早期離職率が高い企業の行うべき4つの対策

編集部

若手社員が辞める、早期離職率が高いとお悩みの企業の方もいると思います。今回は若手社員がなぜ辞めるのか、そしてどんな対策が必要なのかについて、カイラボがこれまでおこなってきたインタビューなどをもとにお伝えします。

早期離職率が高くなる原因は「存在承認・貢献実感・成長予感」の3つ

私たちカイラボは、これまで数多くの早期離職者インタビューや企業の早期離職防止コンサルティングを行う中で、早期離職が起こる理由は次の3ついずれかの不足によるものと考えています。

・存在承認 (社員にとって安全、かつ安心な職場であるか)

・貢献実感(自分の仕事が顧客、周囲、社会に貢献できているか)

・成長予感(今の会社・職場で自分の未来(成長した姿)が描けること)

早期離職が起きる原因としては、この3つのうち1つか、もしくは複数が重なっています。自社の若手社員が辞めて困っている場合には「存在承認・貢献実感・成長予感」の3つのうちどれが不足して辞めていくのか見立てを立てて、対策をしていくことが大切です。

詳しくはこちらの記事をご覧ください→新入社員が早期離職する3つの理由と5つの対策

早期離職率が高い企業が行うべき4つの対策

それでは、次に「早期離職率が高い企業の行うべき4つの対策」についてお伝えしていきます。

私たちが考える早期離職率が高い企業の行うべき4つの対策をご紹介します。

  1. 賞賛する文化づくり
  2. メンバー一人ひとりのビジョンを大切にする
  3. 組織全体で人材育成する体制をつくる
  4. 若手が憧れる上司・先輩社員の育成

順に解説していきます。

対策1 賞賛する文化づくり

一つ目の対策は「賞賛する文化づくり」です。

 私たちがインタビューした早期離職した方の話の中に、以下のような事例がありました。

 ある大手銀行に入社したAさんは、投資商品を個人のお客様に対して営業するという仕事をしていました。ただ、その会社では営業で受注してきても「まだ目標まで足りていない、とにかく売ってこい」と言われ、全然賞賛されなかったそうです。また、お客様に寄り添うことよりも「売ってくることが正義」という雰囲気もあり、Aさんはそうしたことに違和感を感じ、早期に辞めてしまいます。

 その後、その方は人材系企業に転職したところ企業文化の違いに驚いたそうです。転職先の企業の文化は、

・出来たことに対して、しっかりと褒める

・新人の初受注はみんなでお祝い

という「賞賛する文化」ができており、驚いたとともに「こういう会社で働きたい!」という思いを強く抱いたそうです。今では、Aさんはその人材系企業で非常に活躍されています。

 ノルマを達成することも大切ですが、できたことに対してはしっかりを賞賛してあげることが早期離職の対策として大切であることがAさんの事例からもお分りいただけるかと思います。

 とはいえ、社内の文化をつくるのは大変ですし、時間もかかります。すぐに「賞賛する文化」をつくろうとするのではなく、まずは、人事部の方や管理職の方から

・ちょっとしたことでも褒める

・出来たことに対して賞賛する

を実践してみてください。ただ、これは「お世辞をいう」ということではなく、正しいこと、いいことをした場合にしっかりを認めて賞賛するということです。そうした取り組みを続けていくことで徐々に全体に浸透していき「賞賛する文化」を作られていくと私たちは考えます。

対策2 メンバー一人ひとりのビジョンを大切にする

二つ目は「メンバー一人ひとりのビジョンを大切にする」ことです。

会社のミッションや理念、先輩社員のビジョンに共感して入社を決めた方の中には

・実際に入社してみたら、現場ではミッションや理念の話がまったく出ない

・自分のビジョンを話してくれる先輩が全然いない

などの理由で早期離職をする方が多いとインタビューなどを通じて感じています。特に、ミッションや理念で学生を惹きつけるようなベンチャー系の企業では、こういった事例が多くあるようです。

ミッションや理念が現場で働いている社員が腹落ちしていない、またはメンバー一人ひとりのビジョンを大切にするという雰囲気が会社にないことは、そのまま「存在承認」「貢献実感」の不足に影響し早期離職の原因をつくってしまいます。

