早期離職率と関係の強い項目は平均年収(就職四季報データから サービス業編)

編集部

就職四季報には、いろんな企業の業績や平均給与、残業時間など、その会社や実際に働いている方たちの実態が掲載されています。最近では、早期離職率などのデータも載っています。

そこで今回は就職四季報に掲載されているサービス業の企業の中から、平均給与などの様々なデータの中でどの項目が早期離職率と関係があったのかについてお伝えします。

ご注意点
企業によっては早期離職率を出してない会社もあります。また、掲載されている企業も相当数あるため、今回は業界を「サービス業」に限定し、サービス業の中で早期離職率を出している企業を対象に分析した結果を解説していきます。

早期離職率と相関が強かった項目 2位は有給休暇取得日数

まずは早期離職率と相関関係が強かった項目をご紹介します。

早期離職率との相関係数が高い項目ランキング

1位 平均年収              (相関係数 -0.627)

2位   有給休暇の取得日数 (相関係数 -0.503)

3位   初任給                   (相関係数 -0.165)

相関係数とは、2つのデータの関係の強さを-1から+1の間の値で表した数のことをいいます。絶対値が1に近いほど相関強いことになります。
また、正の相関と負の相関があり、正の相関とは、「一方が増えるともう一方も増える」ことで、負の相関とは「一方が増えると、もう一方が減少する」ことです。

平均年収の相関係数は-0.627となっており、早期離職率との間には負の相関があるといえます。

簡単に言ってしまえば、「平均年収が高ければ高いほど、早期離職率は低くなる傾向がある」ということです。

有給休暇の取得日数も同じく「有給休暇の取得日数が上がれば上がるほど、早期離職率は下がる傾向がある」と言えます。

相関係数は絶対値が0.4を超えるとやや相関関係があると言われています。今回の結果では、平均年収は-0.627、有給休暇取得日数は-0.503ですから、この2つについては早期離職率との間に相関関係がありそうです。

一方で、第3位の初任給はー0.165ですから、絶対値は0.165となります。絶対値が0.1台ですので、初任給と早期離職率との間には相関関係はない、つまり初任給が高くても低くても早期離職率には変化はほとんどないと言えそうです。
また、早期離職率と関係がありそうな項目としては「残業時間」も挙げられます。今回、残業時間と早期離職率との相関係数は-0.105ですので、こちらも相関関係はなさそうです。

早期離職対策に平均給与や有給休暇の取得日数を上げればいいわけではない?

さきほど早期離職との関係性が強い項目として、

1位 平均年収
2位  有給休暇の取得日数 
3位 初任給
とお伝えしました。

この結果から、サービス業の早期離職対策としては

「社員の年収や有給休暇取得日数を上げること」が考えられます。

しかし、相関関係から対策を考える際には、少し注意が必要です。相関関係はあくまで関係が強いか弱いかを表しているだけなので、どちらが原因になっているかまでは判断できません。

つまり、相関係数からは

早期離職率が低いから平均年収が高いのか

それとも

平均年収が高いから早期離職率が低いのか

どちらなのかはわかりません。

つまり、平均年収を上げれば早期離職が減るかどうかは分かりません。
有給休暇の取得日数に関しても同じです。有給休暇の取得日数を増やせば、必ず早期離職が減るわけではありません。

当たり前のことではありますが、「早期離職の対策として有給休暇の取得日数を増やす」取り組みをしてみて、実際に早期離職率が下がる会社もあれば、減らない会社もあります。

データとして

・平均年収           

・有給休暇の取得日数 

の2つの項目と早期離職率の間に相関関係がありそうということはわかりましたが、必ずしもこの2つが対策として有効かどうかはわからない点には注意しましょう。

早期離職対策を考える際に、是非参考にしていただければと思います。

就職四季報のデータから早期離職対策を考える時の注意点

今回は早期離職率と企業の各項目についてご紹介していますが、就職四季報のデータから早期離職対策を考える際には、いくつか注意点があります。

一つ目は「就職四季報に載っている企業は大手企業が中心」という点です。

掲載されている大手企業が多いため、平均給与は高くなる傾向がありますし、早期離職率も低い可能性も考えられます。

また、平均年収についてもサービス業は、あまり高くないイメージがある方も多いと思いますが、就職四季報2021に掲載されているサービス業の平均年収は約700万と高水準になっています。

二つ目の注意点は「掲載されている全ての企業が有給休暇や早期離職率を回答しているわけではない」ことです。

先ほど、関係が強い項目として「1位平均年収、2位  有給休暇の取得日数、3位 初任給」とお伝えしましたが、このデータはあくまでも、その項目を回答した企業だけから算出したデータです。

つまり、すべての企業から抽出されたデータではないことを理解した上で、具体的な対策を考える必要があります。

就職四季報を早期離職の対策を参考にしてみましょう

ここまで就職四季報2021年度版から見る早期離職データについてお伝えしました。

就職四季報は大手企業の掲載が多く中小企業の掲載は少ないこと、未記入の項目が多い企業もあるなど、必ずしもすべての企業のデータを反映しているわけではありません。それでも、早期離職対策を考える上で参考になるではないでしょうか。

今回は、サービス業に絞ってお伝えしましたが、皆さんの会社でも早期離職対策に今回のデータを是非役立ててみてください。

そして、みなさんの企業でも、就職四季報などのデータを参考にしながら、早期離職対策を進めていってみてください。