大企業ほど若手社員が辞めている?従業員規模別の早期離職の実態

編集部

企業の人事担当の方とお話しすると、こんな話しをよく聞きます。

「最近、離職する若手社員が増えている気がする」

「大企業ほどすぐ辞めるって聞くけど、本当?」

 

管理職の方や人事担当はこのような悩みや疑問を抱えている方も多いと思います。

では、本当に今の若手社員で辞める人は増えてきているのでしょうか? 大企業ほどすぐ辞めるのでしょうか?

今回は「従業員規模別の早期離職の実態」というテーマで、新卒の3年3割離職問題について解説していきます。

大企業の方が早期離職率は低い


ベンチャー企業の採用説明会で人事担当の方がよく言うフレーズにこんなものがあります。

「大企業に行っても3年で3割が辞める、だったらベンチャー企業でチャレンジしてみないか?」


人数が多い大企業の方が若手がどんどん辞めていき、社員が少ないベンチャー企業の方が辞めにくいイメージを持たれている方も中にはいるかもしれません。

しかし、実際には大企業の方が早期離職率は低くなっています。

厚生労働省が発表しているデータによれば大企業の方が早期離職しにくい傾向にあります。厚生労働省では、毎年、「従業員規模別」の離職率をデータとして公開しています。最新のデータから、大企業の離職率と中小規模の会社の離職率の違いについて見ていきましょう。

解説動画

こちらの記事の内容は動画でも解説しています。動画で視聴したい方はこちらをご覧ください。

事業所規模別の新卒3年以内の離職率


2020年に厚生労働省が発表したデータでは早期離職率の全体平均では32.8%です。「新卒は3割辞める」と聞いたことがある方も多いと思いますが、データ上でも3割ほどの学生が早期離職をしています。

次に、5~29人の従業員が30人に満たない会社ではどうでしょうか。

5~29人では51.1%

つまり、30人に満たないような組織では、50%以上が早期離職していることになります。

最後に、1000人以上の規模の企業のデータを見てみましょう。

1000人以上の企業では26.5%

と、全体平均の32.5%を切っています。過去のデータを見ても、1000人以上の大企業では3割を超えたことがありません。データ上では大企業の方が早期離職しにくいと言えます。

※厚生労働省のサイトにはより細かく事業所規模別の離職率が掲載されていますので、気になる方は是非厚生労働省のサイトをご確認ください。

大企業の離職率の最近の傾向

大企業の方が早期離職率が低いことはわかりましたが、ではこの傾向は過去も現在も変わらないのでしょうか?大企業の離職率のここ数年の傾向について解説していきます。

厚生労働省が発表している従業員規模別の早期離職率の推移をグラフに表したのがこちらです。

このグラフをみると「大企業の離職率が徐々に増加傾向にある」ことがわかるかと思います。その間、全体平均は大きく変動せず、横ばいです。

1000人以上の事業所の早期離職率は2009年以降上昇傾向を続けていますので、大企業と中小企業の早期離職率の差は若干小さくなりつつあります。

すぐにこの数字が逆転するとは考えにくいですが、大企業と中小企業の差が小さくなる傾向は今後も続いていくような気がします。

大企業の早期離職率が上昇傾向にある理由

では、なぜ大企業の早期離職率が年々高まっているのでしょうか?

大きな原因の一つとして、「成長予感の不足」 があるのではないかと考えています。

私たちカイラボ では、早期離職の3大要因として
・存在承認
・貢献実感
・成長予感
の不足があると考えています。

早期離職率の三大要因についてはこちらの記事で詳細を説明しています。

新入社員が早期離職する3つの理由と5つの対策


この早期離職の3大要因の一つ、「成長予感」が感じられずに早期に退職する社員が大企業に増えているため、大企業の早期離職率が年々増えてきていると考えています。

成長予感の不足の実際の例

私たちカイラボ では、これまで早期離職をした方に対して数多くのインタビューを行ってきましたが、「成長予感の不足」で離職した方は大企業に特に多かったと感じています。

具体的には
・チャレンジングなことが出来ない
・憧れの先輩がいない
などです。

チャレンジングなことが出来ない

大企業は安定しているからこそ、チャレンジングなことをやらせてもらえると思って入社したものの、全然チャレンジさせてもらえずに辞めた方もいました。

自分が若手だからまだチャレンジさせてもらえないわけではなく、社風や組織文化がチャレンジングなことをしないように映ったそうです。

憧れの先輩がいない

「数年後、あの先輩みたいになりたい」
と心から思えるような先輩や上司に出会えずに、早期離職した方もいました。周りの先輩をみても、大企業にいることに安心しきってしまい、憧れを抱けるような上司はいなかったそうです。

このように、「この会社にこのままいても成長できない」と感じたことがきっかけで辞める方が大企業には多い傾向にあります。

まとめ

今回は「大企業ほど若手社員が辞めている?従業員規模別の早期離職の実態」というテーマでお伝えしました。

大きく分けて
・大企業の方が早期離職しにくい
・大企業の離職率が増加傾向にある
の2点についてお伝えしてきましたが、イメージとは違っていたという感想を持った方もいらっしゃるのではないでしょうか。

大企業の離職率に限らず、若者の離職に関する事柄については世間で言われていることと実際のデータが大きく異なることが多々あります。

みなさんの会社で早期離職の対策を考える際には、データと自社の状況を比べてみてから施策を考えることをおすすめします。

他に早期離職に関するデータを動画や記事で配信していますので是非ご覧ください。