株式会社カイラボでは企業の人材育成支援として様々な研修をご提供しています。

本レポートでは2024年9月18日に富士通Japanソリューションズ東京株式会社様にご提供した「ファシリテーション研修」の様子をご紹介します。

本研修は「社員一人ひとりのファシリテーション力向上」を目的としています。ファシリテーションの基礎知識を学びながら、グループワーク毎にファシリテーターを持ち回りすることにより、ファシリテーション経験を何度も積み重ねる実践重視が特徴の研修です。

また今回の研修では、TAC株式会社様と共に密に連携をとりながら、お客様の課題抽出から解決の方向性決めを共同して行いました。お客さまの課題に沿ったオーダーメイド型の研修をご提供しております。

研修概要

研修時間  :9時~17時(昼休憩1時間含む)
実施方法  :対面形式
受講人数  :10名
受講対象者 :手上げ式

研修内容目次

1. ファシリテーターの基本スキル
2. 本音を引き出す問いかけ・働きかけ
3. 情報の可視化・構造化のコツ
4. 合意形成のコツ
5. 実践演習
6. まとめ・振り返り

ここからはパート毎に研修の様子をお伝えします。

1.ファシリテーターの基本スキル

リーダーとリーダーシップの違いは?/ファシリテーターとは?

自己紹介とアイスブレイクが終わり、場が温まったところで、講師から受講者のみなさんへ問いかけました。 「皆さんは“リーダー”と“リーダーシップ”の違いをどう説明しますか?」

受講者の方からそれぞれの意見を聞いたうえで、カイラボとしての定義をご紹介しています。カイラボでは“リーダー”とは「チームの目的達成のためにメンバーを率いる役割」と定義しています。

そして“リーダーシップ”の定義は「チームの目的達成のために、周囲にいい影響を与える発言や行動」としています。職場でも、今日の研修でも、一人ひとりにリーダーシップを発揮してもらいたい。ということを講師から伝えられ、いよいよ本日のテーマである“ファシリテーション”に入りました。

ファシリテーターとは、ファシリテーションを行う役割を担う人のことを指します。

またファシリテーターの役割とは、会議・商談など意見交換がされる場において、受講者の方の発言を促し、話をまとめることでより良いゴール(一般的には合意形成)に導く役割です。

主に以下の4つがファシリテーターの役割とされています。

① 場のデザイン
② 関係構築(対受講者の方&受講者の方間)
③ 情報の可視化と構造化
④ 合意形成

カイラボの提供するファシリテーション力アップ研修では、特に③情報の可視化と構造化④合意形成 に焦点をあて、参加型ワーク中心の研修を進めていきます。

また、ファシリテーターは会議や商談の場において、合意形成に導く責任が伴う点が会議の司会進行役とは異なります

場のデザインにつかえるOARR

ファシリテーターの役割を理解した後は、会議を効率的に行うためのフレームワーク「OARR(オール)」のご紹介です。

Outcome (会議の目的、ゴール)
Agenda (会議の進行スケジュール)
Role (受講者の方の役割分担)
Rule (会議進行のルールや約束ごと)

4つのポイントの頭文字をとってOARRと呼ばれています。各自に直近の会議、打合せなどを思い出して「OARR」のフレームワークにあてはめて整理していただきました。

ルールや約束事を決めている方は少ないものの「普段から特別意識しているわけではないですが、傾聴姿勢を示す、否定的な発言は控える等、自分の中での会議のルールは作っています。」という意見もありました。

2.本音を引き出す問いかけ・働きかけ

人と人とのコミュニケーションでは信頼関係が重要です。このパートは、信頼関係構築のために、相手が安心して本音で話せる状態をつくるための問いかけや・働きかけの方法を知ることが目的です。

実際のワークの内容をいくつかご紹介します。

【ワーク】石になって聞く

このワークでは、2人1組で話し手と聞き手に分かれ、それぞれ1分間「自分の好きなこと」について話します。ただし、聞き手の方は“石になったつもり”で聞くことが条件です。うなずき、相槌を含む反応はNGとしています。

ワーク中は、話し手が無反応な聞き手に一方的に語りかけるという「違和感のある場面」でしたが、会場は非常に盛り上がっていました。

受講者の方は、「全く反応がないから1人で喋っていて寂しくなった。」と答える方もいれば、「一生懸命話し続ける人を無視し続けるのは心苦しいが、自分の好きな事を永遠と話し続けられるのは楽しかった。」という方もいました。

オンライン会議で画面、音声を共にオフにすることは、「石になって聞く」と同じ状況といえるかもしれません。

【ワーク】問いかけの語彙力を増やす

このワークでは、シミュレーションを通じて問いかけの語彙力(パターン)を増やすことが目的です。どうすれば田中さんの意見を引き出せるのかを、グループごとに考えていただきました。

