若手社員の定着率のカギは中堅社員。若手社員の定着率を上げるコツ

編集部

若手社員の定着率が上がらない時に、皆さんの会社ではどういうような対策を打っているでしょうか?

私たちカイラボでは、2013年から早期離職白書を発行してきました。早期離職白書の中では、「実際に企業に勤めて新卒三年以内でやめた方々へのインタビュー」を行っています。

今回は、早期離職白書をまとめる中で、数百人にインタビューをしてわかった若手社員を定着させるために必要なポイントをお伝えさせて頂きます。

早期離職白書に関しては、ダイジェスト版を以下よりダウンロードが出来ます。是非、ご参考にご覧ください。

早期離職白書ダウンロードページ(https://kailabo.com/corporate-site/document/rishoku)

前提:「最近の人だから辞めるようになった」わけではない。

「最近の若い人はすぐ辞める」というような意見を聞かれた事はありませんか?
また、なんとなくそのように考えている方もいらっしゃるかもしれません。

実は、厚生労働省が出しているデータをみると、過去20年以上、大卒新卒者の三年以内離職率に大きな変化はありません。
また、高卒新卒者の3年以内離職率に関しては、以前よりも低下傾向にあります。

新卒入社の三年以内離職率(私たちカイラボではこれを「早期離職率」と呼んでいます)について、以前は「七五三現象」と呼ばれていました。

  • 中卒7割
  • 高卒5割
  • 大卒3割

が、新卒入社後三年以内に退職することから、それぞれの数字をもじって「七五三」と言われていたのです。

しかし、現在の高卒新卒者の3年以内離職率は40%を下回っています。すでに「七五三」ではないのです。また、大卒新卒者についても、最近の大卒が以前よりも辞めるようになったわけではありません。

今回のテーマは「若手社員の定着」ですが、まず前提として「最近の人だから辞めるわけではない」ことを把握しておいてください。

なお、早期離職率に関するデータについては、以下の記事で詳細にご紹介していますので、ご覧ください。

2019年秋・厚生労働省発表の早期離職率最新データとデータを見る際の5つのポイント(https://kailabo.com/corporate-site/soukirisyoku/9393)

若手社員が定着しない3つの要因

私たちカイラボがこれまで多くの方にインタビューする中で、若手社員が定着しない三つの要因があると考えています。

その3つとは、

  • 存在承認
  • 貢献実感
  • 成長予感

の3つです。まずは、それぞれの内容について、簡単にご紹介します。

1.存在承認

存在承認とは

  • 「あなたがこの会社に居ていいんだよ」
  • 「あなたの存在価値をしっかり認めていますよ」
  • 「あなたをこの組織、チームの仲間として認めていますよ」

という自分の存在や能力を周りから承認をされている実感です。

例えば、

  • パワハラやセクハラがある。
  • 会議でミスを指摘される、プレッシャーを掛けられる。
  • 場合によっては、「お前なんかやめちまえ」といった事を言われる

など、こういう状態は存在承認が感じにくい状態となります。

2.貢献実感

貢献実感とは、自分のやっている仕事が、

  • 会社への貢献
  • 会社の仲間への貢献
  • お客さまへの貢献
  • 人によっては社会に対しての貢献

これらの貢献が出来ているかどうかという実感です。
貢献実感のやや厄介な部分は、人によって感じ方が異なることです。

例えば、自分の会社で扱っている食品を扱っている場合を考えてみましょう。

「この食品を売ることで自分はお客さんに貢献できているだろうか?」
「社会に対して貢献できてるだろか?」

この問いに対するこたえは、人によって考え方が変わってきます。
そのため、上司は貢献できていると思っていても、新入社員は貢献できていると思っていない。ということも起こり得るのです。
このような場合には、上司にどれだけ貢献実感があったとしても、新入社員からすると貢献実感が低い状態になります。

なお、貢献実感については、こちらの記事でより詳細にご紹介しています。

早期離職の三大要因の一つ「貢献実感」とは何か?

