早期離職の理由ベスト3と企業が行うべき早期離職対策 -早期離職白書2019より-

編集部

 

新入社員の離職については昔から「七・五・三」といわれるように、入社後3年以内の離職率は中卒7割、高卒5割、大卒3割前後で推移してきました。 人手不足が深刻化し、人手不足倒産も出てくる中、早期離職は企業にとっても大きな問題です。 では、なぜ多く早期離職が起きるのか?その理由を多くの早期離職者にインタビューをしてきたデータからご紹介します。

新卒入社後3年以内に退職した人たちの本音をまとめたインタビュー&調査集『早期離職白書2019』の無料ダウンロードはこちら。

大卒の早期離職率は20年以上大きな変化なし

2018年発表の厚生労働省データより作成

上記の図は、厚生労働省が発表している大学新卒者の3年以内離職率です。

まず前提として知っておいて頂きたいのは、大卒の入社3年以内の離職率20年ほとんど変わっていないという事実です。

厚生労働省のデータによると、大卒の入社3年以内の離職率は、バブル崩壊後の1990年前半に25%を切る水準まで下がったものの、その後はほとんど同じ水準で推移しています。2019年現在においては、むしろ一時期に比べると下がっています。また、高卒の早期離職に関しては40%前後で推移しており、やや下がってきている現状です。

「最近の若い人はすぐ辞める」と思っている方もいるかもしれませんが、早期離職率は実は20年以上前から変わっておらず、高卒に関してはむしろ昔よりも辞めなくなってきています。

この事実を踏まえた上で、次に早期離職に至る理由について解説します。

早期離職の理由を2つにわけて考えてみる

カイラボでは早期離職の理由を

  1. きっかけ
  2. 決め手

の2つに分けて考えています。

きっかけとは、例えば、働く中で「ちょっとこの会社違うかもしれない」とか「この会社で自分はずっとやっていけないかもしれない」というように退職を考えるようになった、言葉通り「きっかけ」です。

もう一つの理由、決め手とは、「もう、この会社辞めてやる!」とか「よし、この会社を辞めよう」などのように、会社を辞める決断をした理由です。

早期離職対策を考える際、早期離職の理由を考えることはもちろんですが、理由も「きっかけ」と「決め手」に分けて考えてみることが非常に大切です。

なぜなら、多くの人は多かれ少なかれ会社に何らかの不満は抱いているものです。ですから、不満がある人が必ず辞めたいと思うわけではありません。また、「この会社を辞めよう」と思い転職活動を始めても、すぐ辞める人は少く、多くの人は転職活動をしながらも仕事を続けます。

ですから、会社を辞めた理由については

・最初に会社に対し違和感を覚えた「きっかけ」

・最後にその人が辞める決断をした「決め手」

の2つに分けて考えることが大切です。

私たちカイラボが作っている早期離職白書では、辞めた理由について、きっかけと決め手にわけてインタビューしています。

入社してから辞めるまでの「きっかけ」と「決め手」のタイミング

早期離職の理由ランキング

ここからは、早期離職の理由をランキングでご紹介します。当然、理由はきっかけと決め手に分けてのご紹介です。ここでのランキングはすべて、早期離職白書2019の内容です。

早期離職者が会社を辞めようと思ったきっかけランキング

1位 仕事のやりがい

2位 会社の風土

3位 上司・先輩の言動 / 自己成長が見込めない/ 人間関係

 

1位 仕事のやりがい

会社をやめようと思うきっかけのトップは「仕事のやりがい」です。

具体的には、

「この仕事を何のためにやっているのかわからない」

「自分の仕事が誰に役に立っているのかわからない」

といったときに、「仕事にやりがいを見出せない」という感情を抱く方が多かったです。

 

2位 会社の風土

第2位は「会社の風土」です。

辞めるきっかけとなった会社の風土とは、具体的には、

・体育会系過ぎて自分の意見を聞いてもらえない

・長時間の残業が当たり前になっているのに誰も疑問に思わない(指摘しない)

などが挙げられます。新入社員や若手社員があるがゆえに無言の圧力を感じてしまって「自分にはこの会社の風土が合っていない」と感じる人もいました。

また、入社を決めた理由が「社長が素敵だった」とか「人事の方が魅力的だった」とこたえた方は、入社後に一緒に働く人たちは社長や人事の方とは雰囲気が違って「風土に合わない」と感じていたが多いのが印象的です。

 