(ワークシートの内容を一部ご紹介)

「中途入社して2か月の田中さんは会議であまり発言しません。業務指示に対しては正確に仕事をしてくれますが、会社としては経験豊富な即戦力人材として採用したので、どんどん意見を言ってほしいと思っています。

【田中さんの情報】
競合の大手グループ会社から転職してきた32歳。前職は深夜残業も多く、家族との時間を大切にしたいという理由で転職してきたらしい。エンジニアとしての知識・スキルは豊富。日常のコミュニケーションでは気さくに話すが、会議での発言は非常に少ない。」

実際に受講者の方から挙げられた意見の一部をご紹介します。

  • 意見を引き出すためには、経験の有無等を聞くと良いのでは。その後理由を聞き、話を展開すると発言しやすいのではないか。
  • 少人数の会議であれば1対1の状況などをつくり、話さざるを得ない状況を提供するのが大事なのでは。
  • 田中さんはどう思いますか?等と名前で指名したらよいと思う。
  • 若手の方どう思いますか?または中途の方どう思いますか?等グループ分けして聞くことで、意見を引き出しやすいのでは。
  • 〇〇案に対して、田中さんはどう思いますか?など相手への期待感を込めて聞く。頼っていることを伝える。

状況や個人にあわせて使い分けが必要な為、問いかけには正解はありません。大切なのは下記図が示す問いかけ力です。研修では、問いかけ力を高めるための方法についてもお伝えしています。

研修前半を受講後の感想

このパートで午前の部が終了です。午前中の内容を終えての受講者の声をご紹介します。

  • 現状、職場でもできていない人が多い気がする。リーダークラスの方や管理者にも研修を受けてもらった方が良いのでは?と感じた。
  • ファシリテーターはみんなを引っ張らなければいけない立場だと思っていたが、そうではなく一人ひとりが心がけるべきだと感じた。
  • 以前は漠然とした議論が多かったが、今回は事実に基づいた具体的な議論ができた。
  • 他のマネージャーやリーダーもこの研修を受ければ、ファシリテーターに対する見方が変わるのではないか?チームに持ち帰って、受講を促してみようと思った。
  • プロジェクトだけだと他の人と関わるのが難しいが、色々なメンバーと関われてよかった。

3.情報の可視化・構造化のコツ(ワーク)

研修後半では、ファシリテーターの4つの役割のうち③情報の可視化と構造化④合意形成について前半のポイントを抑えながらさらに深くワークで実践していきます。

ファシリテーターには問題解決能力が求められます。では、“問題”とは何を指すのでしょうか?

一般的に問題とは「あるべき姿と現状とのギャップ」と言われます。(カイラボでは敢えて「あるべき姿」ではなく「ありたい姿」という言葉をつかっています。)

研修現場では問題解決のための問題の可視化・構造化に役立つ考え方としていくつか挙げていますが、本レポートではロジックツリーを用いたワークをご紹介します。

【ワーク】原因と結果の分類

受講者の方には脱サラしてラーメン屋を開いた設定で、赤字解消の方法を考えていただきました。まずはじめに現状整理のためにロジックツリーを作成してもらいます

(ワークシートの一部をご紹介)

受講者の方はグループごと分かれてホワイトボードを活用し、ロジックツリー作成に取り組みます。

費用と集客の問題に分けられるのでは?
「出費が多く費用が多いのに売上が少ないから回転数が原因だろう。

など、様々な意見が飛び交いました。

今回はみなさん苦戦しながらもロジックツリーを書いていました。他社の研修だと、ロジックツリーを少し書いたら解決策を考えることに必死になってしまうチームも見受けられます。解決策を考える前にまずは事実情報を整理することが非常に重要です。

研修の中ではロジックツリーをはじめ、様々なフレームワークをご紹介します。フレームワークは情報を整理する時に非常に有効です。また、現状の情報を整理する際には、対策は考えないことが基本で、現状整理と対策のフェーズを分けることが大切です。

4.合意形成のコツ

現状を整理した次は解決策の立案と決定です。組織で対策を考える時には、様々な立場のメンバーがいるため合意形成が非常に重要です。

また、昨今ではオンラインミーティングの会社も増えています。今回のお客様もITの企業であり、オンラインミーティングが多いため、『オンラインでの合意形成』というカリキュラムを追加しました。

【ワーク】オンラインでの合意形成 疑似体験

オンライン状態を疑似体験してもらうため、受講者に背中合わせに座っていただき、顔が見えない状態で合意形成を行っていただきました。背中合わせになると、緊張が緩むのか、リラックスした姿勢を取る方も見受けられました。

