キャリアコンサルティングを通じた社員の定着サポートの挑戦 アールナイン 代表取締役社長 長井さんへのインタビュー(後編)

株式会社カイラボ

前編では、長井さんが行っているキャリアコンサルタントを活用した定着支援についてお伺いしました。キャリアコンサルティングを「意思決定支援」と定義しているからこそ、企業内でキャリアコンサルティングを実施しても転職の支援にはならず、本当の意味でキャリア支援が可能になります。

さらに、そのノウハウを活用して採用支援や内定者のフォローにも取り組まれている長井さん。後編では採用に関する情報もお聞きしました。

さらに、今後の展望としてキャリアコンサルタントの雇用創出という野望も聞きました。

キャリア支援の知見を活かした面接代行を通じて企業の採用活動を支援

井上:ここまでは「定着」に関してお聞きしましたが、ここからは採用に関してもお伺いしたいと思います。採用コンサルティングの会社は最近多いですが、定着支援までやっているアールナインさんでの採用支援の特徴はなんでしょうか。

長井:ご依頼としては、面接代行が非常に多くなっています。

しかし、面接を代わりにするだけでは付加価値がありませんので、定着、戦力化を見据えた上で「面接をどうするべきなのか」をお客さまと一緒に考えながら進めさせていただいています。

実際、面接をしながらデータを取り、「どういう場面」で「どういうことを見極めた上で」面接をすると、「どの様に数値が変わっていくのか」を一緒にお客さまと考えていきます。

そのため、ただ代行するというよりも、あるべき面接の仕方を作り上げていくようなイメージですね。

井上:面接の評価シートをどうすべきという話がありますが、何となく評価するのではなく、評価シートの項目と、入社後の定着やパフォーマンスとの関係性をデータを取りながら明らかにしていくということですね。

長井:特に意識してやらせて頂くのは、面接の中で事実をしっかり引き出し、その事実をどう評価するのかです。

多くの企業様では、印象で採用するかどうかを決めているケースがほとんどだと思うんです。

そこで私たちは、本人の「やってきた事実」や「経験」を引き出した上で、それを面接官がどのような評価をしたのか、プロセスを残しています。

評価のプロセスが一定量溜まったところで、「他の面接官は同じ事実に対して、どのような評価をするのか」を付き合わせていくと、だんだんと面接官同士で目線が合ってくるようになります。

このようなワークショップをしながら、面接をより良い状態にしていきます。

採用活動では内定者へのフォローも重要 キャリアコンサルタントが内定者をフォロー

井上:今私たちカイラボでは、インタビューの動画を作れるHinomeというサービスを作っていいます。
先日長井さんとお話しさせていただいた際、内定者のフォローや選考途中のフォローで動画を活用すると、内定辞退率とか選考の辞退率に対していいアプローチが出来たというお話しがあったのですが、詳しいお話をお聞かせいただけますか。

長井:前提としては、内定者は放置されているケースが多くなっています。

人事の方は多忙な事もあり、日ごろの業務の延長線上で「結構フォローしているよ」と言われるんですが、内定者はそうは思っていないというズレが生じています。

実際、コミュニケーションの頻度でいうと、多い会社さんで1ヶ月に1~2回ぐらい、中には入社するまで一切コミュニケーションをとらないという会社さんもあります。

また、飲み会をすることがコミュニケーションだと思っているケースが非常に多くあります。

しかし、学生の立場からしてみると、飲み会ではコミュニケーションがとれず、非常に寂しい思いをしていたり、不安な思いをしていたりというケースがあります。

そこで我々は、内定者のフォローとして、色々なやり方をさせていただいています。

一番オーソドックスなものですと、我々が代理でキャリアコンサルティングをさせていただきます。

我々がプロのキャリアコンサルタントという立ち位置で、内定者の学生さんと将来あるべき姿を一緒に作り上げていきます。そうることで、学生さんも「ああ、この会社を選んで間違いなかった」と思えるようになります。

他にも、内定者フォローではいろんな手法があるかと思いますが、1つは動画をうまく活用していくというところですね。

例えば、企業側から定期的に動画を出してメッセージを伝えてあげる。

逆に学生側のからも直接言いにくいところを、動画で撮影し人事に渡すなどもあると思います。それ以外でも、いろんな場面でその動画を活用できると思っています。

井上:入社前にキャリアコンサルタントの方がついて、「あなたの将来のキャリアを考える」ってなかなかやる機会がないですが、非常に良い取組みですね。

第三者だからこそ客観的な視点で内定者へのキャリア支援が可能に

井上:キャリアコンサルティングにあたり、内定者ならではの大変な部分はありますか?

長井:多くの内定者は、「この会社で良かったんだろうか?」という疑問を持っています。

「企業も印象で採用する」とはいいながらも、見極めて人を採用していますから、間違いなくその会社さんに合う人だと思うんですね。

ただ、面接の中で、「君はこういうところがうちに合うから、内定出したんだよ」なんて一言も言いません。

そのため、学生からしてみると、「自分のどこがこの会社と合ったんだろうか」と非常に不安になります。

ですから我々が第三者として「こういう部分が一致しているんじゃない?」と学生と一緒に考えながら伝えていきます。

井上:ちなみに、内定者のフォローを行っているのは、お業界や会社の規模感としては、どういったところが多いんですか?

