原則出社に回帰する企業が増加中
最近、リモートワークから原則出社に回帰する企業が増加しています。
例として、国内外企業の出社に対する対応を紹介します。
- Amazon 原則週3日以上の出社
- Google 週3日以上の出社
- 本田技研工業 在宅勤務制度廃止
- GMOインターネット 週2日在宅勤務推奨廃止
国内の企業でいえば、ホンダは在宅勤務制度の廃止の動きが、他の企業と比べても早かったようです。
ホンダは製造業なので、工場ではもともとリモートワークはなく、出社をしていたはずです。しかし事務など在宅でできる仕事に関しても、在宅勤務制度を廃止しています。
本来、現場での仕事に価値を置くホンダの社風によるためでしょう。
一方、GMOインターネットはIT系会社ですが、週2日の在宅勤務を推奨しないという方向へ変わっています。
(この記事の内容は次の動画でも解説しています。)
リモート・在宅経験者のほとんどが継続可能
企業が原則出社へ回帰する一方で、働く側である従業員のリモート・在宅ワークの希望はどのようになっているのでしょうか。
リモートワーク経験者を対象に、今後もリモートワークを継続したいかどうかを調べた調査があります。
Q.今後も可能ならテレワークを継続したいと考えていますか?
出典:アントプロダクション株式会社「コロナ禍の影響とテレワーク事情」2023
- 継続したい 67.7%
- どちらかといえばしたい 21.8%
- どちらかといえばしたくない7.0%
- 継続したくない 3.5%
「リモートワークを継続したい」と回答した人は約90%と、ほとんどの人が継続希望であることがわかります。
つまり、企業側は出社へと回帰しているけれども、個人ではそのままリモートを希望しているという乖離が起きているのです。
この意見の乖離が、企業側・社員側の両方にとって悩みの種になっています。
リモート・在宅ワークの制度は人材確保に有利?
では、リモートや在宅ワークの制度を整えることは、企業の人材確保に有利になるのでしょうか。
出社が原則としている会社に対して批判的な意見には、いずれリモートワークが当たり前になってきたらこのような会社は淘汰されていく。人材を採用できなくなっていくのではという意見があります。
逆にリモートできる会社は、仕事の生産性がリモートでは上がらないため、一時的に人気が取れたとしてもビジネスとして強くなれない。結果的に、そういう会社は終わっていくという意見もあります。
どちらが正解なのかは、わかりません。未来がどのようになっていくか予測できないためです。
ただ、アメリカのIT企業として先ほど例を上げたGoogleやAmazonは、原則出社に回帰しています。その他、X(Twitter)社などもそうです。
しかし、GoogleやAmazonなどはリモートワークの可否にかかわらず、もともと人気がある企業です。
働く側にとっては、確かにリモートワークや在宅のニーズが高い状況にあります。とはいえ、Googleに転職したい人はGoogleがリモートワークできるという理由で転職したいわけではないでしょう。
つまり、人気企業とそうではない企業をリモートワークの可否で同列に語るのは、無理がある話だということです。
もともと人気のある企業は、働き手からのリモート・在宅ワークのニーズに応える必要は特にありません。なぜなら、リモート・在宅ワークができるできないに関わらず需要があるからです。
一方で、例えば地方中小企業や知名度の低い会社では、リモートや在宅ワークで人材確保の活路を見出すのは有効な方法です。
リモートでは、当然できることが限られます。
例えば、飲食店で店舗型のビジネスの場合、従業員全員がリモートワークできるかといえば、現実的ではありません。
このようにリモートワークができる・できない職種や業種、状況などはあるものの、もし可能ならばリモートや在宅ワークによって人材を確保するのは、かなり効果的な方法です。
リモートのコミュニケーション問題
しかし、リモートにはコミュニケーションの問題が避けて通れません。
リモート勤務といえば、コミュニケーションの悩みがつきものだというイメージがあります。とはいえ、これには懐疑的な点もあります。
リモートワークが理由でコミュニケーションが本当にうまくいかないという一方で、もともと社内でのコミュニケーションがうまくいっておらず、リモートワークで問題が顕在化する場合もあるでしょう。
リモートで生じたコミュニケーション問題のほとんどは、社内コミュニケーションにもともと問題があった上で、それがリモートで顕在化しただけというパターンが多いと考えられます。
判断基準の例
この問題は、仕事の判断基準や行動規範を社内に浸透させられれば、ある程度回避できます。
カイラボを例に挙げると、弊社では毎年学生のインターンシップを完全オンラインで受け入れています。
受け入れたインターンの学生は、一度も対面では会ったことが無い方がほとんどです。それではどのようにコミュニケーションを取っているかというと、事前にカイラボの判断基準や行動規範を明確にしています。
示した範囲内では自由にやってもらっていいが、この行為はアウトだという事例をしっかり伝えているのです。
これをやるだけでも、かなり行動は改善される上、コミュニケーションの頻度も増えます。
事例の伝え方を具体的に挙げると、カイラボの場合は次に示すように、サッカーに例えてレッドカード・イエローカード・グリーンカード・ファールと分類しています。
