先日の記事にも書きましたが、私の最近の仕事の一つは研修講師です。特に4月は新入社員研修、そして5月から6月にかけてはOJT担当者に向けた研修などの予定が多く、講師としては稼ぎどきのシーズンです。

「研修で人材育成が可能なのか?lこれは研修の受講者、発注する立場の経営者や人事担当の方なら必ず考えたことのあるテーマだと思います。それは、講師の立場の私も同じです。いつも研修が決まる前までは「この研修で人材が育つのか?」と考えています。“研修が決まる前までは”と言ったのは、研修の実施が決まればそんな迷いを吹っ切り「この研修で何が提供できるのか?」を考え抜くからです。それでも、私は人材育成の基本は研修ではなくて実践だと思っています。

最近では「実践型」をうたった研修は多く、私が担当する研修でも内容のほとんどを実践型のワークとしています。ワーク内容は研修テーマによって様々ですが、敢えて現実世界とは程遠い設定で行うこともあれば、かなり現実に近い状況をつくりだし、ロールプレイングを行う場合もあります。

しかし、それらは「実践型」であって決して本物の「実践ではありません」。やはり、本当に人材育成に効果があるのは実践です。「はじめての課長の教科書」で知られる酒井穣氏は著書「『日本で最も人材を育成する会社』のテキスト」の中で「これからの人材育成の実務は『研修のデザイン』ではなく『経験のデザイン』という方向に向かいます」と述べています。私も同意見で、いかに実践をさせるかが重要です。では、研修が無意味なのでいきなり実践をさせればいいのかというと、そういうわけではありません。最低限の原理原則、実践においては防衛術とでもいえるスキルは身に着けておくべきです。研修もなしに実践をさせるというのは、銃の持ち方も打ち方も教えずに戦争に行けと言っているようなもので、さすがに無謀すぎます。さらに、いきなり実践させることで何も知らない新人が企業の信用を失ってしまう可能性もあります。

ですから、研修の役割は、いざ実践になったときに研修で学んだことを再現できる状態にすることです。しかし、練習でやったことが本番ではできないというのはスポーツなどの例をみるまでもなく、よく起こります。本番であるという緊張感で頭がパニックになって力が出せなくなっているのです。

私は研修中に敢えて受講者にパニック状態に陥ってもらうことがあります。例えば、明らかに本人のキャパシティを超えた課題を課すのです。ちょっと意地悪なやり方ですが、それが本人のためなのです。このように、研修中に修羅場を経験してもらうわけです。この修羅場体験が非常に重要です。そして、外部の人間だからこそ修羅場を提供できるというメリットもあります。内部の人間がやってしまうと本当の修羅場になってしまう可能性もありますからね。。。

これらは特にスキル系の研修で多くつかいますが、内面を見つめる研修でも必要だと思っています。最近ではワークショップ形式でみんなで心を開いてという内容も多いのですが、ワークショップの中にももう少し修羅場を用意することができれば、もっと効果の高い内容になるのではないかと方法を模索しています。

そんな私も、4月末から青山学院大学のワークショップデザイナー育成プログラムに通います。ワークショップと修羅場の融合、できるかな。。。

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