長井:ご依頼いただくのは、比較的内定辞退が多い業界が中心ですね。

井上:早期離職の率というのでいくと、飲食、宿泊、サービスや塾とか英会話教室などの学習支援業の離職率が高いんですが、このあたりが結構多くなってくるということなんですね。
特に、販売サービスは、「その後のキャリアが見えにくい」とか、「親の反対」などにより離職率が高くなっていますね。
フォローに関しては、内定者になりますか?それとも、内々定者になりますか?

長井:両方ありますね。

井上:両方あるんですね!
10月1日に内定式があるから、そのあとにフォローが入るケースもあれば、もう内々定だと3年生の年が明けたぐらいの時期からやられているということですね。頻度は場合によって異なるとは思いますが、多いと月1回。1年ほどフォローし続けるということですね。

長井:そうですね。多い企業さんですと、「毎月やってほしい」ということで、宿題も出しながら、月1回やっています。

井上:そういったフォローはオンラインでやられるんですか?

長井:これはオンラインのケースもあれば、あえて対面でやりたいという企業さんもありますので、オンライン・オフライン両方あります。

対面の場合には、本社まで来て貰う場合もあれば、学生もいろいろなところにいますので、我々が出向いて、近くのカフェでやるというケースもあります。

2万人のキャリアコンサルタントの雇用創出を目指す

井上:私はキャリアコンサルタントの資格を持っておらず、国家資格も持っていない中で、「元々やりたい」、「こういうのがあったら素敵だな」と思っていたのを、長井さんのところで体現されているという事をすごく感じました。
先ほどコンサルタントの方の評価制度という話もありましたが、今後どういった取り組みをやっていこうと考えていらっしゃるんですか。

長井:我々が目指している姿があります。それは、今国が「2024年に国家資格のキャリアコンサルタントを10万人にする」ということを謳っていますが、残念ながら資格を持っている方で、キャリアコンサルタントだけで食べている方はほとんどいません。

そこで我々は、その方々が食べられるようにということで、2万人の雇用を生み出したい。仕事創出したい。というふうに思っております。

2万人の方々が、当社だけで食べていくというのは難しいかもしれませんが、少なくとも我々のところで働き口を見つけて、仕事を請け負うことができることをまず第一段階として目指しております。

そうなると、我々としては案件を取らなければいけません。

そこで、その採用や定着をキーワードにしながら、周辺業務をうまくコモディティー化し、コンサルタントの方が仕事をしやすいような状態で作り上げる。

そして、キャリア支援をオンライン上でできるような、そんな仕掛けを作りたいと思っています。

井上:私も、高校生向けのキャリア教育といった授業を行っているので、知り合いにキャリアコンサルタントの国家資格を持っている方が非常に多くいます。
そういった方々の雇用を作っていくという事なんですね。
ちなみに、私はキャリアコンサルタント(国家資格)を持っていないのですが、長井さんの運営されている国際キャリアコンサルティング協会の資格というのは、キャリアコンサルタント(国家資格)を持っていなくても取得出来るのですか?

長井:はい。キャリアコンサルタント(国家資格)と連動している部分もありますが、全く違う要素もあります。

どちらかというと、今当社のお願いしている業務に沿った内容をカリキュラムとして提供しているという状態ですね。

そのため、傾聴と情報発信の「7対3」の割合であったり、面接のやり方、内定者のフォローなどのトレーニングをさせて頂いています。

今後の展望:今いる社員の市場価値を測り、適正な報酬を確保する

井上:最後に、イベントやサービスなど皆さんにお伝えする事があれば、お願い致します。

長井:実は最近、いろんなご相談やご要望をいただいております。

まず1つは、今いる現社員の市場価値を測りたいというご相談が非常に増えています。

「今働いている社員の方々が適正な年収をもらっているのか。」

「ちゃんとキャリアを、自社内として身に付けているのか。」

このようなことをやりたくても、自社ではできないので、客観的な立場で携わってほしいとご依頼いただいております。

転職エージェントに相談に行かせるわけにもいかないので、我々が第三者面談やその他アセスメントツールを使って、その方の適正なキャリアや年収を得ているのかということをアドバイスしたり、レポートにまとめたりさせて頂いております。

また1on1の代行が非常に増えております。

実際、ITの企業さまでは、

「最初の頃はちゃんと1on1と形がなっていたけれども、回を重ねるごとにだんだんと形骸化していく。」

「意味がないんだけど、とりあえず場だけは持たれることになって、かえって離職を誘発している。」

などの意見をいただくこともあります。

そこで、我々がプロとして、代理で1on1を行い、運用できるようご支援させて頂いております。

これらが、ここ最近ご要望として増えておりますので、もしお悩みの企業様がいらっしゃれば、いろんな形でご支援できるかと思います。ぜひご連絡をいただければと思います。

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井上:多くの質問を用意していたのですが、長井さんからスムーズに答えていただいたので、思ったよりも進行が早くいろんな事を聞くことができましたので、やはり講演慣れしている方はすごいですね。

本日はどうもありがとうございました。