たとえば、ミッションや理念の達成を周囲の先輩をみた新入社員は

・ミッションに共感して入社したのに、自分の仕事はミッションに貢献しているとは思えない

という感覚をもってしまうでしょう。この感覚は、貢献実感(自分の仕事が顧客、周囲、社会に貢献できているか)の不足に繋がってしまいます。

対策3 組織全体で人材育成する体制をつくる

 3つ目は「組織全体で人材育成する体制をつくる」ことです。

 私たちが研修を実施する際に企業の方からよく聞く状況としては、

・人事担当者の方と1ヶ月合宿した後、指導は現場に丸投げ

・新入社員を指導するのはOJT担当者だけ

といった教育体制です。こうした「一部の人」しか人材育成に関わらないような体制は、非常にもったいないです。

 なぜなら、新人の人材育成に「組織全体」で関わっていくことで早期離職率の低下に繋がるからです。「組織全体で関わる」というのは、OJT担当者以外の現場の方、一個上二個上の先輩、管理職など会社にいる全員で新人の人材育成をする意識をもつことです。

 全体で関わる意識をもつことで、以下のようなことが起こる可能性があります。

たとえば

・OJT担当者の相性が合わなかったが、他の先輩社員に頼れるから会社を続けられた

・OJT担当者が気がつかないメンタルの不調を、他の社員が気がついた

「一部の人しか人材育成に関わらない」とこのようなことは起きづらいですが、多くの人が関わる意識をもつことで人間関係や業務的な側面などで全体から新人が支えられ、早期離職を防ぐことができます。
 一人の新入社員の育成には、採用コストから教育コスト、また人材育成のための人件費もかかっています。たくさんのコストがかかっている新入社員の早期離職を防ぐためにも、「組織全体で人材育成する体制をつくる」が大切です。

対策4 若手が憧れる上司・先輩社員の育成

4つ目は「若手が憧れる上司・先輩社員の育成」です。

 新入社員が入社して1、2年も経つと「自分の5年、10年先の姿」を考えるようになってきます。

その自分の将来の姿を考えるときに重ね合わせるのが、5年・10年年上の先輩の姿ですが、その際に

・自分は5年後、10年後にこうはなりたくないな

・先輩には全然憧れを感じないな

と思われてしまう先輩がたくさんいると、成長予感(自分の未来(成長した姿)が描けること)の不足で離職してしまう方も少なくありません。インタビューでも成長予感不足による退職経験がある方には数多く出会いました。

 若手社員の早期離職率の改善の対策というと「採用方法や新人教育」「管理職やOJT担当者への教育」をどうするか、などを先に考える企業があります。もちろん、そういったことも大切ですが、新入社員の成長予感という観点から考えると

・5年目10年目の社員の仕事に対する姿勢

・先輩社員の人間としてのあり方

についての再教育や研修も重要です。

カイラボでは、5年目10年目の社員の方へ向けて「キャリアをもう一度見直す」という内容での研修プログラムを提供させていただいており、そうした研修を通じて若手が憧れる上司を育成していくことが大切です。

 また、場合によっては、中途社員で模範になるような社員を採用していくという方法もあるでしょう。

早期離職率を低くすることが目的ではなく、高い定着による良い循環づくりが大切。

 ここまで4つの対策をお伝えしてきましたが、早期離職の問題を解決する方法として「これさえやっておけば、大丈夫」「この対策をしたからあとは大丈夫」という絶対的な方法はありません。なぜなら、早期離職の原因は、会社によってかなり異なりますし、また同じ職場内でも個人によって理由やきっかけに差があるからです。

 では、どのようにして対策を進めていけばよいか、ということについてですが、まずは自社の中で

・早期離職は、会社として解決していくべき問題

・早期離職は、若い人たちだけの問題ではなく、会社側としても変わらないといけない

という共通の認識をもつことが大切です。

この前提を共有した上で4つの対策のうち「自分の会社であればどこから手をつけていくべきか」

を考えていってみてください。また「存在承認・貢献実感・成長予感のうち、何が不足して辞めていくのか」といった自社の現状をしっかりと把握することも重要です。

定着率アップの目的確認と存在承認・貢献実感・成長予感の3つの視点での自社の見直しが大切

 まとめると

  1. 「早期離職は、会社として解決していくべき問題」だという共通認識をもつ
  2.  4つの対策のうち、自分の会社であればどこから手をつけていくべきかを考える
  3. 辞めていく社員が 「存在承認・貢献実感・成長予感」のうち何に不満をもっているのか、自社の現状を把握する

    という順番で自社の対策を進めて行ってください。

    私たちカイラボは、早期離職を改善することは企業だけでなく、働く個人の幸せにも寄与できると考えています。この記事がみなさんの早期離職対策実践の参考となり、企業も個人も幸せになるきかっけとなれば嬉しい限りです。