早期離職を防ぐ解決策を3つのステップでご紹介

編集部

 

早期離職対策を2012年からおこなっている私たちカイラボのもとへは、若手社員の早期離職に悩んでいる企業の方からのご相談を数多くいただきます。最近では、早期離職対策に効果があるとうたう様々なツールも登場しています。

では、早期離職への対策はどうすればいいのか、今回は3つのステップに分けてご説明します。

最新の早期離職の現状

早期離職の対策についてお伝えする前に、まずは早期離職に関する情報を整理しておきましょう。

カイラボでは、入社から3年以内の離職を「早期離職」と定義しています。

早期離職について「七五三現象」という表現のをご存知でしょうか。

早期離職率は中卒で7割、高卒で5割、大卒で3割であったことから生まれた言葉です。中卒で就職する人の割合は減少傾向にあるので、ここでは高卒・大卒で就職する人に焦点を当てます。

大卒の早期離職率は約30%前後と、この30年間ほぼ横ばいです。リーマンショックの直後には30%を切り、2000年代前半よりも早期離職率が低かった時期もあります。

最新のデータでは、現在の早期離職率は32.0%(2019年秋発表)。これは1990年代後半から2000年代前半と同様か、それよりも低い数字です。高卒の方の場合は、むしろ早期離職率が下がる傾向にあります。約50%の時代もありましたが、現在は約40%まで減少しています。

大卒、高卒それぞれの早期離職率の推移は厚生労働省のWebサイトでもご覧いただけます。下記は厚生労働省のWebサイトにも掲載されているグラフです。

大卒新卒者の3年以内離職率(厚生労働省のWebサイトより)
高卒新卒者の3年以内離職率(厚生労働省のWebサイトより)

つまり、最近の人はすぐに辞めてしまうというわけではありません。なんとなく「最近の人は辞めてしまうんだよね」と考えるのではなく、事実をしっかりとおさえた上で、早期離職の対策を考えていくことが大切です。

その上で、ステップを踏んで早期離職について考えていきます。

ステップ1 自社の早期離職の現状把握

早期離職対策を考える際、最初のステップとして自社の早期離職の現状を把握することが非常に大切です。まずは、早期離職の現状確認において、大切な4つのポイントをご紹介します。

1  自社と同業界の早期離職率を比較する

まずは自社の早期離職率は何%なのか確認します。そのうえで、厚生労働省が発表している業界別の平均値、従業員数別の平均値があるので、それらの数値と比較してみましょう。

大卒の場合、早期離職率は30%程度と言われていますが、業界によって大きく異なります。例えば飲食業界などは約50%と高く、反対に、電気・ガス・水道などのインフラ業界は約10%前後と低い傾向があります。

このように業界による幅が広いため、自社の早期離職率の把握とあわせて、業界平均値を参考にします。業界平均より低いから良いというわけではありませんが、業界の水準を知ることで自社の水準を知ることができます

2 早期離職者へ離職理由をヒアリングする

現状把握のポイント2つ目は、離職する社員へのヒアリングです。

離職者に直接聞くのが難しい場合、社内で離職者と仲の良い人を経由し、非公式にヒアリングをしてみる方法もあります。また辞めたいという意思を聞いた際に、外部の機関を通じてヒアリングする手段もあります。

この時大切なのは、表面的な理由を聞いて終わりにするのではなく、いつ頃から考えていたのか、決め手になった出来事はあったのかなど、丁寧に聞いて行きましょう。引き留めだと思われると本音を話してくれません。直属の上司ではなくて人事や別部門の上司が行うのも場合によっては有効です。

私たちカイラボでは「きっかけと決め手は違う」という話しをしています。早期離職率の理由と言っても「きっかけの理由」と「決め手の理由」は違うことも多いのです。単純に「理由は?」と聞くのではなく、時系列に沿って聞いていくなどすると良いでしょう。

3 入社何年目の早期離職が多いかを把握する

ポイントの3つ目は、入社何年目の社員の早期離職が多いかを把握することです。

入社一年目なのか、入社満三年で辞める人が多いのか、もしくは(早期離職の枠からは外れますが)入社4〜5年目ぐらいの社員の離職が多いという会社もあります。入社何年目での離職が多いのか、その傾向によって対策が変わる可能性もあるため、印象だけで決めつけるのではなく、それぞれの年次の離職率をしっかりと数値で把握しておくことが大切です。

4 どんなタイプの社員の早期離職が多いかを把握する

現状把握のポイントの最後は、離職している社員のタイプ把握です。

入社時の面接や試験の評価、社内での印象、入社後の活躍度合い、上司や周囲からの評価など、多角的に検証します。具体的な数字実績がある営業職などでは、営業成績や目標達成率と離職者のタイプごとに離職率との関連性を探ります。

関係性を分析する中で、離職者のタイプの傾向について仮説を立てていきます。

「このタイプの人は離職する傾向が高い」ということがわかることもあれば、面接時の評価と早期離職の傾向には何の関係性も無いことがわかることもあります。実は採用時の評価と離職率が一切関係ないとわかるケースもあります。