3位 上司先輩の言動 / 自己成長が見込めない / 人間関係

きっかけの第3位は同率で3つの理由が入りました。「上司先輩の言動」、「自己成長が見込めない」、「人間関係」の3つです。

上司先輩の言動には、

・上司や先輩の理不尽な態度

・仕事に対して前向きに取り組んでない上司先輩の発言

などが挙げられていました。

自己成長が見込めないには、

・このまま、この仕事を続けていても自分が成長しない

・もし、今会社が潰れたら他の会社では同じ給料がもらえない

・10年後に市場価値のない人間になってしまう

といった危機感を覚えて転職活動を開始した方も多くいました。自己成長が見込めないという理由を挙げたからは、いわゆる大企業からベンチャー企業に転職する方が目立ったのも特徴です。

同じく3位の人間関係については、

・パワハラからやセクハラがあった

・どうしてもウマが合わない人がいた

などが挙げられます。職場全体には満足していたけど、どうしても合わない人が一人でもいるとストレスが溜まるというケースもありました。

早期離職者が会社を辞めた決め手ランキング

ここまでは「辞めようと思ったきっかけ」をみてきましたが、ここからは決め手のランキングを確認していきましょう。

1位 他にやりたいことがみつかった

2位 仕事のやりがい

3位 会社の風土 / 上司・先輩の言動

 

1位 他にやりたいことがみつかった

離職を決断した決め手のトップは「他にやりたいことが見つかった」ことです。

この結果からわかることは、会社の風土や仕事内容に対する違和感や不満が辞める決め手になるのではなく、「他に自分がやりたいことが見つかった」ことで会社を辞める最終決断をしている方が多いという事実です。

「ほかにやりたいことがみつかったなら辞めるのは仕方がない」と思っている方もいると思います。私たちカイラボも、やりたいことが明確にある人を強引に引き留めることが良いことだとは思いません。とはいえ、最終的に「ほかにやりたいことが見つかった」という理由で辞めることを決断する人も、きっかけは別にあるケースも多いことは頭に入れておく必要があります。

2位 仕事のやりがい

第2位は「仕事のやりがい」です。辞めるきっかけのトップだった仕事のやりがいは、「決め手」では第2位という結果です。

きっかけでも決め手も上位にある「仕事のやりがい」はやはり早期離職に影響を与える大きな要因の一つと言えそうです。

 

3位 会社の風土 / 上司先輩の言動

決め手の第3位は同率で「会社の風土」と「上司先輩の言動」の2つです。

上司先輩の言動が決め手となった方の中には、会社に対する違和感を相談したときの先輩上司の言動が決め手になり、離職の決断をしたという方もいました。

早期離職白書2019より

会社はまず「きっかけ」を把握することが大切

きっかけと決め手のランキング結果からわかる通り、早期離職をする方のきっかけと決め手は必ずしも一致するわけではありません。

会社として早期離職の対策を考えるときには決め手も大事ですが、まずは

「きっかけができないようにするにはどうしたらいいのか」

を考えていくことが大切です。

そして、その上で会社を辞めるきっかけを持ってしまった社員の方たちに対して「会社をやめる決心をしないためにどうしたらいいのか」という決め手に対する対策を考える必要があります。

きっかけがわかっていなければ、決め手に対して打ち手を打っても対処療法にしかならないからです。

早期離職の三大要因

ここまで、早期離職の理由を「きっかけ」と「決め手」に分けてランキングでご紹介してきました。辞める理由は人それぞれとわかっていても、早期離職対策をしたい方々からすると「結局、なんで辞めるの?」というのが気になるものだと思います。

私たちカイラボでは、これまで数多くの早期離職者インタビューや企業の早期離職防止コンサルティングを行ってきた結果、早期離職に大きく3つの要因があると考えています。

早期離職の三大要因とは

 存在承認

 貢献実感

 成長予感

の3つです。

ここでは簡単にそれぞれの内容をご紹介します。

存在承認とは「自分がこの会社にいていいんだ」「この職場に必要とされているんだ」という自分の存在や能力を周りから承認をされている実感です。

貢献実感とは、自分自身が社会、顧客、会社、チーム、先輩や後輩に貢献できていると思えるかどうかです。例えば、営業成績は優秀な方でも『この仕事が本当にお客さんのためになっているんだろうか』と疑問を抱いている状態だと貢献実感は低いといえます。

成長予感とは「この会社で仕事を続けることによってなりたい自分になれるのかどうか」です。成長予感は、優秀な若手の退職に悩んでいる企業にとって成長予感は重要なキーワードです。なぜなら、優秀な方々はこの「成長予感の不足」によって一流企業や恵まれている会社を辞めていく傾向が非常に強いからです。

 

三大要因についての詳細はこちらの記事をご覧ください。

新入社員が早期離職する3つの理由と5つの対策

 

