2023年発表 大卒新入社員の3年以内離職率

編集部

2023年10月20日、2023年度大卒新入社員の早期離職率が厚生労働省から発表されました。

今回の結果は、2020年に新卒採用された新入社員の3年目までの離職率を表したものです。

2020年といえば、新型コロナウイルスによる緊急事態宣言やリモートワークの拡大など大きな社会変化があった年でした。

その年に入社した新入社員の離職率には、それがどのような影響となって現れているのでしょうか。

今回は、2023年度の早期離職率を他の年代とも比較しながら解説します。

2023年10月20日発表の早期離職率最新データ

2023年10月20日、大卒新入社員の今年度における3年以内離職率が32.3%と発表されました。

これは、2020年に大学を卒業して新入社員として入った方が、2023年の3月31日までに離職した割合になります。

大卒の新入社員では3年以内の離職率が約3割だといわれていますが、今年もそれに大きく外れない結果でした。

(この記事の内容は、こちらの動画でも解説しています。)

大学新卒者の3年以内離職率 推移

では今年度の32.3%という値は、経年でいえばどの程度の水準なのでしょうか。

これまでの離職率の最高は2004年卒の36.6%、過去最低が1992年卒の23.7%です。

離職率は1992年のバブル崩壊で一度ぐっと下がり、そこからいわゆる就職氷河期世代の2000〜2006年に非常に高い水準まで上がりました。

それから2008年のリーマンショックあたりで再び下がり、その後もう一度上がって現在までほぼ横ばいという状況です。

しかし、直近の2年は離職率が連続で少し上昇してはいます。

今年は32.3%ということですが、経年でいえばほぼ例年通りといってもよいでしょう。

過去10年間平均よりもやや高い水準

もう少しデータを細かく掘り下げてみると、今回の32.3%は過去10年間の平均よりも若干高い水準にあります。

過去10年間の平均 32.04%

  1. 2017年卒 32.8%
  2. 2011年卒 32.4%
  3. 2012年卒・2020年卒 32.3%

しかし過去10年間の平均が32.04%というものの、実はかなり近い数字の中でしか推移していません。

過去10年で一番高い離職率でも32.8%であり、3位の2020年卒でも32.3%と平均と比べてもその差が

わずかなことから、誤差範囲といっても差し支えない数値です。

そういう意味からも、今年の32.3%は例年通りの離職率だといえます。

2020年4月〜2021年3月の離職が減少

直近3年間で離職率をみると、2年連続でわずかに上昇しています。

2年連続で上がっているのは事実ですが、経年でみればここ数年の状況とそれほど大きな違いはありません。

ただし、今回の離職率には特徴があります。

2020年卒の新卒者は、いわゆるコロナ入社の世代になるのです。

2020年3月頃、新型コロナウイルスによる感染症が一気に拡散し、4月には緊急事態宣言が出されました。

2020年卒の新入社員は、まさに入社時期にコロナによって自宅待機となり、会社によっては半年ほど自宅待機が長引きました。

新入社員研修として研修キットが自宅に送られ、研修は自主的に進める、そして週に1・2回ほどオンラインでミーティングするという非常事態が現実にあった世代です。

この影響は、実は3年以内離職率にも顕著に出ています。

ここ3年間の3年以内離職率は、それぞれ2018年卒31.2%、2019年卒31.5%、2020年卒32.3%です。それに加えて、それぞれの年代で入社1年目、2年目、3年目の離職率を出したデータがあります。

そのデータによると、1年目の離職率は2018年卒11.6%と2019年卒11.8%でそれぞれ近い値になっています。しかし、2020年卒だけは10.6%とかなり低い水準です。

2020年卒の1年目というのは2020年の4月1日から2021年3月31日まであり、まさにコロナの影響が強かった時期です。この1年間はどの世代においても離職率や転職率が低下した、いわゆる転職控えがあった時期なのです。

それでは2年目ではどうかというと、2019年卒だけ9.7%という低い水準になっており、2018卒と2020年卒は同じ水準です。

さらに3年目では、2018年卒が8.3%と低い離職率で2019年卒・2020年卒は10%前後になっています。

つまり、2020年の4月1日から2021年の3月31日までの期間にあたる時期では、どの世代でも離職率が低下しているということです。

その時期は2018年卒にとっては3年目、2019年卒にとっては2年目であり、2020年卒にとっては1年目に当たっています。

この2020年卒の離職率は、過去10年間で見てもほぼ例年通りの水準ではあります。しかし、コロナが影響した期間が最初の1年目だったことが離職率に反映しているとすると、離職率はむしろ上昇傾向にあるととらえることもできます。

来年の2021年卒ではこの影響がどうなるかが気になるところですが、今出ている1年目・2年目の離職率から、このままいけば今年度よりも離職率は少し上がる可能性が高いことが分かっています。

3年目の離職率が過去最高

さらに2020年卒の特徴として、3年目の離職率が過去最高であることが挙げられます。

2020年卒の3年目離職率は10.4%ですが、3年目の離職率が10%を超える世代はこれまでの結果を鑑みても非常に少ないです。

実際に10%を超えたのは、2016年卒と2019年卒を含めて過去に3回ありました。これは直近10年間だけではなく、過去に調査した全ての年を含めて2020年卒が3回目なのです。

さらに、2016年卒と2019年卒はいずれも10.0%。つまり10%ちょうどでした。

ちょうどのラインだったのが今回は10.4%ということで、ほんのわずかではありますが10%を超えています。

今まで1年目から3年目までの離職といえば1年目が最も多く、2年目でやや少なくなり、3年目が1番少ない離職率で合わせて30%ほどでした。

大まかな数字でいえば、1年目が11%前後ぐらい、2年目が10%ぐらいで3年目が9%ぐらい、合計で約30%という状況です。これが今回の2020年卒では、3年目で10.4%であり、2年目の水準である10%を超えています。

この理由には、1年目に転職控えをした影響があるかもしれません。しかし、それ以外に別の理由も考えられます。

今までは就職1年目ですぐ退職する割合が多かったものの、1年目を乗り越えればその後は辞めにくくなる傾向がありました。しかし、就職して3年目ほどで転職する機会ととらえて離職する人たちが出てきている、このような社会状況の変化が離職率に現れているのかもしれません。

3年以内の離職率だけで見ると例年とそれほど変化はありませんが、このように中身を見ていくと、少し変化がみられることが分かります。

まとめ

2023年度の大卒の3年以内離職率は32.3%でした。これは、2020年卒の新卒者のデータになります。

過去10年間の平均よりは、やや高い水準です。しかし過去10年間での平均は32%であり、33%を超えたケースはないため、ほぼ例年通りといって問題はないでしょう。

2020年卒の特徴として、1年目の離職率は例年よりも少ない傾向がありました。

この原因は何かというと、おそらくコロナの影響です。

これは直近の2019年卒・2018年卒の傾向を見ても、2020年から2021年の1年間だけが離職率が低いため、同様の影響によるものとみられます。

そのため、この特徴は2020年卒の属性的な特性や気質の特性というよりは、時代背景的にあらわれたものだといえます。

一方で、3年目の離職率が過去最高になっているのも特徴であり、注意すべき点です。

若手社員の離職を考える時に、3年以内の離職率には違いがなくてもすぐ後の4年目、5年目に辞めているケースがあります。

今までであれば、大体3年間を乗り越えれば離職しないのが前提でした。それが、5・6年勤めてから転職を考える、あるいは3年目前後で一度転職を考えてさらに2年勤めてから転職する…など、離職に関して様々な考え方が出てきているのです。

今年度の離職率からは、このような社会の変化が見て取れる結果になりました。