私たちカイラボでは、早期離職対策として多くの企業をご支援してきました。
私たちが支援している企業のほとんどが人材育成の一環としてOJTを実施しています。
しかし残念な事に、OJTの企画段階では目的を定めていても、いざOJTをはじめると目的が忘れられてしまうこともあります。
- OJT担当者がなんとなく、感覚で教育している
- OJT担当者の経験と勘に頼って指導している
といった、「なんとなくのOJT」になってしまっている企業もすくなくありません。
人材育成において、OJTはうまくつかえば非常に効果的です。
- OJT受ける、新入社員の成長を促す
- OJT担当者も成長ができる環境をつくる
といった、副次的な効果も期待できます。
しかし、「なんとなくのOJT」になってしまうと効果が上がらないだけでなく、場合によってはOJTが早期離職の原因になってしまう可能性もあります。
今回は、「なんとなくのOJT」から脱却するために必要な4つのポイントをお伝えします。
こちらの動画でも脱・なんとなくOJTの内容をご覧いただけます。
本記事の要約
ポイント1:OJT担当者への教育
OJT担当者に対して「あなたがOJT担当者になったからよろしくね」と伝えるだけで終わってしまい、人を育てるために必要な教育を十分に行っていないケースが多くあります。
また、OJT担当者への教育を行っている企業でも、
- OJTとは何か、Off-JTとの違い
- OJTを行ううえでの注意点
- ハラスメントにならないための注意点
などを人事の方が1時間程度で伝えて終わりというケースもあります。会社の未来を担う若手社員をしっかりと育てるためには、これだけでは不十分です。
OJT担当者の方は、それぞれの仕事内容についての知識と経験は豊富であったとしても、人材育成のプロではありません。多くの方が「どのように人を育てたら良いか?」を学んだことがないのです。ですから、まずはOJT担当者の方々に、「人の育てるための基本的な知識」を事前に教育ことが大切です。
人材育成の基礎知識については、以下の記事の中でもご紹介しています。
・上司の背中を見て育ては今も有効?若手社員の育成に大切な3つのポイント
・離職率を下げるカギは上司-上司のあり方が早期離職につながる理由と改善策-
ポイント2:フィードバックにおける「腹落ち感の醸成」
新入社員を指導するときにはフィードバックも非常に大切です。フィードバックで最も重要なことは、フィードバック内容が新入社員に腹落ちすることです。
そのためには、以下の順序でフィードバックを行うことが大切といわれています。
- 事実の通知
最近こういう事がありましたよね。最近ここが出来てる(出来てない)などの事実情報。
例えば「この一週間で2回遅刻しているね」とか「以前よりもメールで正しい敬語がつかえるようになった」など - 納得感の醸成、腹落ち感の醸成
OJT担当者が言っていることを納得してもらうために対話を行います。大切なことは対話です。論破ではありません。ときおり、新入社員を論破して黙らせることがOJTの役割と思っている方がいますが、論破したところで納得していなければ人は変わりません。
例えば「報告が遅いのは社会人としての基本がなっていないからだ!」と叱責するのではなく、「報告しにくい雰囲気を感じているのであれば言って欲しい」とか「報告がないことで重大な事故やミスにつながるかもしれないから、悪い情報ほど先に出しほしい。報告することであなたの評価が落ちることはない。」など、新入社員が自分の行動を改めようと前向きに考えられる状態にしてあげることが大切です。 - 期待の通知、次の行動の通知
納得感を醸成したうえで、今後の期待や「次からは必ず事前に報告してね」などの今後の行動を伝えます。
OJT失敗の多くは納得感の醸成不足が原因
OJTが上手く行かない企業の場合、多くが納得感の醸成が不足しています。
納得感の醸成が不十分なフィードバックが行われると、新入社員はその場はわかったふりをしていても、納得していないので行動は改善されません。仮に、一時的に行動が改善されたとしても、しばらくするとまた同じミスを繰り返してしまいます。
同じミスを繰り返すと、OJT担当者としてもおもしろくないため、思わず「何度言ったらわかるんだ!」などと言ってしまい、OJT担当者と新入社員の関係性が悪化していってしまいます。
そうならないためにも、納得感の高いフィードバックを行うことが重要です。
ポイント3:組織全体として新入社員を育てる体制作り
OJTは担当者一人でおこなうものではありません。職場全体が一体となって人材育成に取り組む必要があります。
OJTがうまく機能していない企業では、実際に以下のような状態が起きています。
- 新人育成の全てをOJT担当者1人で行わなければいけない職場の雰囲気
- 新人の上司も誰がOJT担当なのか把握できていない
OJT担当者は新人育成だけを専門におこなうわけではなく、自分の仕事も行いながら指導する必要があり、仕事の負荷も多くなり、当然ストレスもたまります。また、OJT担当者と新人の相性があまり良くないということも起こってしまうかもしれません。
そんなとき、同じ職場の仲間がOJT担当者をサポートしてくれる状態なのかどうかは人材育成においては非常に大切です。
ポイント4:OJT担当者のケア
最後のポイントはOJT担当者の方へのサポートです。
先ほども書いたように、自分の仕事に加えて指導育成もおこなうOJT担当者の業務負荷、精神的な負荷は決して小さくありません。実際、OJT担当者の方がメンタル面で不調を訴え、休職や退職に繋がってしまったケースもあります。
私たちが様々な会社で研修を実施させて頂くと、
- 最近の若い人たちはどういうことを考えてるのか分からない。
- 業務上の注意でもパワハラと言われてしまうのではないか?
- うちの会社の仕事は特殊だけど、自分にに教えられるだろうか?
- ジェネレーションギャップがあって新入社員とのコミュニケーションが難しい。
など、様々な不安をOJT担当者の方が口にされます。OJT担当者の方々はみなさん不安を抱えながら指導をしているからこど、上司や人事の方のサポートが重要です。
けれども実際にはOJT担当者の方へのケアは疎かになりがちです。
OJT担当者のケアを行うだけでも、「なんとなくOJT」だったものが目的を持ったOJTに変わっていくきっかけを作ることはできます。
OJT担当者自身も成長できるチャンスを職場全体でつくっていく
OJTはうまく機能すれば
- 新入社員の成長を促す
- OJT担当者自身も成長する
という効果を期待できます。
しかし、なんとなくのOJTでは新入社員が育たないだけでなく、最悪の場合は退職に繋がってしまうかもしれません。
そのため、今回挙げた、
- OJT担当者への教育
- フィードバックにおける腹落ち感の醸成
- 組織全体での人材育成体制づくり
- OJT担当者へのケア
以上4つのポイントから自社のOJTを見直してみてください。