ビジネスの基本である「報・連・相」は、社会人になってすぐに教えられるスキルです。
そのため、ビジネスマンなら誰もが知っていることでしょう。
では、部下からの「報・連・相」を受けたときに、上司はどのように対応したら良いかについてはご存知でしょうか。
上司が取るべき対応は、「おひたし」だといわれています。
この記事では、部下から報・連・相を受けた時、どのような対応をしたらよいかについて具体的に解説します。
本記事の要約
ビジネスの基本 報・連・相
ビジネスの基本といわれている「報・連・相」は、報告・連絡・相談の頭文字です。
この報・連・相は、社会人のスタートを切るタイミングで教わることがほとんどです。
多くの会社では入社後すぐに、上司や先輩へきちんと報告・連絡することや、何か困ったことがあったら相談することを教えられます。
カイラボでも、新入社員研修などで様々なワークを利用しながら、報・連・相を徹底して指導しています。
自分が仕事をしている中でも、やはり報・連・相は大事だと感じる場面は多いです。
(この記事の内容は、こちらの動画でも解説しています。)
管理職が知っておきたい おひたし
では、実際にこの報・連・相を受けた時、管理職はどのように対応すればよいのでしょうか。
それが今回のテーマである「おひたし」です。
「おひたし」とは、次の言葉の頭文字を取ったものになります。
- 怒らない(お)
- 否定しない(ひ)
- 助ける(た)
- 指示する(し)
おひたしの「お」は例えば、報告を聞いて怒らないこと。
「ひ」は、「否定しない」の頭文字です。
相談を受けた時、部下が言ってきた内容に「そうじゃない」「それはダメだ」などといきなり否定せず、一度受け入れるといったことになります。
また、「た」は「助ける」ですが、なかなか報連相をしてこない部下や、報告しても十分ではない、具体的に相談しない部下に対しては、上司の立場からひとこと言いたいこともあると思います。
しかしそういった部下にも、ただ自分で考えろというのではなく、やはり助ける、手を貸すということが必要になります。
最後の「し」は「指示する」ということです。
相談を受けた時に、アドバイスをするのも指示になります。
例えば、顧客からクレームがあったという報告の時に、クレーム対応について全て任せてしまう、自分の責任なのだから自分でなんとかさせるという態度ではいけません。
対応の仕方を指示する、まずは顧客に一緒に謝りに行くなど、今後の方向性や役割分担をしっかり指示することが大切です。
次から、この「おひたし」についてさらに具体的に解説していきます。
怒る・否定するメリットはほぼない
「おひたし」のうち、「お」と「ひ」にあたる「怒る」と「否定する」。これらは、今のビジネス環境においてメリットが非常に少ない行為です。
これらをあえて行う意味はありません。むしろ、メリットよりもデメリットの方が圧倒的に大きいでしょう。
にもかかわらず、「怒る」「否定する」人には、自分に対する反骨心でがんばってほしい、相手への親心からやっているという言い分を持っている人もいます。
しかし相手にがんばって欲しいのなら、反骨心を煽るよりもあなたにがんばってほしいという期待を素直に伝えた方が効果は高くなります。
そういう私自身も、相手を怒ることや否定することが全くないわけではありません。
人間である以上、感情が動いてしまうことはあります。しかし、それは感情を優先してしまっている状況です。
やはり、そのような状況は極力減らしていく努力が必要になります。
もし「怒る」「否定する」といったコミュニケーションも時には必要だという考えるならば、そうすることによるメリットとデメリットを見直してみてください。
果たしてメリットは大きいでしょうか。むしろ、リスクの方が大きいのではないでしょうか。
このようなことを考えた上で、原則「怒る」「否定する」はしないということを覚えておいてください。
意外と難しい「助ける」行動
おひたしの「た」は「助ける」でした。
相手を「助ける」ということは、意外と難しいものです。
部下からの「助けて下さい」を待っていると、だいたい手遅れになります。
「助けて」と言ってきた時は、もうかなり進行している状態がほとんどです。
普段からの報連相の中で、ケアした方が良い点に注目すること。そして、早めに助け舟を出すことが重要になってきます。
それには、日頃のコミュニケーションの中で変化を察するということがとても大事になります。
あとは、自分自身の経験や入社してからのジョブローテーション、1〜3年目などでぶつかりがちな壁など、全員に当てはまらなくともある程度類推できるものはあるでしょう。
そのような、ありがちな困りごとを先回りして声をかけていく必要があります。
これは、若手社員に対してだけではありません。
5年目、10年目の社員や初めて主任になる人などにも当てはまります。
立場が変わると周囲の環境や周りの見方も変わってくるため、相手の最近の動向を見て、先回りして助け舟を出すというのも重要になるでしょう。
見落としがちな「指示」の重要性
最後は、「おひたし」の「し」である「指示する」です。
「指示」については、最近見直されている一方であまり良しとしない考えの人もいます。
私自身は、指示はとても大事だと考えています。
「自分の思うようにやってみて」という管理職の言葉は、業務を全て任せるという意味になります。
実際に、業務はある程度裁量権があった方が仕事の充実度が高かったり、ストレス度は低くなるという研究結果があります。
そのため、仕事に裁量権を持つというのは大事なことです。
しかし、裁量権を持つこととやり方を教えようとしない、やったことがない業務に関して何も指示がないというのは話が別になります。
明確な指示があり、方向性や目標、ルールなどの中で達成に向けて自由に進めるのと、自分が好きなように適当に進めて良いというのは全然違うのです。
「思うようにやってみて」などという言葉は、ある程度の経験やスキルのある人に対しては有効なやり方です。
しかし、例えば新入社員に対してまず思うようにやらせるというのは単純に放置であり、放任でしかありません。
このようなやり方は、基本的にはあまり機能しないと考えてください。
業務への経験やスキルが不足しているのであれば、明確な指示が必要です。
ただし、指示はどこまで細かい方がいいのかというのは非常に難しいところです。
説明するとき、それを行う根拠もセットで説明するならば、ある程度細かくなくても構いません。
根拠が明確であれば、細かい説明を多少省いたとしても他の部分について推察ができます。
そのため、説明する時に根拠と合わせて伝えるというのは重要なことです。
また、例えば経験とスキルがあるといっても中途入社である社員に対して、業務を全て任せてしまうというのもよくやりがちです。
このような場合にも、やはり目的や目標をあらかじめ指示することは大切になります。
例えば、事業を通して目指しているところや今期の目標、NG事項や会社として大切にしている考え方といった会社の価値観などはしっかりと共有・提示しておきましょう。
このような枠組みがない中で勝手にやってもらうことになると、業務に秩序が無い状態になってしまいます。
指示出しは、「おひたし」の中でもかなり重要です。最近の管理職の悩みを聞いていると、この指示出しのところで悩んでいる人が多いように感じています。
まとめ
部下が「報・連・相」を意識するのに対して、上司は「おひたし」を意識するのが大切です。
「おひたし」の中で、できそうでできないのが「助ける」と「指示」です。
「怒らない」「否定しない」の2つについては、重要性が最近かなり叫ばれていることや、企業のコンプライアンス意識の高まりなどが理由で、かなり実践できている企業は多いようです。
それゆえ、「助ける」と「指示する」ということについては、まだ苦手とする企業は多いのではないでしょうか。
特に指示の出し方は、管理職の多くの方が課題を持たれていると思います。
指示の出し方以前にまずどのようにコミュニケーションをとっていけば良いのかなど、管理職としてのコミュニケーションにお悩みの方は、ぜひその他の記事もご参考ください。