「ボトムアップ組織」と聞くと、現場の社員が意思決定していくイメージが強いため、組織のトップ層やリーダーのことは軽視されがちです。
しかし、ボトムアップ組織をうまく運営させるためには、トップの役割こそ非常に大切になってきます。
なぜ、ボトムアップ組織には、強烈なトップが必要なのか?について理由をお伝えするとともに、ボトムアップ組織をうまく機能させるためのポイントについても解説していきます。
本記事の要約
組織のカタチは大きく2種類
まずはトップダウン組織とボトムアップ組織の違いについて、確認していきましょう。
組織のカタチは
・トップダウン組織
・ボトムアップ組織
と大きく2種類に分けることができます。
トップダウン組織の特徴
トップダウン組織の特徴は
・組織の長や上層部の決定を下層に伝える
・意思決定は上層部のみで行われる
ことが挙げられます。
企業のトップ層が意思決定を行い、上が決めたことに基づいて現場の社員が行動するスタイルの組織運営です。
ボトムアップ組織の特徴
それに対して、ボトムアップ組織の特徴は
・地位や経歴に関係なくメンバーが意見を提案
・メンバーの意見を取り入れながらの意思決定
などが挙げられます。
ボトムアップでは逆に、トップ層ではなく現場の社員の提案や意見に基づいて意思決定していく経営スタイルです。
解説動画
こちらの記事の内容は動画でも解説しています。
トップダウンのイメージ
続いて、トップダウン組織とボトムアップの組織のイメージや特徴について見ていきましょう。
実力と人気のあるリーダー
カリスマ的な経営者や上層部がどんどん意思決定を進めることで、組織を運営している企業も多いと思います。意思決定から行動までのスピード感が早いのが特徴の一つです。
一方的な意見の押し付け
また一方で、会社のトップが能力も実力も高いが故に、一方的な意見の押し付けが多く、下で働いている社員にとっては好ましくないイメージを持たれている方も多いのではないでしょうか。
自由な意見が言えない
上からの命令は絶対のような雰囲気があり、自由な意見が言えない職場もあるでしょう。トップダウン組織と聞くと、「独裁的専制君主」のようなイメージもあるかもしれません。
現場を軽視した意思決定
「トップは現場のことを何もわかっていない…」このような不満が多いこともトップダウン組織の特徴です。トップ層が現場社員の現状を軽視するような意思決定が多く、現場が疲弊するケースも多いようです。
ボトムアップのイメージ
次に、ボトムアップの組織のイメージや特徴について見ていきましょう。
意見が言いやすい
ボトムアップ組織では下の意見を吸い上げて上層部に伝えることで意思決定を行います。そのため、現場の社員が上層部に意見を言いやすい雰囲気があるイメージを持たれている方も多いと思います。
現場の知見を活かせる
現場の社員が持っている経験や知識を活かすことできることも特徴の一つです。現場だからこそ分かること、または現場のリアルな課題や問題点などを意思決定に活かせることもメリットです。
上司が指示をしてくれない
「うちの会社はボトムアップ組織なんだから、自分で判断してね」と言われ、現場社員が困惑してしまい、うまく機能しないケースも多いです。
上司に都合のいい言い訳
職場によってはボトムアップが「上司に都合のいい言い訳」として使われてしまっている場合もあります。上司が意思決定を下層の現場社員に丸投げする口実として、ボトムアップ組織として運営している会社もあると耳にすることも少なくありません。
ボトムアップにも方向性は必要
ボトムアップ組織の特徴と矛盾するように聞こえるかもしれませんが、ボトムアップ組織では「会社のトップ層の役割」が非常に大切です。
ボトムアップ組織は、現場の社員から意見を吸い上げるため、トップや会社の上層部の役割が軽視されがちです。
しかし、ボトムアップ組織においては、組織のトップ層が
・どんな会社にしていきたいのか
・どんな社会を実現したいのか
など、ビジョンや理念を明確にして社員に伝えることでうまく機能します。
逆に、会社としての方向性が社員に浸透していないと、ボトムアップ組織として運営がうまくいきません。
では、方向性が不明確な場合と方向性が明確な状態をそれぞれ見ていきましょう。
方向性が不明確なボトムアップ組織の場合
会社のビジョンや方向性が不明確な状態だと「社員が自分の言いたことを言うだけ」になってしまいます。
たとえば
・残業時間削減したい
・組織風土改革が必要だ
・これからはSDGsだ
など、現場の方の不平不満がバラバラに出てくるだけになることが多いです。
方向性が不明確な組織では、会社の経営陣やトップ層からすると「そういう意見が欲しいわけじゃないんだよな…」と思うような意見ばかりが上がってきて、ボトムアップの良さが発揮できません。
