カイラボはこれまで新卒入社後3年以内(一部、5年以内)の20代の200名以上にインタビューを実施してきました。インタビュー内容は早期離職白書にまとめて発表もしています。
今回は「早期離職白書2019年度版」から抜粋した、ネガティブ離職とポジティブ離職のそれぞれの事例をご紹介します。また、カイラボでは早期離職の理由を「きっかけ」と「決め手」に分けて考えています。今回のインタビューでもきっかけと決め手はそれぞれ分けて聞いています。
きっかけと決め手についてはこちらの記事で詳細をご紹介しています。
「なぜ、若手社員は退職する”本当の理由”を伝えないのか?」
採用担当者や経営者の方が本記事を読めば、若手社員の本音に迫れるかもしれません。
本記事の要約
ネガティブ離職とポジティブ離職の違い
私たちカイラボでは、早期離職を2つに分けて考えています。ポジティブ離職とネガティブ離職です。
ネガティブ離職とポジティブ離職の判別は、退職した企業について「総合的にみて満足していたか」という質問に対しての回答です。(回答は「満足」「やや満足」「どちらとも言えない」「やや不満」「不満」の5段階)
退職した企業に対して「不満」「やや不満」と回答した方をネガティブ離職。それ以外の方をポジティブ離職としています。(早期離職白書2019での定義)
ネガティブ離職をした若手社員・事例
事例①希望していた営業職に就けず1年で退職した26歳男性
K.Hさんは大学在学中に居酒屋のキャッチのアルバイトをした経験から、就活ではとにかく営業職を希望していました。
しかし、願いは叶わず大学のキャリアセンター経由で紹介された専門商社への就職します。
業務内容は貿易に関する事務仕事で、輸出入に関する書類作成や場合によっては海外とのメールのやりとりを主にしていました。
以下は実際のインタビューの内容です。
Q.退職を考えたきっかけを教えてください
なによりも営業の仕事ができなくて、入社半年ほどで辞めたいと思い始めていました。江戸時代から続く伝統のある会社である分、保守的で自分の成長スピードが遅く感じていました。
常務からは「俺も営業事務を7~8年経験して営業をしたからうまくいった」と言われました。けれど、そんなに年数がかかるなら自分が考える成長スピードからすると遅すぎます。
Q.退職の決め手を教えてください
退職の決め手は、1年目の秋頃に来年の新入社員が入ってこないとわかったタイミングです。もともと新卒採用を毎年行う会社ではありませんでした。
来年の新卒が入ってこないので、自分が営業に異動して代わりの誰かが営業事務に異動することもありません。つまり、来年も自分の仕事は営業事務です。
これだと自分が描く成長はできないと思ったものの、新卒は3年続けた方が良いという意見もあるので悩みましたが、人生は自分で選ぼうと2月初旬に会社に退職届を出しました。
辞めたことは後悔していませんし、業務や退職の経験があったから今の自分があると思っています。
事例②出勤したら退職届が用意されていて4ヵ月で辞めた23歳男性
T.Mさんは期限付き任用で採用された小学校で、4年生の担任をしていました。
当初は貧困層が多い地域なので大変なことを覚悟していましたが、家庭訪問で子どもたちの家庭環境に衝撃を受け、児童達を何とかしたい気持ちはずっとあったようです。
志のあったT.Mさんは、どのような経緯で退職を考えるようになったのでしょうか?
Q.退職を考えたきっかけを教えてください
校長が何を目指して学校運営をしているのかが見えなくて、ずっとしんどかったです。
職員会議をしても校長は「じゃあ、例年通りやりましょう」が口癖で、新人の自分は例年通りと言われても具体的な業務の進め方がわかりませんでした。
さらに、仕事をしていて孤独感がありました。
職員会議で発言する先生も毎回同じで、会議をしても進捗がなく情報伝達だけがされていました。
発言をしない自分も悪いのですが「新任の先生も何かありますか」と話を振って欲しかったです。
Q.退職の決め手を教えてください
6月の終わり頃、突然、朝に起き上がれなくなった日から3日間学校を休みました。翌週から一週間は出勤しましたが、担任として子供達の前には出ませんでした。
その時に、前から信頼していた副校長とランチをして不満をぶつけたのです。
副校長は僕の不満を受け入れてくれて「私が君の年齢だったら辞めていると思う」と慰めてくれました。
翌週も朝に起きれなくなってしまい、副校長が自宅まで起こしに来てくれました。
副校長に連れられて校長室に行くと、校長が私の退職届を用意してたのです。
私は仕事は辛くても一学期だけでも頑張ろうと思っていたので、退職届を見た瞬間はショックでした。
校長からは「これを書けば辞められるよ」と言われ、衝動的にその場で「辞めます」と言って退職しました。
当時は辞めざるを得ない状況だったので、辞めなきゃよかったと考えにくいです。子供達と保護者の皆さんには申し訳ない気持ちはありますが、辞めたからこそ今があると思っています。
事例③休日や深夜に来る社長からの業務連絡に悩み3ヵ月で退職した26歳女性
K.Yさんは留学や就職支援をする会社で、問い合わせ業務と毎週末に行うイベントのためのSNS告知なども担当していました。
勤務時間は朝11時頃から夜22時過ぎまでと長かったようです。
休日や深夜にも社長から電話で急な対応を依頼されて、K.Yさんが「今、PC持ってないからできません」と伝えると「能力がない」「仕事にコミットできないなら正社員じゃなくて派遣社員の方が良いんじゃない?」と言われました。
社長から仕事の連絡が続いて、K.Yさんは少しずつ体調が悪化し始めます。
Q.退職を考えたきっかけを教えてください