背中合わせ状態にすることで、オンライン会議におけるカメラオフの状態を疑似的につくりあげます。カメラをオフにするとリラックスできる方がいることも、皆さんの様子を見て納得しました。

本パートの冒頭ではまず、合意形成に必要なプロセスを確認します。

1.認識の共有(共通言語化)
2.各自のバイアスに気づく、捨てる
3.対話を通じた解決策の創出
4.具体案への落とし込み

これらを意識し、オンライン上での合意形成を疑似体験するワークを行いました。テーマは「4つの研修に優先順位をつける」とし、4つの社内研修内容の候補に優先順位をつけてもらいました。

ワークを行った受講者の方の実際の声をご紹介します。

「背中合わせだと表情がわからない為、相手がどういう気持ちで言っているかもわからない。この発言は大丈夫か?と心配になる。」
「声だけの議論はやりにくかった。あえて相槌を大きめに打ち共感を意識した。

次に、背中合わせではなく、対面合意形成を行っていただきました。背中合わせの場合と比較すると笑い声が多く聞かれる場面が増えていました。また、興味深いことに、議論の結果が背中合わせの場合とは全く逆の結論に至ったチームもありました

今回のワークでは、顔を見ずに合意形成を図る難しさを体感していただきました。コロナウイルスの影響で、オンラインコミュニケーションが身近なものとなりましたが、カメラをオフにすると相手の表情が見えず、相手が何を考えているのかが分かりづらくなります

特に、新入社員や中途採用で経験の浅い方にとっては、発言しづらい状況が生まれがちです。そのため、オンライン上での議論では、発言者が限られてしまうことが少なくありません。

こうした状況を踏まえ、オンラインコミュニケーションにおいては「感情をどう伝えるか」が非常に重要です。感情を伝える手段として、カイラボではカメラをオンにして「顔を見せた」状態でのコミュニケーションを推奨しています

さらに、オンライン会議中に画面共有を行い、リアルタイムで議事録を作成することも、効果的な合意形成に役立つと考えています。

5.実践演習

最後のパートでは、「拡散と収束」のプロセスを効果的に使い分けていただくために、「会社の生産性を50%アップするには?」をテーマに議論をしていただきました。「拡散」とは多くのアイデアを広げて出し合う段階であり、「収束」とはその中から最も有効なアイデアを選び、具体的な解決策に絞り込むプロセスです。

議論のステップは以下の3つです。

STEP1 認識の共有と現状把握
STEP2 対策立案
STEP3 具体的な“行動計画”への落とし込み

実際に受講者の皆さまが議論し、作成・発表された表の一例をご紹介いたします。

各ステップでファシリテーターを交代し、議論終了後、各チーム3分以内で発表をしてもらいました。ロジックツリーを使って論理的に考えるチームもあれば、付箋を使ってブレーンストーミングを行い、ひたすら多くのアイデアを出すチームも見受けられました。

また、ホワイトボードに案を書き出して進めるチームもあり、それぞれ異なるアプローチで取り組んでいました。上手く合意形成までいけたチームや具体的な行動計画への落とし込みに苦戦したチームもありました。

それでは、実践ワークを終えての受講者の方の発表内容の一部をご紹介します。

認識の共有と現状把握:お金、人財、事業、ハード面に分類し、粗利が低い現状と新規事業が中々立ち上がらない現状を把握。
対策立案:売上向上施策や新規事業を増やしていくための人材育成を行う。
行動計画:ハード面にアプローチをする。個人評価の細分化。個人の学習計画をたてる。

認識の共有や現状把握を行う時間には、すぐに対策を立てず、まず原因をしっかり把握することが大切です。原因が明確になってから対策を考える方が、より効果的な解決策に繋がるからです。

特に「なぜなぜ分析」を行う際は、人のせいにしてしまう罠に陥りがちですが、不注意やミスに焦点を当てるのではなく、仕組みや業務手順に目を向けることが重要です。

議論が人を責める方向に進んでしまった場合は、ファシリテーターが適切に軌道を修正する必要があります。

ファシリテーション力アップ研修の感想のご紹介

今回のファシリテーション力アップ研修の受講者の方の感想をご紹介いたします。

  • 今回のワークを通じて、普段の会議では意外と曖昧なまま進行し、最終的な合意形成に至っていないことが多いと感じた。
  • 認識の共有や現状把握ができていないと、対策を立てることは難しいため、今後はその点を意識していこうと思う。
  • ワークが非常に充実していたので、チームに持ち帰り、承認や感謝の意を意識して伝え、今後のフィードバックに活かしていきたい。
  • インプットからアウトプットはできていたが、現状の整理といった中間の工程が抜けていたことに気づくことができた

カイラボはお客様のオーダーに応じたカスタマイズ研修をご提供します。

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