レッドカード
- 無断欠勤
- 嘘をつく
- 情報を隠す
イエローカード
- わかったふりをする
- わからないことを聞かない
- 時間を守らない
- 発言しない
グリーンカード
- わかるまで徹底的に聞く
- 行動しながら考える
- 新しいことに挑戦する
- 周囲への情報共有
ファール
- 目的を意識しない行動
- 考えるだけで行動しない
- 報連相の不足
- チャレンジしない
例えば、業務について分かったふりをする、わからないことを聞かなければ「イエローカード」です。
リモートでコミュニケーションをとる関係上、朝礼でこの行動基準を示しています。
朝礼でその日のタスク確認をして昼まで業務をお願いするとなると、昼休み明けに1回ミーティングをするか、どこかのタイミングで業務進捗の報告を一度してもらいます。
しかし、場合によっては朝礼をした後から終礼まで、何もコミュニケーションを取れずに7〜8時間ほど空いてしまうこともあるのです。
その時に、実は業務内容をよくわかっていなかった、あるいは勘違いして捉えていると、その日は本来とは全く違う作業をやっていたということも起こります。
そうすると、その1日はまったく無駄になってしまいます。これはお互いに、ものすごくもったいないことです。このような事態を防止するために、上記のような行動規範を示しています。
それも一度提示して終わりではなく何度も示した上で、終礼の時に一日の行動の中でイエローカードにあたることはなかったか、逆にグリーンカードににあたる点をほめるといったことを行っています。
これを2・3回繰り返すと、だいたい2日目ぐらいにはインターンの学生から質問がかなり出るようになります。
このような状況になるには、最初にちゃんと行動規範を明文化して何度も伝え、この場ではどうすることが適切か、やらなければ後で大変になる、評価されないのだというのをしっかり伝えることが重要です。
このように、行動規範や判断基準を事前に社員へ伝えておくことで、オンラインでのコミュニケーション問題は一定レベルまで解決できます。
とはいえ、オンラインだけでは言葉や雰囲気のニュアンスが伝わりにくいなど、やはり問題は残ります。
そのため、深い議論をするなどの際には対面の方がいいと思いますが、日常のコミュニケーションならば、オンラインでも多くのことができます。
リモートは悪で出社は善?
原則出社を求める意見の中には、リモートは悪で出社は善であるという考えもあります。
確かにリモート環境ではコミュニケーションの問題が頻出しますが、全員出社の環境と同じようにリモートをしようとすれば、当然問題は起こります。
リモートでは、その方法にあったコミュニケーションをとる必要があります。
そのためには、リモートでのコミュニケーションに対する社員全員の意識や、スキルを変革しなければなりません。
例えば、チャットツールで内容を確認した時に、スタンプを送れるでしょうか。
あるいは、ZOOMなどで会議をする時に、画面共有の文字が小さすぎることはないでしょうか。
今までのように、紙で印刷する前提の資料をPowerPointで画面共有しても、スマホなどで会議に参加している人にとっては見えづらいものです。
こういったところから全員で意識や今までの方法を変えていけば、リモートでの問題は改善していきます。
ただリアルでのコミュニケーションの延長をオンラインでやろうとすると、大方失敗しています。
オンラインでのリモート・在宅ワークに関しては、今後社会的にどのような流れになっていくかわかりません。しかし、もしも社内にリモートワークを導入するならば、このような注意点を覚えておいてください。
まとめ
国内外を問わず、原則出社の流れが大手企業を中心に加速しています。
一方で、働く側はできればリモートや在宅を継続したいという希望が多く、企業と働き手の目指したい姿が乖離していると言えます。
だからこそ、大企業や人気のある企業が原則出社に戻すのならばそれも良いでしょう。
大手企業がこういう傾向になると、人手不足の会社では逆にチャンスになります。
リモート在宅可能、出社週1回でOKという条件や、地方在住で月1回出社する時は交通費支給という条件によって、人材を確保できる可能性が出てきます。
つまり人手不足の中小企業や地方企業こそ、リモートや在宅ワークは人材確保のための生き残り戦略になり得るのです。
しかし中小企業や地方企業は、ITリテラシーの問題が起こりがちです。つまり、リモートに環境が追いつけないという状況になりがちではあるのですが、この環境整備さえしっかりすれば、リモートには人材確保へのチャンスが多く秘められています。
カイラボでも、実際に地方在住の方にメンバーとして入っていただいており、とても活躍してもらっています。
中小企業や地方企業で人手不足に悩んでいるという方は、リモート・在宅ワークに活路を見出せるのでははいでしょうか。
リモート・在宅ワークでの採用や人材教育の方法などは、カイラボでも支援しております。ぜひ一度お問い合わせください。
リモートワークやこれからの働き方について、社会の動きがどうなっていくのか気になっている方は非常に多いでしょう。
現状では、企業と個人の考え方は異なっています。
人気企業や大手企業については、リモートの可否に関わらず採用については問題ありません。
一方で中小企業こそ、リモートの働き方に人材確保のチャンスを見出せるはずです。