私たちカイラボでは、3年以内の離職(早期離職)の対策を専門に行っています。今回は3年以内の離職ではなく、新入社員の離職(1年以内の離職)にフォーカスして、辞める原因や対策についてお伝えしていきます。
本記事の要約
入社1年以内の離職はどのくらいか?
まず、入社1年以内の離職率を確認しておきましょう。最新のデータでは、新入社員一年目の離職率は「11.9%」となっています。
例年のデータを見ても入社一年目の離職率は10%〜12%を前後しており、入社1年以内の離職率はおおよそ11%前後というのが、統計的なデータです。
ちなみに、3年以内の離職率は2019年に発表されたもので32.0%となっています。
なお、3年以内の離職率は毎年秋に厚生労働省が発表しています。
・2019年秋・厚生労働省発表の早期離職率最新データとデータを見る際の5つのポイント
新入社員が直面する5つリアリティショック
新入社員一年目の離職率が10%~12%ほどとわかったところで、気になるのが「なぜ辞めるのか」だと思います。入社一年以内で辞める大きな原因はイメージと現実との乖離によるリアリティショックです。
新入社員の方は、企業説明会を通じて話を聞いたり、社長や人事の方との面談を通じて、「この会社は、こういう会社かなぁ。社会人ってこうあるべきかなぁ」という何らかのイメージや理想をもって入社してきます。
しかし、入社後「実際に思っていたことと、現実が違った」ということを感じて辞めてしまうのです。こうした現実とイメージのギャップが「リアリティショック」です。
今回は、この「リアリティショック」による離職をテーマにお伝えしていきますが、まずはどういった種類があるのか、をみていきましょう。
私たちが考える「新入社員が直面する5つリアリティショック」は以下の通りです。
- 人間関係のショック
- 業務内容のショック
- 仕組み、制度のショック
- 組織風土のショック
- 意外と適当なショック
順に、解説していきます。
1)人間関係のショック
人間関係のショックでの1年以内の離職とは、
・先輩上司とうまく人間関係が築けなかった
・同僚にロールモデルとなる人がいなかった
などが主な例として挙げられますが、場合によっては同期と人間関係がうまくいかずに離職する方もいます。
学生時代自分と同年代との付き合いが多いですが、会社に入ると10才年上の先輩だったり、自分と30才近く離れている人とも仕事を一緒にすることになり、人間関係の幅は大きく異なります。
そうした中で自分との価値観や考え方の違いを感じて、離職してしまう可能性があります。こうしたケースが「人間関係のショック」が原因となった新入社員の離職です。
ロールモデルがいなかったというのは、カイラボが提唱する「成長予感」の不足とも言えます。成長予感についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
2)業務内容のショック
2つ目は、「業務関係のショック」です。これは、「やってみたら思っていた仕事内容と違った」というケースです。
例えば、営業の話ですが
「既存のお客様に対するルート営業がメインだと伝えられていたが、入社したら新規営業ばかりやらされた」
といった業務内容が聞いていたことと違うといったことが挙げられます。
また、
「マーケィングの部署に配属され、クライアントに提案したりかっこいい仕事ができると思ったけど、データ分析がメインでひたすらExcelと向き合う仕事だった」
といったイメージしていた業務内容と現実の仕事が違ったといった例もよく耳にします。
こうした
・業務内容が聞いていたことと違った
・イメージしていた仕事内容と違った
というケースが「業務関係のショック」です。
3)仕組み、制度のショック
3つ目は、「仕組み、制度のショック」が挙げられます。
大学生であれば会社説明会で、様々な会社の話を聞いていく中で、福利厚生や育児休暇などのさまざまな仕組みや制度を知っていくと思います。そうした中で、自分が入社したら使ってみたいと思う制度を考え、入ってくる方もいます。
仕組み・制度のショックというのは、「入社した会社に当然あるはずだと思っていた制度や仕組みがなかった」というものです。または、制度や仕組み自体はあるのですが、使っている人がほとんどいないというケースも同じです。
「男性の育児休暇」を例に出すと
・男性の育児休暇の制度はあるが、使っている人はほとんどいない
・育児休暇を使ったら出世はできないような雰囲気がある
などです。
こうした仕組みや制度に関する会社の現状とのギャップが「仕組み、制度のショック」です。
4)組織風土のショック
4つ目が「組織風土のショック」です。
たとえば、新入社員の方が
・経営者の方に憧れて入社した
・人事の方がとても魅力的だった
・会社のミッションやビジョンに共感した
といった組織風土に共感して入社したとします。当然、新入社員の方としては、自分が共感したビジョンや社内文化が職場に浸透し、社員が同じ方向を向いて働いていると思って入社してきます。
しかし、いざ働いてみたときに、現場レベルでは違っており、そこにショックを感じたという話をよく耳にします。
私たちが早期離職社の方々へ行っているインタビューでも
「自分の周りにいる上司や同僚はビジョンに共感しているわけではなく、給与面や上場後のストックオプションをモチベーションの源泉として働いていた。」
といった声もありました。
こうした自分がイメージしていた組織風土とは違っていたと感じるのが「組織風土のショック」です。
5)意外と適当なショック
5つ目は、「意外と適当なショック」です。
学生からみると、社会人というのは「しっかりしている、ビジネスマナーを理解している」といったイメージをもっている方が多く、また研修時にビジネスマナーについては厳しく指導されたりするので、なおさら「自分もしっかりしないと」という強く意識を持っています。
しかし、現場に出て先輩上司と接してみると、「意外と適当だな」という印象をもたれる新入社員の方がいます。ビジネスマナーができていなかったり、社会人としてのモラルが低い先輩上司を目の当たりにしたときに
・もっとしっかりしている会社にいきたい
・適当な環境には身を置きたくないな
と思い、離職するケースがあります。
また、「自分には厳しくマナーやモラルを求めるのに、先輩たちは全然守ってない」という理不尽さを感じて辞めてしまったということも、インタビューなどを通じて耳にします。
周囲の人たちの関わり方でリアリティショックは減らせる
ではリアリティショックによる新入社員の1年以内の離職を防ぐには、どのような対策や意識づけが必要なのでしょうか?
