現在製作中の早期離職白書2016ですが、どんな内容が書いてあるのかわからないという方もいらっしゃると思い、一部をご紹介します。今回ご紹介するのは早期離職者へのインタビューです。3年以内で退職をした方が何を考え、どんなことが理由で辞め、今何をしているのか。その事実に迫っていきます。

今回はブログ掲載用に大卒ではなくて短大卒業後に専門学校に入学したという経歴の方のご紹介です。

 


早期離職者インタビューファイル ♯:I.Tさん 25歳

25歳女性。短大卒業後、デザインの専門学校に進学し卒業後にアパレル企業にデザイナーとして就職。自社ブランドのデザイナーとしてTシャツのデザインなどを手掛けていたが、社長からの扱いで気持ち的に沈み「辞めようかな」と思っていたところで会社が倒産。現在は失業保険を受給しながら求職活動中。春からは親族が立ち上げた事業を手伝う予定。在職期間2年4か月。

 

 

Q.短大卒業後に専門学校に進学した理由を教えてください。

 本当は高校を卒業したら専門学校に行こうとも考えていたのですが、姉が大学に行ったのをみて、いきなり専門学校に行くよりも短大で幅広く勉強したいなと思い、親もOKしてくれたので短大に進学しました。

 もともと短大を卒業したら専門学校に行くつもりだったので、短大のときも就職活動はせずに専門学校に進学しました。専門学校ではイラストを専攻していました。

 

Q.就職活動はどんな風に進めましたか?

 昔からパッケージデザインをやりたかったのですが、求人が少なくて苦戦しました。化粧品などのパッケージをやりたかったので、その分野に強い会社となると数も多くないし、求人があっても中途採用がほとんどなので、新卒の枠はありませんでした。

 友人がアパレルの会社も受けていたので、自分も服は好きなので調べてみたら学校に求人票が来ていたので会社見学に行ったところ、面接することになり、本当は受ける気はなかったのですが「練習だと思ってうけてみな」と周囲に言われ受けたところ内定しました。

 

Q.入社の決め手はなんでしたか?

 面接日が卒業制作の中間発表日と重なったのですが、事情を話したら面接の別日を設けてくれて、面接でも社長や会長が接しやすい雰囲気だったので入社を決めました。

 

Q.入社前後の研修はどんな内容でしたか?

 入社前は特に研修はありませんでした。

 入社後は、本当は店舗研修があったはずなんですが、人が少ないのでデザイナーは店舗研修はなしということになりました。研修といえば、入社後1ヶ月半は親会社のデザイナー部門で仕事をしていました。私のいた会社を実質的に仕切っていたのが親会社の社長なのですが、社長の目の届く範囲で仕事をさせるという意味があったんだと思います。

 

Q.入社してからの仕事内容を教えてください。

 カジュアルブランドを展開していたので、Tシャツやパーカーなどのプリントのグラフィックデザインをやっていました。人が少ないので自分が担当になった分については最初から最後までトータルで担当させてもらえました。

 シーズン毎に1人数品番ずつ担当が割り振られてデザインをするのですが、すべてに社長チェックが入ります。社長チェックがOKだとサンプルを作れるんですが、NGだとやり直しです。サンプルをつくっても社長からは「こんなのOKしたっけ?」と言われることもあって、最終的には社長の好みに合わないと仕事が前に進みませんでした。社長自身は「デザイナーを尊重する」とか「お客さんのほしいものをつくる」と言っているんですが、実際には社長の好みだけで判断されていました。そのため、仕事も社長チェックでOKを出してもらうためにはどうしたらいいかを考えるようになっていました。打ち合わせでも「今の社長の中でのブームの色はこれだから」という発言が飛び交っている状態でした。

 勤務時間は9時~18時が提示ですが、実際には朝礼とラジオ体操が8時30分から始まるので8時20分には会社にいないといけませんでした。夜は21時か22時くらいまで働いていたと思います。

 

Q.退職を考えたきっかけを教えてください。

 とりあえず経験が欲しいので、3年は勤めるつもりでした。

 2年目の春ごろに朝礼にギリギリに行ったら、社長よりも遅かったという理由で、子会社のメンバーだけで本社に行って朝礼を行うことになりました。朝礼の内容は声出しと、その場で指名された人が「いい話」をするというものです。話に満足しないと社長から怒られ、昔の失敗などを引き合いに「だからお前はダメなんだ」ということを言われます。今日は誰が指名されるんだろうという恐怖と、人前で怒られることが苦痛で、朝礼の後は泣きながら「私、もうダメかもしれない」と言っていました。

 

Q.退職までの具体的な流れを教えてください。

 社長からの当たりはきつかったですが、子会社メンバーは優しくて支えてくれていて、自分も「もう少し頑張ろう」と思っていました。

 7月くらいから突然、社長が子会社には関与してこなくなり、8月に「倒産することになった」と聞かされました。会社自体は取引先の会社に買い取られるような形になって、若い人が欲しいと言われていたのですが、自分の中では辞めようと決めていました。ある意味では辞めるタイミングとしてはラッキーだったかなと思います。

 

Q.会社の改善すべきポイントがあれば教えてください。

 両親に仕事の話をしたときに「変な会社だな」と言われていました。例えば、ラジオ体操をしっかりやらないと「腕の振り方が悪い」とか「表情が悪い」と言われて叱られるなんてこともありました。あとは、倒産後に私たちの社会保険が数か月間未加入だったことが発覚したなんてこともありました。

 職場の仲間や仕事内容はとても良かったのですが、経営陣が何を考えているのかはわかりませんでした。

 

Q.退職してから今までの流れを教えてください。

  8月中から転職活動をしていたのですがうまくいかなくて、今も失業保険をもらっています。もともとやりたかったパッケージデザインの仕事で探しているのですが、求人数が少ないので苦戦中です。

 

Q.今後の展望を聞かせてください。

春からは親族が独立したので、その会社の事業を手伝うことになっています。とりあえずはバイトという形で働きながら、次の仕事を探すのはOKしてもらっています。実は最近、本当に自分はパッケージデザインの仕事をやりたいのかどうかもわからなくなってきて、実は自分には別の仕事の方が向いているかもしれないとも思っています。

 ただ、まずは収入がある状態にしないといけないので、与えられた仕事をしっかりこなしていきたいです。

 

 


 

 

以上、いかがでしたでしょうか。

これまで約200名の方にインタビューをしてきましたが、事情は人それぞれでひとくくりにして「こうゆ理由で辞める」ということの方がよっぽど難しいと感じます。だからこそ早期離職白書2013と、現在製作中の早期離職白書2016で多くの事例を知っていただくことが必要だと考えています。前回の早期離職白書2013ではインタビューの掲載は15件でしたが、今回は20~30件ほどを掲載予定です。

 

 

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