人事など人材育成に携わる方であれば「経験学習モデル」という言葉は知っている方は多いと思いますが、十分に理解できているか?と言われると自信がない方もいるのではないでしょうか?
経験学習モデルとは、企業の人材育成において非常に重要なフレームワークです。経験したことを振り返り、今後に応用可能なノウハウを蓄積していくため、OJT中心の人材育成をおこなう日本企業では社員の成長には経験学習モデルが不可欠です。
この記事では、「経験学習モデル」について、活用方法も合わせて解説します。
なお、この記事の内容は動画解説でより詳しくご覧いただけます。
本記事の要約
経験学習モデルとは
経験学習モデルは以下の4つのフェーズに分けられます。
①具体的経験:実務などで具体的な経験をする。
②内省的観察:その経験を自らで振り返る。(内省する)
③抽象的概念化:他の場面でも活用できる抽象的な概念(コツ)に落とし込む。
④能動的実感:そのコツを違う場面で実際に活かす。
このようなサイクルを繰り返すことで、徐々に自分の中で「仕事のコツ」を蓄積していくイメージです。
経験学習モデルの具体例
経験学習モデルの具体的な例として、「新入社員が先輩にわからないことを質問した」場面を想定して考えてみましょう。
まず、具体的経験として、先輩に「どうしたらいいですか?」と聞いたら、「一度自分で考えてみて」と言われたとします。
ここで、「あの人嫌な人だな」などと思ってしまうだけでは、経験学習が始まりません。「考えてもわからない」なら、「なんて聞けば良いのか?」「どうすれば解決するのか?」と考えることが、内省的観察です。
そして、内省的観察から解決につなげるためには抽象的概念化に落とし込みます。
今回の場合では、「ここについてのヒントをくださいと聞いてみる」「自分の仮説をぶつけてみてアドバイスをもらう」などが考えられるでしょう。その上で、実際の行動に起こしてみます。これが、能動的実験です。
この場合、「仮説を伝えてみたところ、前提条件が違うと教えてもらった」「ヒントはもらえなかったけど、調べるのに便利なサイトがわかった」などという結果が得られるかもしれません。
ここから得た結果がまた、具体的な経験となり、経験学習モデルのサイクルが繰り返されます。
この経験学習モデルの中で特に重要なのが、内省的観察と抽象的概念化です。なぜなら、内省的観察と抽象的概念化は意図的に機会を作らないと実行が難しいからです。
内省的観察の方法
では、具体的に内省的観察はどう行えばいいのでしょうか?
企業によっては、研修や勉強会での振り返りの機会を設けているケースもあると思います。また、日報や週報などによる振り返りも一般的です。
研修や勉強会での振り返りの注意点は、振り返る頻度です。頻度が少ないと具体的な経験の内容を忘れてしまっていたり、振り返りの目的を理解していなかったりなど、内省が上手くいかない可能性もあります。最低でも月に1回程度の頻度で定期的に行うことが重要です。
定期的な内省という意味では1on1の実施も内省には効果的です。
ただし1on1が上司からのアドバイスの場となってしまい、うまくいかないケースがあります。上司からの一方的なアドバイスの場になってしまうと、部下の内省(振り返り)の場ではなくなってしまいます。正しく部下の内省の場にするためには、上司に傾聴や問いかけなどのスキルが求められます。
また、上司は傾聴しているつもりなのに誘導尋問になってしまうケースもあるので注意が必要です。誘導尋問型の傾聴については下記のの記事でも解説しています。
上司による誘導尋問型問いかけは 社員のモチベーション低下を招く
効果的な内省を促すためには、上司が振り返りの観点を事前に決めておくことが重要です。
「前回の振り返りはこうだったから、今回はこういうテーマで振り返ろう」など、テーマを絞って振り返ることで、考えやすくすることができます。
抽象的概念化の方法
抽象的概念化の具体的な取り組み方として、職場内で「仕事のコツ」の共有機会を設けることが挙げられます。抽象的概念化の際には、上司がヒントを示して抽象的概念化の補佐をしてあげることや、図や文字で可視化・言語化することも有効です。
抽象的概念化で仕事のコツを考えるときのポイントは、「まずは仮説で構わない」と考えることです。
仮説で構わないので、まずは概念化してみることが大切です。経験学習モデルのサイクルで仮説検証を繰り返し、仕事のコツをブラッシュアップしていくことができます。
まとめ
経験学習モデルは4つのフェーズがありますが、その中でも内省的観察と抽象的概念化が非常に重要です。どちらも意図的に機会をつくる必要があるからです。
行動して終わりではなく、定期的に振り返りの場を作ること、今後に活かせそうな概念化を行うこととが重要です。
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