どのような結論が導かれるかわかりませんが、まずはちゃんと現状を知ることが大切です。

ステップ2 早期離職の対策を考え実行する

ステップ1では自社の早期離職の現状について把握しました。次は、その改善策を考えていきます。改善策を考える時の参考として、ここでは3つの対策案を紹介します。

対策1:リアリティショックを減らすための採用の見直し

まずは、採用方法の見直しです。

採用方法の見直しというと、辞めない人物を採用しようとする対策をよく聞きます。カイラボでの経験上、辞めない人物の採用を実現することは簡単ではありません。離職を決定する要素は、社員だけではなく、会社側が持っている可能性もあるからです。

つまり、部署が違えば活躍する可能性があった人、他社では力を発揮できた人が離職してしまっている可能性があるのです。

採用の時点ではそこまで見極めることはできません。

会社としてできることは、リアリティショックを少なくすることです。そのためには、入社前に、会社としての正直な情報や状況をしっかりと話しておくことが大切です。内定者になった段階で、リアルな話ができる現役社員との座談会を設けることも有効です。

入社後に受けるショックやギャップを減らしてあげるための採用の見直しが大切です。

対策2:管理職やOJT担当者への教育

早期離職対策の2つ目は管理職やOJT担当者への教育です。

管理職やOJTを担当する人は、教育に慣れている人ばかりではありません。その結果、「とりあえず付いて来い」「とりあえず見ておけば良い」といった経験と勘だけにもとづいら教育しかできずに、早期離職に繋がってしまう例も多くあります。

早期離職者の方に「入社してからOJTの期間はありましたか?」と質問すると、

「担当のような人はいたけど、実際はほぼ何もなかった」
「あれがOJTというのかよくわかりませんが…」

といった回答がかえってくることも多くあります。指導されている本人たちもOJTを受けていたのかどうかわからない状態なのです。

OJT担当者自身が(自分の)役割と方法が不明瞭だと感じている限りは、OJTを受ける社員もOJTを受けているという感覚が持てません。その結果、教育の効果は薄れ、成長を実感する場面が少なくなります。

管理職とOJT担当者の方に対して、会社としての人材育成の方向性と具体的な方法についての教育を施すことが大切です。

対策3 組織全体で人材育成の体制を構築する

早期離職の対策を考える際、組織全体で人材育成の体制をしっかりと構築することも大切です。

管理職やOJT担当者の方と同様に、新入社員に関わる職場の方全員が、きちんと対象者にフィードバックをしてあげましょう。

具体的な例として、カイラボが推奨しているフィードバック型の日報を紹介します。

職場全員で人材育成を行うフィードバック型日報

この記事を読んでいるみなさんの職場でも、日報を活用されていることは多いと思います。フィードバック型の日報は、業務連絡や業務報告ではありません。本人の気付き、学び、そして次にどう活かすを考え、本人の成長を支援するための日報です。

この日報の大きな特徴の一つは、日報に対して必ず職場の誰かが反応することです。この反応が非常に大切です。OJT担当の方がフィードバックを毎日担当すると、負担が重く業務過多となってしまいます。そのため、曜日毎の担当制がお勧めです。

例えば、月曜日は課長、火曜日は係長、水曜日はOJT担当者、木・金はまた別の方と分担し、一言でも良いので必ず返してあげましょう。どうしても忙しくてフィードバックできない時は、「日報ありがとう。ちょっと今は返せないけど来週まとめて返信するね」の一言を伝えるかどうかで大きく異なります。

フィードバックを繰り返すことで、毎日必ず職場の誰かとコミュニケーションが取れます。最初は日報が思うように進まない方でも、コミュニケーションが生まれ、徐々に自己開示に繋がることで、書けるように成長します。自己開示が進むと、コミュニケーションの際の話題が不足しないなど、良い作用があります。

職場全体で人材育成をしていく体制作りの一つとして、フィードバック型の日報をぜひ活用してみてください。

ステップ3 改善を続けながら、社内で協力者を増やしていく

ステップ1と2で、自社の早期離職の現状を知ること、その改善策を考え実行するということをお伝えしてきました。

最後のステップでは、社内に協力者を増やしながら改善を続けていくことが大切です。

早期離職の対策は、数ヶ月で目を見張るような結果が出てくることもあります。ただ、その翌年に異なる性質を持った新入社員が入ってくると、同じ方法が通用しなくなってしまうこともあります。また、ある部署ではうまくいった対策が、他部署では通用しないケースもあります。

何より大切なのは、会社全体で人材育成に対しての共通のマインドを持った人を増やしていくことです。そのためには社内で協力者を増やしていきましょう。

中には、「自分はそんな教育をしてもらっていないから」や「とにかく背中を見せるマネジメントが必要なんだ」といった姿勢の人がいるかもしれません。そういった社員に対しても、粘り強く接しながら、マインドが変わるよう働きかけ、変化を起こしていくことが大切です。

早期離職の対策で、社員の定着率アップと会社の成長の両立を実現する

早期離職対策は大切ですが、なにがなんでも定着率が高いことが良いわけではありません。高い定着率と引き換えに、多くの社員が会社にぶら下がった状態の会社もあります。

今回お伝えした3つのステップ

・早期離職の現状を知る
・早期離職の改善策を考え実行する
・改善を続けながら、社内で協力者を増やしていく

このステップは、社員の定着率アップだけでなく、社員の持続的な成長の手助けにもなります。その結果、社員の高い定着率だけでなく、会社としても成長していく、そういった健全な会社に近付いていきます。

ここでお伝えした3つのステップを意識して、自社の現状に合わせた対策を実施してみてください。