1996年から2012年までに生まれた若い世代を指して「Z世代」と呼びます。 ある調査では、ゆるい職場に勤めたいと回答しているZ世代が全体の6割を占めたという結果になりました。 Z世代が厳しい職場ではなく、ゆるい職場を求める理由はどこにあるのでしょうか。 職場環境の改善を考える経営者や人事の方、自分のキャリア形成について悩んでいる方は、今回の記事をご参考ください。
本記事の要約
ゆるい職場希望が多い?
Z世代は、ゆるい職場を希望している人が多いという調査結果があります。
既卒者や第二新卒者の就職支援をしている、株式会社UZUZ(ウズウズ)が実施した調査結果は次のようになりました。
Q.現在「ゆるい職場」が一部で話題になっています。
あなたは「ゆるい職場」で働きたいと思いますか?
(既卒・第二新卒として就職活動中の20代男女695名へのアンケート)
出典:株式会社UZUZ(ウズウズ)20代の若者向け就職/転職活動に対する実態調査
- 働きたい 17.0%
- どちらかと言えば働きたい 41.2%
- どちらかと言えば働きたくない 37.1%
- 働きたくない 4.7%
「ゆるい職場」の定義は後ほどお話しますが、ゆるい職場で働いてみたいという人は「働きたい」「どちらかと言えば働きたい」を合わせて58.2%、およそ6割いるという結果になりました。
一方で「どちらかと言えば働きたくない」は約40%、「働きたくない」も5%いるという結果でした。つまり、Z世代の全員がゆるい職場で働きたいというわけではありませんが、それでも過半数以上の人がゆるい職場を希望していることがわかります。
(この記事の内容は、次の動画でも解説しています。)
仕事のやりがいを感じている人が少ない?
ではなぜ、ゆるい職場で働きたい人が多いのでしょうか。
理由の一つに、「仕事のやりがい」というキーワードが挙げられます。
ゆるい職場というのは、仕事のやりがいを感じにくいようなイメージがありませんか。
この「仕事のやりがい」に関しても、前述のUZUZが次のような調査をしています。
あなたは現在の仕事(または前職)で「やりがい」を感じていますか?
出典:株式会社UZUZ(ウズウズ)20代の若者向け就職/転職活動に対する実態調査
- 感じている 16.0%
- どちらかといえば感じている 29.5%
- どちらかといえば感じていない 35.6%
- 感じていない 18.8%
これを見ると、やりがいを「感じている」「どちらかといえば感じている」と回答しているのは、約45%です。
さらに「どちらかと言えば感じていない」「感じていない」と回答しているのを合わせては、約54%という結果になりました。
この結果から考えると、今の職場でやりがいを感じていない人は「どうせ働きがいがないのだったらゆるい職場で働きたい」と思っているのかもしれません。
あるいは、働きがいがあると答えた人の中でも、現在の職場がきついと感じている人もいるでしょう。回答者は20代の人なので、結婚・出産によるライフステージの変化によって今の職場がきつくなり、ゆるい職場に移りたいと思っている人も中にはいる可能性もあります。
今回のデータからはこういった事実まではわかりませんが、このような視点でデータの読み取りができます。
ゆるい職場希望が多い原因は?
では、ゆるい職場を求めている人が全体の半数を超えている原因は、一体どこにあるのでしょうか。
今回取り上げた調査は、経年変化を追ったものではありません。そのため、仮に調査を過去に行っていたらどのような結果が出たかはわからないのです。
過去にはゆるい職場を希望する人がもっと多かったかもしれませんし、あるいは厳しい職場に身を置いて20代は修行に費やしたいという人が多かったかもしれません。
少なくとも今回の調査結果では、全体の約6割の人がゆるい職場を求めているという結果なのですが、考えられる理由として次の3つがあります。
- 頑張って働いても報われない?
- ゆるい職場の方がスキルアップの時間がとれる?
- キャリアの将来像が描けていない?描きにくい?
次から、内容を詳しく見ていきましょう。
頑張って働いても報われない?
理由の1つ目に、頑張って働いても報われないと感じていることがあります。
今は長く働いても昇給しにくい、あるいは昇給しても物価が非常に上がっているため相対的に降給しているような状況になっています。
仕事自体は楽しくやりがいがあって同僚も良い人ばかりでも、「頑張っても報われないならもっとゆるく働いていたい」と思い始める可能性はあるでしょう。
ゆるい職場の方がスキルアップの時間がとれる?