3.成長予感

成長予感とは、

  • 自分自身が今後成長していけるか?
  • この会社にいることでなりたい自分になれるか?

といった予感を会社にいて感じられるかどうかを指しています。
そのため、

  • この仕事を続けていくと、自分のなりたい将来に慣れるだろうか?
  • 30代、40代の会社の先輩を見た時に、先輩のようになりたいと思えるか?

というのが非常に重要なポイントになります。

私たちが行っている早期離職者へのインタビューでも、成長予感不足で辞める方は少なくありません。
中には、福利厚生や給料などの待遇も良い大手に入社した方が成長予感不足で辞めているケースもあります。

成長予感不足で辞めた方々が共通して口にするのが、「30代40代の先輩を見た時にあまり魅力的に感じない。」「自分が30歳、40歳の時になりたい姿ではなかった」という言葉です。

憧れる上司や先輩がいない職場は成長予感不足といえるでしょう。

成長予感については、こちらの記事でさらに詳細をご紹介しています。

若手社員の離職を防ぐカギは「成長予感」

若手社員の定着率向上のために大切なこと

ここまで、若手社員が辞める三大要因をご紹介してきました。理由がわかったところで、では企業はどんな対策をとればよいのでしょうか?

若手社員の定着率向上のために一番大切な事は、上司や先輩社員が変わる事です。

先ほど、若手社員が定着しない三つの要因の一つとして「成長予感」をご紹介しました。若手社員の成長予感を一番大きく左右するのは上司と先輩社員の姿です。なぜなら、上司や先輩社員の働く姿は、新入社員とって10年後、20年後、30年後の自分の姿だからです。

では、もし上司がこんな人たちだったら、若手社員にとっての成長予感は高まるでしょうか?

  • 上司が仕事しないで偉そうにしてる。
  • 仕事はできるが、毎日のようにパワハラ発言をして周囲から嫌われている。

おそらく、多くの場合、このような上司のもとでは成長予感は高まりません。「あんな風にはなりたくない」と思われるか、せいぜい「仕事はできるけど、人としては尊敬できない。」と言われてしまうでしょう。

そして、職場で成長予感は感じられなければ、「この会社にいてもなりたい自分には近づけないので、他のキャリアを選択します。」という考えにいたるかもしれません

 

若手社員の成長予感を高めるためには、今いる上司や先輩社員が変わるしかないのです。

具体的には、

  • 上司や先輩社員が魅力的になる。
  • 上司や先輩社員本人たちの存在承認も高く、周りに対しても存在承認をしている。
  • 上司や先輩たちが貢献実感を持って働いている。
  • 上司や先輩たちも成長し続け、成長予感を持って「将来こういうことをやりたい」ということを持って働いている。

こんな状態を目指して、少しずつできることから変えていきましょう。

定着率の高い会社で上司や先輩社員に必要な3つのチカラ

では、魅力的な上司や先輩になるためには何が必要なのでしょうか?

これまで数百人の早期離職者へのインタビューを重ね、数多くの企業の早期離職対策の状況を見てきた私たちカイラボでは、次の三つの力を高めることが、若手社員の定着にもつながる魅力的な上司・先輩に必要な力です。

  1. ビジョンを発信するチカラ
  2. 業務の遂行力
  3. 巻き込ま”れる”チカラ

それぞれの内容についてご紹介します。

1.ビジョンを発信するチカラ

ビジョンを発信するチカラとは、職場で働く上司や先輩社員自身が自分のありたい姿や達成したい会社、職場の姿を持ち、その内容を周囲に対して発信しているかどうかです。

たとえば、

  • 「自分自身がこのようになりたい」という目標
  • 「組織をこのようにしていきたい。」「組織としてこのようになりたい。」というありたい姿

などが挙げられます。

ここでいう目標は売上目標ではありません。誰かから与えられた達成目標やあるべき姿ではなく、本人が思っているありたい姿です。
成長予感不足で若手社員が辞める会社では、上司や先輩社員たちのビジョンを発信するチカラが不足しています。

