2018年大卒新卒者の8割が第一志望に入社しているというデータが日本生産性本部から発表されました。
超売り手市場と言われる中で、第一志望に入社している人が増えていることは違和感がないものの、さすがに8割は多すぎないか?というのがニュースをみたときの率直な感想でした。
同じように第一志望入社割合の調査結果がマクロミルのデータでもありました。マクロミルのデータと2018年入社の第一志望入社率は約6割(58.5%)。生産性本部の8割に比べると低いですが、過去最高であることは同じです。過去のデータを見比べてみると生産性本部の調査に比べてマクロミルの調査は20~30ポイント低い結果になっているので、今回の約80%と約60%という結果も妥当なものなのだと思います。数字の差自体は生産性本部は大規模企業が会員に多いことによる影響だと思います。
本記事の要約
早期離職と第一志望入社の間に関係はあるのか
早期離職対策を仕事にしている身として気になるのは、第一志望入社率が高まると早期離職率に影響があるのかという点です。
というわけで、早期離職率と第一志望入社率をグラフにしてみました。
早期離職率は2014年入社の分までしか出ていません。また、マクロミルの調査は2007年以前がみつかりませんでした。
グラフを眺めてみると、早期離職率は2000年代前半から微減で最近は横ばい。第一志望入社率は2000年代前半から微増しているように見えます。
グラフだと印象だけになってしまうので、エクセルで相関係数も出してみました。
3年以内離職率と第一志望入社率(生産性本部) -0.75
3年以内離職率と第一志望入社率(マクロミル) -0.70
相関係数がマイナス。つまりどちらかがあがるとどちらかが下がるということです。どちらも絶対値が0.7前後ということは、相関があるといえるのではないでしょうか。
相関はあっても第一志望入社だから辞めないわけではない
注意が必要なのは、相関関係があるから因果関係があるわけではないということです。
このデータからわかることは「第一志望入社率が高まると早期離職率は下がる傾向にある」ということだけです。決して「第一志望に入社すると早期離職する確率が下がる」わけではありません。
ましてや「第一志望に入社すると早期離職率しない」なんてことは言えません。
早期離職率と第一志望入社率が相関があるのはある意味で当たり前です。どちらも景気変動や求人倍率の影響を受けやすい指標だからです。過去の労働経済白書の中でも早期離職率は景気との関係性が強いと書かれていました。
今後の早期離職率はどうなる?
2018年入社の早期離職率は3年後にならないとわかりません。第一志望入社率が過去最高を記録した2018年入社組の早期離職率がどうなるのかは個人的には気になります。
マクロミルの調査では2017入社に比べて急激に第一志望入社率が上がっていますが、早期離職率が2017入社に比べて急激に下がるとは考えにくいです。
早期離職率自体は就職活動の時に売り手市場で、その後の3年間が急激に求人倍率が落ちた際に大きく下がります。わかりやすい例ではバブル世代の91年卒や92年卒、団塊の世代退職で就活は売り手市場でその後にリーマンショックが来た2009年卒などです。
2019年以降の景気がどうなるのか私にはわかりませんが、もし景気が大崩れするようなことがあれば第一志望入社率が過去最高の2018年卒は早期離職率が大きく下がるかもしれません。景気が悪くなのは歓迎する気にはなれませんが。