「新人研修を行っているが、どうすれば研修内容がより定着するだろうか…」 OJTの担当者や社内の営業研修の担当者であれば、こんなお悩みをお持ちの方も多いと思います。
今回は、「エドガーデールの学習法則」を紹介しながら、
・研修で知識の定着率を高めるためにはどうすれば良いか
・研修でグループ分けする場合のより良い方法
などについて解説していきます。
本記事の要約
エドガーデールの学習法則とは
「エドガーデールの学習法則」とは、学習の定着度に関する法則です。「読む」「書く」などの様々な学習方法が、どれだけ学習内容の定着につながるかを表しています。
具体的な定着率は以下の通りです。
・聞く 10%
・読む 20%
・見る 30%
・見ながら聞く 50%
・議論する 70%
・他の人に教える 90%
たとえば、「見ながら聞く」の定着率は、50%です。
研修などで講師が話しているのを受講者が資料を「見ながら聞いている」場面がよくあると思いますが、実は50%ほどしか知識は定着しないことがわかります
一方で、「言うまたは書く」という学習方法では、70%と定着率が高まります。
研修に取り入れらる方法として、
・グループワークで一人ひとり話してもらう
・個人ワークで自分の考えを書く
・メモやレジュメに自分の言葉でまとめる
というワークがよくありますが、こうしたワークが主流になっている背景には「言うまたは書く」ことの学習定着率が高いことがあります。
そして、もっとも学習定着率が高いのは「人に教える」ことです。エドガーデールの学習法則によれば、学んだことを人に教えることで90%まで定着率を高めることができます。
エドガーデールの学習法則を活用した新人研修
「人に教える」ことが学習行為としてもっとも定着率が高いことをお伝えしました。
次に、「人に教える」ワークを研修で取り入れるには、どのような方法があるかについて具体的に解説していきます。
エドガーデールの学習法則を研修の具体例
実際の研修にエドガーデールの学習法則を応用した場合を考えてみます。今回はシステムエンジニア職(SE)を新卒採用した場合を考えます。一言でSEと言ってもその経歴は様々です。
・情報系の学部卒で大学時代に既にプログラミングの経験がある方
・趣味で少しプログラミングの経験がある方
・全くの未経験の方
などなど、同じ新卒の方でもプログラミングに関する習熟度が変わってきます。
習熟度が違う場合の研修方法として習熟度別にクラス分けをして、違う内容を教える。という方法もあります。
ここで思い出していただきたいのが先ほどの学習法則です。もっとも学習定着率が高いのは「人に教える」ことでした。習熟度が違う人たちが同じことを学ぶのであれば、「習熟度別に分けずに、受講者同士の教え合いを取り入れる」という方法もあります。
同じクラスの中に、習熟度が80%の人もいれば20%の人もいれば40%の人もいるという状態をあえて作り出して、80%の人は20%ぐらいの習熟度の人に教えるように研修設計をするのです
習熟度が80%の方が「人に教える」というワークを通じて、更に理解が深まり習熟度が100%になっていくかもしれません。
また、40%ぐらいの習熟度の方であったとしても、自分が分かる部分だけ人に教えることでどんどん自分の習熟度が高まっていく可能性があります。
どのような場合に、「人に教える」ワークは有効か?
教えることは習熟度を高める効果があるとともに、わかったつもりであいまいな点を明確にする効果も期待できます。
・分かったつもりでいるが、うまく言語化できない
・知識としては分かっているが、実務で使いこなせない
ような状態であれば、「人に教える」ことを研修の中に取り入れていることをオススメします。
人に教えるときには、わかりやすくたとえ話を考えたり、理解できるように自分の知識を整理する必要があります。そのプロセスの中で、理解度が深まり、習熟度が高まることが起こるからです。
受講者の習熟度が今ひとつ伸び悩んでいる場合には、「人に教える」状況を意図的に研修に取り入れてみてください。
「人に教える」ワークを研修に取り入れる際のポイント
研修の受講者が教える側に回ることで、習熟度が上がる例について説明しましたが、「人に教える」ワークを導入する際には意識すべきポイントがあります。ある程度、サポートしてくれる先輩スタッフやメンターのような存在を用意することです。
研修運営側で、受講者のグループ分けだけをやって「お互いに教えあって勉強しておいてください」では、うまくはいきません。
サポートしてくれるメンターや先輩スタッフを準備し、わからない点を質問したり相談事などができる環境を整えることが大切です。
人材育成のために「人に教える」機会を意図的につくってみましょう
「人に教えることが、一番学習効果が高い」ことを知っている方は多いですが、研修の中で取り入れて活用している方は多くありません。
しかし、人に教えることが定着率90%であることを考えると、研修のワークとして活用しないことは大変もったいないと思います。
ただ、新入社員や若手社員の方は基本的には教わる側の立場です。そのため、研修を企画する側が意図的に「人に教える」場面を作ってあげることが大切です。
新卒社員から新卒社員へ教える機会を創出することで、より習熟度が高まり研修を終えて、実務に入った際にもよりスムーズに業務をこなせるはずです。
みなさんの会社のよりよい人材育成のためにも、研修に「人に教える」ワークを導入することをぜひチャレンジしてみてください。