とある企業の管理職研修で、参加者のみなさまにこんなことを聞きます。

「皆さんが仕事を通じて実現したいことは何ですか?」
「あなたの組織のビジョンはなんですか?」

この質問にこたえられる管理職の方は決して多くは有りません。中には、こんなことを言う管理職の方もいらっしゃいます。

「ビジョンっていうのは組織のトップが決めるもの。社長が決めるものであって、部長の自分が決める必要はない」

こんな発言をする上司についていきたいと思う人がどれだけいるでしょうか?
若い人たちはこういう管理職の姿勢を敏感に感じ取ります。ですから、管理職自身がが当事者意識を持ち「自分自身のビジョン」や「組織のビジョン」を発信していけるようになることが非常に大切です。

2.業務の遂行力

業務の遂行力とは、簡単に言い換えれば「仕事が出来る」ということです。

かつてはトップ営業マンだった方の中にも、商材や時代の変化によって今では窓際族になってしまっている人もいます。そういう方々にも肩書きだけの役職がついているのが日本企業の特徴です。こういった方々は肩書きはあっても業務の遂行力は高くありません。

このような状況を若手社員の視点から見ると、

  • 昔はすごかったようだけど、今は全然使えない。
  • 「何でこの人が会社に残っているのだろう?」と会社に対する不信感
  • 「この人の様になりたくない」と成長予感が下がってしまう

という意識が生まれることもあるのです。そのため、やはり管理職には業務遂行が高い状態を維持することが求められるのです。
業務遂行力とは必ずしも高い成績を上げるということだけではありません。今通用している力は今後も通用するとは限りません。業務を遂行するために、時には「わからないことを若手に聞く」「わからないことをそのままにしない」なども必要となるでしょう。

時代が変化していく中でも、常に一定のアウトプットが出せるチカラ。そして、それを維持していくチカラ。このようなチカラを含めた、「業務遂行力」が大切なのです。

3.巻き込まれるチカラ

上司・先輩社員に必要な3つのチカラの最後は、巻き込まれるチカラです。

「巻き込み力」という言葉は聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。当然、巻き込み力も大切です。同じように、巻き込まれるチカラも非常に大切なのです。「巻き込まれる」ということは、周りがその人を必要としているということだからです。

巻き込まれるチカラの強い人とは、社内、社外問わず、様々な場所でリーダーや幹事をお願いされるなど、自然と人に巻き込まれて行きます。そのためには、能力も高く、人間的な魅力も無ければ巻き込んでもらう事はできません。

成長予感不足が会社を辞める理由になるほどに自己成長を求める若手社員にとって大切なことの一つが、今の会社以外でも通用する能力があるかどうかです。一部では、転職市場においても高い年収が提示されるという意味で「市場価値の高い人間になりたい」という人もいます。巻き込まれるチカラが高い方は市場価値が高い人なのです。

逆に、社内の同じ人としか付き合わないとか、社外も含めた交友関係を広げていこうとしない人はなかなか巻き込まれるチカラは磨かれません。

巻き込まれるチカラは、

  • 仕事の能力
  • 人間的魅力
  • コミュニケーション力

など総合したチカラとも言えます。

若手社員の定着率のカギは、管理職や中堅社員の育成

ここまで、上司・先輩社員が身に付けるべきチカラを解説してきました。
あらためて話を整理すると、

若手社員の定着率向上のカギは、

  1. ビジョンを発信するチカラ
  2. 業務の遂行力
  3. 巻き込ま”れる”チカラ

の3つのチカラを持った、上司や先輩社員を育成し、新入社員や若手社員の成長予感を高めることにあります。

もちろん、若手社員の定着率向上の方法は他にもありますが、採用や新入社員への教育を見直す前に、

  • 存在承認
  • 貢献実感
  • 成長予感

が満たされているか?

そして、上司や先輩社員が

  1. ビジョンを発信するチカラ
  2. 業務の遂行力
  3. 巻き込ま”れる”チカラ

を持って、若手社員に成長予感を抱いてもらえる姿を見せられているかを確認してみてください。