高卒新入社員の3年以内の離職率 ー2022年秋発表ー

編集部

昔は、高卒者の早期離職率は5割というのが定説でした。しかし、今この状況には変化が起こりつつあります。

近年では、高卒早期離職率は低下傾向にあります。その理由については社会的な影響もありますが、今後は大卒者の早期離職率に近い数値になっていくのではないかと考えられます。

 

この記事では、2022年の高卒者早期離職率の最新データを紹介するとともに、過去のデータとも比較して今後について予想していきます。

2022年10月28日発表の早期離職率最新データ

2022年10月28日、高卒新入社員の3年以内離職率における最新データが発表されました。

新卒3年以内の離職率を、ここでは早期離職率として解説します。

2022年における早期離職率の最新データは、35.9%という結果でした。

(この記事の内容は、こちらの動画でも解説しています。)

高校新卒者の3年以内離職率 推移

35.9%というだけでは過去と比較して高いかどうかがわかりにくいため、データグラフから説明していきます。

早期離職率の2022年最新データである35.9%は、2019年に高校を卒業した人のデータです。

つまり最新データは、2019年に卒業した方が2020年4月〜2022年の3月まででどれだけ退職したかの割合が35.9%という意味になります。

過去において、早期離職率が一番高かったのは2000年卒の50.3%です。この年に卒業した人は、実に半数が3年以内に離職していたということになります。

一方で最も低かったのは、2009年卒の35.7%です。この数字をみると、実は今年の35.9%は早期離職率の最低値に肉薄しているということがお分かりいただけるのではないでしょうか。

ところで、早期離職における七五三現象というものがあります。

それは、最終学歴別での早期離職の割合を示すもので、中卒7割・高卒5割・大卒3割が卒業後3年以内の離職率だといわれていました。

高卒5割の根拠というのは、前述した2000年卒の50.3%です。その後は40%後半を推移していましたが、2009年に30%台へ一気に落ち込み、一度上がったものの最近ではまた減少傾向にあります。

一方、大卒での早期離職率は3割程度というのは耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。

高卒と大卒の離職率の差は、以前に比べてかなり小さくなってきているというのが現状です。

統計開始以来の高卒早期離職率 低い順

次に、統計開始以来の高卒早期離職率を低い順に並べてみましょう。

  1. 2009年卒 35.7%
  2. 2019年卒 35.9%
  3. 2018年卒 36.9%

3位には、昨年2021年のデータである2018年卒の36.9%が入っています。昨年の時点では2位でしたが、今回の2019年卒のデータが更新しました。

この結果から、直近の2年間は歴代で見ても、高卒の離職率がかなり下がっているのがよくわかります。

2009年卒が過去最低の離職率になっている理由は、リーマンショックの影響が大きいといわれています。

リーマンショックが起きたのは2008年の秋頃なので、その後の2009年4月に就職した人はすでに就職活動が終わっていたタイミングになります。

リーマンショックのような経済影響が起きてから、株価や企業の業績に影響を及ぼすのは翌年以降になります。そのため、入社するまでは業績が良かった会社も、その後に採用市場が非常に冷え込んでかなり苦しくなってしまったという状況がありました。

一方、今回のデータで2位である2019年卒と3位の2018年卒は、コロナ禍の影響によるものではないかといわれています。

こういった社会的に大きな出来事があると、離職率が大きく下がる、もしくは上がるという状況が起きることがよく知られています。

しかし、大卒に関しては、離職率は横ばいで以前と比べてあまり変化がありません。

一方で高卒の離職率は2000年をピークとして上がり、一度2009年卒の時点で一気に下がりました。その後はわずかに数値が戻りつつも、また最近は離職率が下がっている傾向にあります。

2020年4月〜2021年3月の離職が少ない

さらにもう一つの特徴として、コロナ禍の影響で2020年4月〜2021年3月の離職者が非常に少なくなっています。

これは、大卒・高卒ともに同じ傾向にあります。

そのため今回の2019年卒でいえば、入社2年目の2020年4月〜2021年3月の離職率が10.1%という数字になっています。これは過去33年間でいえば、2年目離職率の平均は12.86%であるため、3ポイント近く低いことがわかります。

2019年卒の10.1%は、実は過去最小の離職率である2009年卒の2年目離職率と並んで歴代2番目に低い数値になります。

このことから、コロナ禍の影響で2年目の離職率が大きく低下したことが、やはり大きな影響を与えているということがよくわかります。

コロナ禍の影響が明けてくれば、今後はどうなるかわかりません。ただし高卒に関しては、コロナ禍の影響で急激に大きく下がったというよりも、その前から下がってくる傾向はありました。

その傾向が続いている中で、さらにコロナ禍の影響があったため、再び離職率が5割に戻ることは現実的に少ないのではないかと考えられます。

最近は大学進学率が上がっており、高卒で就職する人は減少傾向にあります。

高卒入社の人はすぐ辞めるから困ると感じている方もいるかもしれません。しかし、社会全体でみると高卒で就職をして早期離職する人は、以前に比べると減ってきているということを頭に入れておいていただくといいのではないでしょうか。

まとめ

最新2022年の高卒早期離職率は35.9%でした。特に入社2年目の離職率は、2009年卒と並んで過去2番目の低さになります。

近年、高校新卒の早期離職率は低下傾向にあり、私の個人的な予想では今後もこの傾向は続くのではないかと考えています。

最近、高卒採用も1校につき1人1社応募といった従来のルールを撤廃して、少しづつ自由応募に近い形にしていこうという動きが出てきています。

こういった動きを含めて、高卒の採用や定着のトレンドはこれから注目すべきキーワードになるでしょう。