私たちは「周囲の人たちの関わり方でリアリティショックは減らせる」と考えています。
どのようにして周囲が関わっていけば良いのか、具体的には
・背景や目的を伝えるクセをつける
・全員で人材育成をしている意識をもつ
・役割の上下と人間性の上下を混同しない
の3つを意識して関わってみてください。それぞれの内容を簡単にご紹介します。
1)背景や目的を伝えるクセをつける
まず、一つ目は「背景や目的を伝えるクセをつける」ということです。
何かをお願いするときやその制度が使える・使えないなどを伝えるときに、ただ指示や事実だけを伝えるのではなく
・なぜ、その仕事をお願いするのか
・なぜ、その行動はNGなのか
・なぜ、その制度が使えないのか
といった「背景や目的」をきちんと相手に伝えてあげてください。そうすることで、納得感が得られ、業務内容などのリアリティショックを和らげることができます。
2)全員で人材育成をしている意識をもつ
新入社員に関わる全員で人材育成をしている意識をもつことも非常に重要です。
先ほどお伝えした「人間関係のショック」とも関わってきますが、新入社員で辞める方の中にはOJT担当者と相性が合わなかったというケースもあります。
人間ですから担当者と合う合わないがあるのは仕方のない部分もあります。もしも新入社員とOJT担当者の相性が合わなかったとしても職場の全員で新入社員を育てるという意識を持っていると、
・OJT担当者は苦手だけど、この先輩とは仲がよい
・OJT担当者には本音は言えないけど、この上司なら話せる
というOJT担当者以外の方の人間関係が生まれます。OJT担当者以外とも人間関係がつくれていれば、新入社員が頼る先を増やすことができます。頼る先を増やせれば、人間関係のリアリティショックによる離職者を減らすことができると私たちは考えます。
3)役割の上下と人間性の上下を混同しない
最後に「役割の上下と人間性の上下を混同しない」ことが重要です。
新入社員が上司や先輩から
・「お前はそんなんだからダメなんだ!!」
・「それじゃ、社会人としても人間としても通用しない」
といった人間性を否定されるような指導をされたという話しはインタビューを通じてよく耳にします。
上司と部下はあくまで役割の上下関係であって、人間的な優劣を決めるものではありませんし、上司や先輩の方は役割として指示命令を出しているのであって、人間的に後輩や新入社員より上ではないのです。ですから、新入社員への指導に人間性の上下を持ち込んで相手の人間性を否定するような発言はあってはなりません。
私たちが理想とする上司と部下の関係性は、役割の上下と人間性の上下を混同せず、人として対等にコミュニケーションをとれる状態です。
人として対応にコミュニケーションをとることで、自然と「目的や背景を伝える習慣」も出てくると思います。なにより新入社員との良い人間関係が生まれ早期離職を防ぐことにも繋がると考えています。
リアリティショックを軽減すればいまいる社員の幸福にもつながる
以上、
・背景や目的を伝えるクセをつける
・全員で人材育成をしている意識をもつ
・役割の上下と人間性の上下を混同しない
という3つの点からリアリティショックを減らすための周囲の人の関わり方を解説してきました。
私たちカイラボは、早期離職を改善することは企業だけでなく、働く個人の幸せにも寄与できると考えています。この記事がみなさんの早期離職対策実践の参考となり、企業も個人も幸せになるきかっけとなれば嬉しい限りです。