方向性が明確なボトムアップ組織の場合
会社のビジョンや理念が明確で社員にも浸透している状態だと「方向性に沿って具体的な提案が上がる」ようになります。
具体的には
・会社の理念に沿っているのでこの新規事業を始めたい
・今抱えている組織課題を解決できるので、このツールを導入しましょう
など、方向性に沿った提案や意見が多くなります。
会社の進むべき方向性が現場の社員がわかっているため、方向性に沿った意見を募ることができます。
見せかけのボトムアップがうまくいかない理由
では、ボトムアップ組織がうまくいっている会社とうまくいっていない会社では、何が違うのでしょうか?ここでは、ボトムアップがうまくいかない理由にお伝えします。
ボトムアップを求めながら方向性を示さない
うまくいかない理由の1つ目は、「ボトムアップを求めながら方向性を示さない」です。
会社として何を目指しているか、どんな社会にしていきたいのかといったビジョンや方向性を示すことなく、ボトムアップを求めてもうまくいきません。
方向性も何もないまま現場に意見を求めても、
・現状に対する不平や不満
・目的がバラバラな提案
など、意思決定につながらない意見ばかりになります。
まずは、会社のトップ層やリーダーからビジョンや理念を発信し、社内に浸透するところから始めてみてくだい
普段からボトムアップの意見を拒否や無視
2つ目は、「普段からボトムアップの意見を拒否や無視している」です。
現場から上がってきた意見を無視するような職場は、ボトムアップ組織として運営が難しくなります。
せっかく意見や提案をしても上層部が拒否してばかりだと、次第に現場からは何も意見が上がって来なくなるでしょう。
すべての意見を採用したり取り合うまでは行う必要はないと思いますが、上がってきた意見や提案を無視や拒否し続けることがないようにしましょう。
意見を聞くだけで実行しない
3つ目のうまくいかない理由は、「意見を聞くだけで実行しない」です。
意見を聞いても、リーダーや会社のトップ層が何もアクションがないケースもNGです。
聞くだけ聞いて終わりになってしまうと、現場の社員の間に「どうせ何も変わらない」という雰囲気になってしまうからです。
また、現場に任せるといいながら、トップ層が途中で過度に介入してしまうことが多いと、ボトムアップ組織が機能しない場合があります。
現場の社員の方の内発性や自主性を潰してしまうような行動をしていないか注意してみてください。
ボトムアップ組織の効果
では、最後にボトムアップ組織がうまく機能すると、どんな効果があるのかについて解説していきます。
ボトムアップ組織では若くても組織の意思決定に関わる
トップダウン組織の場合には、意思決定に関わることができるのはリーダーや上層部など経験年数が多い方に限られている会社も多いでしょう。
しかし、ボトムアップ組織では年齢的に若くても、勤務年数が多くなくても組織の意思決定に関わる機会があります。
意思決定を若い方も行うことで、仕事に対する姿勢や考えなど影響が出てくるはずです。
会社の意思決定が自分ごとになる
意思決定に自ら参加することで、自分ごとになり主体的に動く社員が多くことも大きな効果です。
「会社から言われたからやる」ではなく「自分で決めたからやる」と自分ごととして感じることで、やる気が高まり、社員のパフォーマンスも上がります。
ボトムアップで意思決定をすることで。内発的な動機で主体的に動くメンバーが増えるようになるでしょう。
早期離職対策にも有効
会社の意思決定を自分ごとして捉えているメンバーが増えていくことは、そのまま早期離職対策にも繋がります。
ボトムアップ式に意思決定が行われ、「自分たちも会社の運営、意思決定に関わっている」という実感を持っている社員が増えていくことは、会社へのコミットも高まってくるでしょう。
そのため、ボトムアップ組織をきちんと機能させることは、早期離職対策としても有効になりうると考えています。
まとめ
「ボトムアップ組織だけど、うまくいっていない気がする」
「社員に意見を求めても、意見がでない」
などの悩みを持っている管理職の方を声を企業研修や講演などを通じて、よく耳にします。
「ボトムアップ」というと、どうしても現場の社員に注意が向きがちですが、実はトップ層やリーダーの方がどんな行動をとっているかが非常に重要です。
もしボトムアップを採用していてうまくいっていない場合には、今回お伝えしたことを参考にトップ層やリーダーから思いやビジョンを伝え、方向性を明確にしていくところから始めてみてください。
そして、みなさんの職場が「本当の意味でのボトムアップ組織」になるように取り組んで行ってみてください。