早期離職に対して企業が行うべき具体的な対策

ここからは早期離職の具体的な対策方法として、以下の3つをご紹介します。

1.採用の改善 

2.上司、育成担当者の育成力アップ

3.会社全体での人を育てる環境整備

 

それぞれについて、詳細をご紹介します。

1.採用の改善 

採用の改善とは簡単に言えば「入社前と入社後のミスマッチを防ぐ」ことです。入社前にイメージしていた業務内容や職場の雰囲気と入社後のギャップをどのように防いでいくかが非常に大切です。

ギャップを防ぐには「会社の本当の姿」を正しく事前に伝える必要があります。求職者に対し、自社の魅力をしっかり伝えることはもちろんですが、時には悪い部分やまだ整備されていない社内制度や課題を伝えることも大切です。

また、人事以外の方が採用に関わることも効果的です。

採用業務というと、人事の方が担当することが多いと思います。しかし、管理職の方や実際に現場で働いている方々が採用の場面から求職者や大学生・高校生と接する場面を多く作るで、入社後のイメージがしやすくなるため「入社前と入社後のミスマッチを防ぐ」ことにつながります。

事前の仕事シミュレーションでギャップの発生を防いだ事例

入社後のギャップを防ぐ方法として、選考の中で実際の業務に近いようなシュミレーションの内容を取り入れてみて「仕事が合っているのかどうか」を考えてもらう方法もあります。

この方法を取り入れたことで入社3年以内の離職率を大きく下げた内装業者の事例をご紹介します。

この企業では選考の途中で「現場実習の機会」を設けて3年以内の離職率を大きく下げました。この会社では「現場あってこその会社」という考えをもっており、どの部署の社員も最初は現場で仕事をしてもらうようにしていました。入社後には現場経験が必須になるからです。かつては、総合職の方々が現場配属中に退職してしまうケースも多かったそうですが、選考途中に現場を体験してもらうことで新卒入社3年以内の離職率は大きく下がりました。

現場実習を通じて選考を辞退する方は増えましたが、逆に現場実習を経た肩の入社3年以内の離職率や内定後の辞退率は大きく下がっています。

2.上司・育成担当者の育成力アップ

企業が行うべき2つ目のポイントは上司・育成担当者の育成力アップです。

カイラボでは、育成力アップの研修に非常に力を入れており、OJT担当者などを対象にした企業研修などを数多く行っています。そうした経験の中で、育成担当者に対する教育や研修の大切さを痛感しています。

なぜなら、育成担当になる方の多くが人材育成の専門的な知識やスキルがない状態で育成を行っているため、うまくいかない場合が多いからです。

新入社員の教育を担当する上司や育成担当者の方々は、現場では非常に優秀な方で実績を残している方々が多いです。しかし、「人材育成」という点では指導の専門的なスキルを持っていないため、自分が新入社員のときに受けていた教育をそのまま行ってしまい、新入社員が違和感や不満を抱いてしまうケースがよくあります。

OJT担当者や育成担当者に対して、

・今の時代に合った育成方法

・人材育成のコツやスキル

を研修など学ぶ場を用意することは早期離職の対策としても重要です。

 

3.会社全体での人を育てる環境整備

早期離職対策のためのポイント3つ目は「会社全体で人を育てる環境整備」です。

OJTの仕組みをつくっても、会社全体で人を育てる環境が整っていなければ、OJT担当者が一人で人材育成を抱えてしまい、育成担当者が疲弊してしまうというケースもあります。

私たちカイラボでは、職場全体での人を育てる環境支援のために、フィードバック型の日報を導入支援を行っています。フィードバック型日報とは、簡単に言えば、新入社員育成のために、職場の全員が役割分担をして曜日別にちょっとしたフィードバックを行う日報です。業務報告のための日報と異なり、人材育成を目標とした日報であること、必ずフィードバックを行うことが特徴です。

フィードバック型日報はあくまで一つの例ですが、成長予感の不足によって辞める方が多い会社であれば、会社の仕組みとして成長予感が高められるような方法を導入していくことも大切です。

まとめ 早期離職対策はまず3つの視点から

ここまで、早期離職理由のきっかけと決め手、早期離職の三大要因、早期離職対策のためにすべき3つのことをご紹介してきました。

この記事を読んでいる方の中で自社の早期離職対策を進めたい方は、自社の社員が辞めているきっかけと決め手を把握するとともに、3つの対策を進めてみてください。

私たちカイラボは、早期離職を改善することは企業だけでなく、働く個人の幸せにも寄与できると考えています。この記事がみなさんの早期離職対策実践の参考となり、企業も個人も幸せになるきかっけとなれば嬉しい限りです。