5月中旬頃には少し鬱のような状態になっていて、今後も同じペースで働き続けるのは難しいと思っていました。
社長からは「自分で働くペースを決めて毎日できることをやればいい」と言われましたが、問い合わせ対応の仕事をしている私には、社長のような働き方は無理でした。
Q.退職の決め手を教えてください
気付いたら会社に行けなくなっていました。
朝起きて泣きながら出社の準備をしているような状態で、さすがに今日は行けないと思い、「今日は休みます」と会社に連絡をしました。
その後も仕事を続けていると私を心配した先輩が話を聞いてくれて、社長にもこの働き方はおかしいと伝えてくれたようですが、改善はされないままです。
ただ、入社3ヵ月で辞めるのは申し訳ない気持ちもありました。
最後は誰もいない時間に会社に行ってPCや携帯を返し、社長と先輩に「辞めます」とメールを送って辞めました。転職後に前職の雇用保険の未加入と辞めた月の給料の未払いが発覚して、少額訴訟の手続きを行って払ってもらいました。
辞めたことは後悔していません。
ポジティブ離職をした若手社員・事例
事例④これ以上の自己成長が見込めず1年6ヵ月で退職した24歳男性
Y.Iさんは学生時代にNPOなどに関わっていた経験から、社会課題解決につながるビジネスをしたかったようです。
就職先に入った理由は社員が約100人(当時)と会社規模が小さかったことと、社長が「社会課題の解決」を謳っていたのが入社の決め手でした。
Y.Iさんの業務内容は、新卒求人を紹介する企業への営業担当です。
新規開拓の営業や、企業の要望を聞いて求人にマッチしそうな学生を学生対応の担当者と相談しながら、選考のサポートをしていました。
Q.退職を考えたきっかけを教えてください
入社後の1年間は営業数字をひたすら追ってみようと決めましたが、1年目が終わって目標が120%達成した時に「違うな」と思いました。
なぜなら、人材紹介業界は学生がもうちょっと頑張れば入れそうな会社に行くのを応援するよりも、確実に内定が出る会社に行ってもらった方が営業数字が上がるからです。
学生が入社した会社で上司に暴力振るわれてケガをする事例もありましたが、入社後の事情に自分が関与できないのも不満でした。
社内の人間関係は悪くはありませんでしたが、想いをもって働いている人はいませんでした。社会課題解決とは謳っていても、真面目に考えている社員はほとんどいなかったです。
それと、新卒は優秀な人も多かったですが、中途入社は優秀な人がいなくて憧れる人もいませんでした。
Q.退職の決め手を教えてください
退職の決め手は2つあります。
1つは社長が社会貢献をミッションに掲げているけれど、サービスに落とし込まれているわけではなく、売上ばかりを追っていてポリシーがないと感じたからです。
もう1つは、このまま会社にいても力がつかないと思ったからです。
売上を出しても「本当に自分の力で作った売上なのか?」と疑問がありました。 2年目の中頃から転職活動をして複数社に内定をもらい、会社に退職すると伝えました。
辞めたことは後悔していません。ですが、自分を評価してくれた会社の人やお客さんから離れてしまうのは心残りです。
事例⑤新人賞を受賞したものの半年で退職した25歳女性
A.Yさんがメガネ販売会社に入社した決め手は、勢いのある成長企業であることと、リクルーターの女性も魅力的で面白そうな仕事ができると思ったからです。
メガネ販売会社は定時で帰れて人間関係が良い職場だったので、働きやすかったようです。A.Yさんはショッピングモールの接客コンテストで優勝した後、会社の代表として関東大会に出場して新人賞を受賞しました。
順風満帆に見えるA.Yさんですが、なぜ退職を考えるようになったのでしょうか。
Q.退職を考えたきっかけを教えてください
私の場合は、退職のきっかけと決め手はほとんど同じです。
大学時代から知っている5歳年上の女性と話す機会があって、その女性は接客業ではない土日休みの仕事でバリバリ活躍していてキラキラしていました。
その女性から『WORK SHIFT』という本を紹介されて、会社がいつ潰れるかわからない時代だから、自分にしかできない何かをやらないともったいないと思いました。
「接客」×「英語」が自分のテーマだと通訳の仕事が浮かんで、会社を辞めるなら早めの方が迷惑がかからないと退職を決意しました。
会社に退職を伝える日は「今日、言わないと一生言えない」と思って、手を震わせながら副店長に伝えました。
すごく仲良しの副店長だったので私の退職には驚いていましたが、快く送り出してくれました。
退職しても全く後悔していません。
早期離職の3大要因
カイラボは早期離職者インタビューを行う中で、早期離職が起こる理由は次の3つのいずれかの不足が原因と考えています。
・存在承認
・貢献実感
・成長予感
それぞれの項目について、具体的な内容をご紹介します。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
若手社員が会社を辞めた本当の理由を探るために必要なこと
早期離職白書から、ネガティブ離職とポジティブ離職の事例をご紹介しました。
退職する本当の理由を会社に伝えていない若手社員が多い現状に、驚いた方もいるでしょう。
さらに、退職を後悔していない若手社員も多い傾向にあります。
最新の早期離職の現状を詳しく知りたい方は、カイラボが作成した「早期離職白書2019年版」の有料版をダウンロードしていただくと全てご覧いただけます。
「本心を言わずに若手社員が辞めていく」と、お困りの方の参考になれば嬉しい限りです。
早期離職者インタビュー 解説動画のご案内
カイラボでは早期離職者インタビューの内容を動画でご紹介しています。