2つ目に、先ほどの調査結果の自由回答で、ゆるい職場を求める理由の中に「ゆるい職場の方がスキルアップの時間がとれる」という内容がありました。
これは、私自身は思いつかなかった回答でした。
ゆるい職場には「定時で帰れる」「有給を取りやすい」というイメージがあります。
これは言い換えると、ワーク・ライフ・バランスを取りやすくなり、自分のために使える時間が多くなるということでもあります。
例えばキャリアアップしたい時、ゆるい職場に勤めていれば、自分の時間を資格の勉強にたっぷり充てることができます。
労働時間が長く厳しい職場に勤めている場合は、帰宅後は疲れ果てて勉強どころではなく、土日も出勤で勉強やダブルスクールに通う時間を取れないでしょう。
そうなれば社内でのスキルは身につくかもしれませんが、資格やTOEICのスコアといった履歴書に書けるような体外的なスキルアップは難しくなります。
そのために、ゆるい職場に在籍してスキルアップをしていきたいという考えの人もいるのです。
単純にゆるい職場を求めている=キャリア志向がないわけではないというのが、今回取り上げた調査のポイントの一つになります。
キャリアの将来像が描けていない?描きにくい?
3つ目には、キャリアの将来像が描けない、あるいは描きにくいというのがあります。
これは、社会の見通しが立ちにくく将来どうなるかわからないのが原因です。
今はVUCA時代だと言われていますが、社会変化はとても激しくなっています。
これは「頑張って働いても報われない」ということに近いかもしれませんが、今頑張って働いたところで、得られたスキルや人脈・知識などが将来本当に活きるのかはわからないのです。
誰も将来を保証してくれるわけではなく、キャリアを描くことも難しい状況で、とりあえず今はゆるく働いていく。そして「やりたいこと」や「やれること」をやっていこうという考え方もあるのではないでしょうか。
「ゆるい」 と 「厳しい」の定義は?
ここまで、あえて「ゆるい職場」と「厳しい職場」という対立的な表現をしてきましたが、それぞれの定義はどのようになるのでしょうか。
「ゆるい職場」「厳しい職場」、これらにははっきりとした定義はありません。個々の主観的な要素が非常に大きいものです。
例えば、ゆるい職場すぎて辛いという人もいれば、一般的に離職率が低く働きやすいといわれていても厳しい会社だと感じる人もいます。
対外的なイメージからすると、働き方改革などにも取り組んでいて働きやすいイメージがある会社に勤めていた人が、確かにその面は整備しているが別の面ではかなり厳しいのでそこが自分と合わなかったという話を聞くことは珍しくありません。
結局、「ゆるい」「厳しい」は主観的な要素が強いということです。
近年では、ホワイト企業大賞や健康経営銘柄など、良い会社だということを客観的に示す施策やデータが様々に出ています。
例えば、東洋経済新聞社が離職率の低い会社ランキングや働きがいのある会社ランキングなどを毎年出している、こういったデータも大事です。
一方で、客観的にいい会社や働きがいのある会社だといわれている会社が自分にとっていい会社なのか、ゆるい職場なのかというのはまた別の話です。
自分自身にとってはどういう職場がいいのか、客観的なデータと自分の感覚の両方で考えることが大切です。
今回の「Z世代にはゆるい職場を求めている人が多い」というテーマは、自分のキャリアを考える、あるいは経営者や人事の方であれば、自分の会社をどのようにしていくのかというヒントにはできます。
しかし、結局のところ働く本人がどう感じているかが大切だということです。経営者や人事の方であれば、社員にどのように感じてもらいたいのかを突き詰めて考えていくことが大事でしょう。
まとめ
既卒・第二新卒の20代ではゆるい職場希望が約60%という調査結果が出ています。
また、仕事にやりがいを感じている人は約45%です。
これは、やりがいを感じていない人がゆるい職場を求めているというようにも読み取れます。
「ゆるい」「厳しい」は働く人自身の感覚であるため、経営者や人事の方はゆるい職場が求められているからといってそれを目指す必要はありません。
この記事をご覧になっているのが働いている個人の方ならば、ゆるい職場に勤めたいと感じた時、自分が希望する要素3つを挙げるとするなら何なのかを考えてみましょう。
その中で一番大事な要素は一体何なのか、このように考えていけばキャリア選択を間違えにくくなっていくでしょう。
こういったことをヒントにして、今回のテーマを扱っていただければ幸いです。