能力主義のはずの会社で無能な管理職が多いと感じる理由 ピーターの法則

編集部

あなたは、管理職に対してこんなことを感じることはないでしょうか?

  • なんでうちの管理職は無能なんだ。こんな人がなぜ管理職になれのか?
  • 昔は優秀だったのに、管理職になってから能力のなさが露呈しはじめた。

その理由は、ピーターの法則で説明することができるのです。

この記事では、ピーターの法則について例を挙げながら紹介していきます。また、どのように対処していくべきかについても解説します。

能力主義のはずなのに管理職の能力不足が目立つ

みなさんの会社では、次のようなことを耳にしないでしょうか。

「なんであの人が管理職なの?コネ?」

「営業としては優秀だけど、管理職としては最悪。」

「管理職になってからパッとしないな、あの人。」

このようなことは、実は様々なところでよく聞く話なのです。

能力主義を掲げている会社でも、あるいは完全な能力主義ではなくとも、それなりに成果を残した人が出世をしていくはずです。

では、なぜこのような事態が起きるのでしょうか。

(この記事の内容は、こちらの動画でも解説しています。)

ピーターの法則とは?

会社にはそれぞれ評価制度があり、基本的には各々が評価されて昇進しているはずです。

それなのに、なぜあの人が管理職になっているのかということを疑問にもたれる状況がよくあります。

このことは、ピーターの法則で説明できるのです。

ピーターの法則とは、

「能力主義の組織では人は無能になるレベルまで昇進する。そのため、いずれ組織は無能な人の集団になる」

ということを提唱した法則です。

ピーターの法則図解

ピーターの法則について、具体的に図を用いて説明します。

能力主義の場合、一般の社員として結果を残した人が主任に昇格します。さらに、主任として成果を残した人が係長に昇格、係長として評価を認められた人が課長に昇格、課長から部長、部長から本部長や執行役員というように成果や評価とともに昇格していきます。

ただし、全員が出世できるわけではありません。

多くの社員が主任にはなれても、係長にはなれる人数が少し減ります。さらにその中で課長になれるのは、働いている人の半分ぐらいにすぎないというデータもあります。

一体なぜ、全員が昇格できないのでしょうか。

それは、一般の社員として成果を残した人が主任になるものの、さらに主任としての能力がなければ昇進できません。

降格人事を行うのはなかなか難しいため、一つ前の立場で仕事ができた人は昇進するものの、今の立場では仕事ができない人がそこで頭打ちになるという現象が起きます。

これが、いわゆるピーターの法則です。人はその役職で能力が発揮できていない、無能だといわれる状態までは昇進し続けます。

しかし結果的には、係長としては優秀だったものの課長としてはあまり優秀ではないという人が、その立場で残るというわけです。

創造的無能が解決策?

では、この問題をどうやって解決すればよいのでしょうか。この解決策として、ピーターの法則の提唱者は創造的無能を指摘しています。

創造的無能とは、自分が持っていない能力やできない領域をあえてそのままにし、まるで無能かのように振る舞うことをいいます。

例えると、本来は係長として優秀な人が、あたかも係長としての能力がないかのように自分をカムフラージュすることで、課長に昇進せずそのまま係長として仕事をこなしている状態です。

このように、課長になったときの無能を、あえて現時点で創造するというのが解決策だといわれています。

ただしこの状態は、新しいポジションに就いてさらに自分自身に挑戦していくことや、自分の新しい能力を開発する努力をしていないということでもあります。

今の環境や自分の能力において、発揮できる状況であえて隠すのはかまいません。しかし、環境が変化して新しいスキルや能力が必要となった時、創造的無能でそのまま対応できるかというと、そこには疑問が残ります。

例えば転職を考えた時に、ふだんから創造的無能を装っていると、周囲は自分を有能だとは見てくれません。そうすると、良い転職先を確保したり良い就業条件を得るのは難しくなるかもしれません。

そのため、創造的無能は多少のリスクが伴うものだともいえるでしょう。

組織ができること

創造的無能は、個人の働き方としてどう対応していくのかという理論です。では、組織の観点から考えるとすると、どのような対応ができるのでしょうか。

組織の観点から見た時、無能な管理職を生まないためにどうすればよいかの参考になるであろう言葉があります。

功ある者には禄を与えよ、

徳ある者には地位を与えよ

いわゆる報酬は、ここでいえば禄の部分にあたります。また、地位とは昇格を指します。

つまり、結果を残した人には報酬を与えなさい、また徳がある者の地位を昇格させなさいという意味です。

結果を残した者に報酬を与えても、地位を与えて良いとは限りません。地位を与えて良いのは、徳がある者だけだということですね。

そうなると、成績が良いことは昇格する条件の1つではあるものの、それだけでなく必要な能力要件をちゃんと満たしていることが大切になります。

例えば、いわゆる人徳を評価項目に入れたり、制度方法として昇格に必要な訓練を受ける、必要な試験に合格するということを取り入れるのがよいのではないかという意見も多くみられます。

ただ、これは現実的に難しいところもあります。

プレーヤーとしてかなり成績を残している人を昇格させずに、プレイヤーとしての能力は低いけれど必要な訓練を修了している、人徳がある人の方を昇格させるのを続けられるかというと、現実的には難しいでしょう。

例えば、人事異動で誰を昇格させるか決める場合、成績だけでなく人徳を考慮して成績3位の人や4位の人を昇進させるというのはある年度だけならありえます。

ただし、その時に成績1位の人がその後もずっと1位を取り続けているのに、いつまでもそのまま昇格させないというのが組織としてできるかというと、現実的に難しい部分があります。

ピーターの法則に対しての対応策は、個人・組織の両方の観点において明確な答えはまだ出ていません。

ただ能力のない管理職が多いと文句を言うだけではなく、このような観点で考えてみると確かにそうなってしまうかもしれないという視点を持つことは重要です。

逆に、自分が昇格する立場であれば、どのようにこれから行動していくべきかを考えていく必要があります。

また、プレーヤーとして成果を残してきたのに、管理職としてはうまくいかないと悩んでいる方には、自分の能力発揮の仕方が昔と今で求められていることがどう違うのかを考えるヒントになるでしょう。

まとめ

今回は、組織論の一環としてピーターの法則を紹介しました。

人は自分の能力の限界まで昇進し続けるというのが、ピーターの法則です。さらに、結果的に組織は無能な人だらけになってしまうということを提唱しています。

個人ができるピーターの法則の回避策としては、創造的無能があります。一方、組織の回避策としては、昇給と昇格を分けることです。つまり、給料が上がるのと職位が上がるのを別で考えるということです。

企業によっては、昇給や昇進に関してグレードの制度を取り入れている所もあります。

A1からA2、A3、A4と昇給に関してグレードが上がっていく一方で、このグレードは昇格にも対応しています。

例えば、A1からA3以上の人が課長になりますが、A3で課長もいる一方で係長もいるというように設定しているケースもあります。

近年、上司と部下の関係は、上下関係からリーダーシップをどのように発揮していくかという考え方へ変化しつつあります。

つまり、上司だから偉い、またはその命令は絶対であるという感覚はなくなってきているのです。

これからは、上司との関わり方やリーダーシップの在り方という中で、ピーターの法則の使われ方や実際の現場での表出の仕方は変わってくるかもしれません。

ピーターの法則がよく知られているのは、多くの人にとって納得感が得られるからでしょう。

納得感があるからこそ、これだけ有名であらゆる所で引用されているのです。

今回はピーターの法則をご紹介しました。よりよい組織づくりについて考えたい方は、ぜひ参考にしてください。