ブラック企業からホワイト企業に転職したいという声はよく耳にされるのではないでしょうか。
しかし最近では、ホワイト企業すぎても転職を希望する人が増えているのです。
ブラック企業より待遇が良いはずなのに、どうしてなのでしょうか。
この記事では、ホワイトすぎる企業の問題点、その解決策に迫ります。
本記事の要約
ホワイトすぎて辞めたいとは?
2022年12月15日の日経新聞に、「職場がホワイトすぎて辞めたい 若手、成長できず失望」という記事が掲載されました。この記事は、Yahoo!ニュースなどにも広く取り上げられて話題を集めています。
以前は、ブラック企業を辞めてホワイト企業に転職したいという事例がほとんどでした。
それが、とうとうホワイト企業になりすぎても若手社員が辞めてしまうようになり、企業としてはどうすればよいのかわからない状況になってきました。
(この記事の内容は、こちらの動画でも解説しています。)
ブラック企業の定義
ホワイト企業について考える前に、その反対になるブラック企業とはどのような企業なのか考えてみましょう。
厚生労働省は「ブラック企業」について定義していません。ただし、一般的な特徴として次の3つを挙げています。
- 労働者に対し極端な長時間労働やノルマを課す
- 賃金不払残業やパワーハラスメントが横行するなど企業全体のコンプライアンス意識が低い
- このような状況下で労働者に対し過度の選別を行う
一方、ホワイト企業はこの逆だと考えると、労働時間は適正でコンプライアンス意識は高く、過度の選別を行うわけではないため、比較的みんな平等に扱ってくれるということになります。
なぜホワイトな職場を辞めるのか?
それでは、なぜこのような良い職場を辞めてしまうのでしょうか。
カイラボでは、その理由として成長不足が挙げられるのではないかと考えています。
カイラボでは、2012年から早期離職の三大要因を提唱してきました。
三大要因とは、次の3つを指します。
- 存在承認の不足
- 貢献実感の不足
- 成長予感の不足
このどれか、もしくは複数が重なることによって、若手社員の早期離職が起きていると考えています。
ホワイト企業すぎて辞めるというのは、このうちの「成長予感の不足」です。
つまり、自分がこの職場で仕事を続けてもその先で成長できる予感がないということです。
予感というのは未来への感覚です。
過去には、上司や顧客からの指摘のおかげで成長できたという時期はあったでしょう。
しかし、そのように成長した後でこの先どうなるのかを改めて考えると、この職場では全てやりきったという気持ちになり、その結果として辞めてしまうのです。
成長予感不足というのは、この問題への大きなキーワードになっているといえます。
ホワイトすぎて辞める人は本当にいるのか?
では、ホワイト企業すぎて辞めた人は実際にどのくらいいるのでしょうか。
ジョブ総研が2022年に実施したアンケートの結果、職場がホワイトすぎて転職した経験があるという人は48.9%でした。
年代別の「ゆるすぎて転職率」
年代別でみると、次のグラフで示される結果になりました。
- 20代 65.4%
- 30代 37.0%
- 40代 66.7%
- 50代 100.0%
ただし、この統計データは全体の調査数が示されていなかったため、完全に信じがたい部分もあります。
ですが、大きな特徴として、30代ではぐっと少ないものの20代では辞める人が多いという点が挙げられます。
カイラボでインタビューしていても、成長予感不足のために辞めたいという若い方は確かに増えているように感じます。
今の30代の方が20代の時には、いわゆる存在承認不足や貢献実感不足で辞めている人が多かったのです。
もちろん当時でも成長予感不足を感じて辞める方はいましたが、最近は特に多くなっているという印象を受けます。
この結果は、冒頭に紹介した日経新聞の記事とも整合性がとれているように感じられるのです。
まとめ
今、ブラック企業でなくホワイト企業すぎても社員は辞めてしまうというのが話題になっています。
企業として、ブラック企業といわれる状況になるのは絶対にいけません。
長時間労働もいけませんし、企業のコンプライアンス意識をきちんと持ってコンプライアンスを守ってください。
しかし一方で、入社したら職場を成長する場だと考えずにゆっくり育成すれば良いのだという考えもだめだということです。
つまり今は、長時間労働をしない・させない、コンプランス意識は高くハラスメントなどもない、その上でさらに社員それぞれが成長できる場を提供していくことが求められています。
しかし、それは決して簡単なことではありません。
仕事では、ある程度業務量をこなさなければ成長していくのは難しいでしょう。しかし、残業規制など労働時間が非常に厳しくなっている現在の状況で、どのように育成していくかを考えていかなければなりません。
そのためには、育成方法や仕組みを従来のものから変えていくしかないのです。
今までと同様に、とにかく量をこなして長い時間をかけ、スキルを少しずつ伸ばしていく方法は難しくなっています。
社員を効率的に育てていくための仕組みを作っていく、そのための指導スキルを指導者が身につけていくことが重要になってくるでしょう。
会社がホワイトすぎて辞めてしまう理由は、成長予感不足です。
どれだけ成長できたかも大事ですが、企業にとってはどれだけ社員へ成長予感を与えられるかというのも重要です。
成長の予感をどこで感じるか、これはいろんな要素がありますが、一番大切なのは上司や先輩の存在です。
部下や後輩から憧れられるような上司や先輩がいる会社では、成長予感の不足は起こりにくくなります。
この会社でこのようにしていけば、ああいう風になれるというモデルになるためです。
しかし、逆に憧れられる上司や先輩がいない職場の場合、成長予感は低くなります。
この職場に後10年所属したらあんなふうになるのか、辞めてしまおうとなるためです。
そのため、この成長予感の不足を止めるためには、まずリーダーが変わっていくのが大事なのではないでしょうか。
会社がホワイトすぎて辞めるという今回の内容に関しては、若手社員だけでなく40代や50代の社員でも多くなります。
40代や50代の管理職世代において、ホワイトすぎて辞める社員が出てくる会社というのは、残った社員は緩くてもいいという会社で管理職になっているということです。
そういう会社では、当然入ってきた若手社員たちも上司や先輩に憧れない、そのため環境がゆるすぎて辞めていくという負のスパイラルに入っていくケースが少なくありません。
では、そのような会社はどのように改善していけばよいでしょうか。
それは、採用時に気をつけるのではなく、まず今いるリーダー層がどう変わっていくかが大切です。
今いるリーダー達が、この会社はぬるま湯なので心地良いと思って残っているのならそれは違うのだということを伝えていく必要があります。
さらに伝えた上で、では具体的にどうしていくべきかというところまで踏み込み、本人たちのマインドセットを変えていくスキルを伸ばしていくのが重要になってきます。
カイラボが早期離職対策の研修ということで、最近特に力を入れているのがリーダースキルのアップデートです。
次世代をひっぱるリーダーが、まず先んじて成長していく姿が、若手社員の成長予感を高めていくことにつながります。