま湯企業」がさらに衛生要因を強化しても「ホワイト企業」にはなれないのです。

おそらく、過去に動機づけ要因または衛生要因を強化して良い結果を招いた成功体験がそうさせるのだと思います。ただ、先ほどの4分類の図を見ていただければわかる通り、動機づけ要因が高い企業は衛生要因を強化すべきですし、衛生要因が高い企業は動機づけ要因を強化すべきです。

自社の満足度を高めるために現状を正しく把握して対策を打つ

二要因理論が必ずしも正しいとは限りませんが、企業の現状を把握するヒントにはなると思います。満足度の高い会社、良い会社、人が集まる会社など目指す会社像に違いはあるかもしれませんが、いずれにせよ、なんらかの切り口から現状を把握し、目指す方向性を明らかにしていくという手順が重要です。今よりいい会社にしたいけど何から手を付けていいかわからないという方は、まずは上記の4象限のうち自社はどこに該当するのか考えてみてください。やり方としては、まずは自分で考えて、そのあとに他の社員にも(できれば匿名で)どの位置にあると思うかシールなどを張ってもらうと状況が可視化できます。

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