2019年秋・厚生労働省発表の早期離職率最新データとデータを見る際の5つのポイント

編集部

※この記事は2019年秋に発表されたデータの記事です。2020年秋に発表されたデータについてはこちらの記事をご覧ください。
 → 2020年秋・厚生労働省発表の早期離職率最新データ

毎年秋に厚生労働省が「新規学卒者の離職状況」に関してのデータを早期離職率の最新データを発表しています。

これは、新卒入社で入社をした方が三年以内に離職した率を

  • 事業所規模別
  • 産業別
  • 最終学歴別(中卒、高卒、大卒、短大卒)

に分類し、まとめられたデータです。

私たちカイラボでは、新卒入社で入社をした方が三年以内に離職した率を「早期離職率」とし、日頃より講演や研修、コンサルティングを実施しています。

今回は

  • 2019年秋発表のデータの内、高卒、大卒に関するデータ
  • 発表データの数字を見る上での5つのポイント

を、厚生労働省のデータを日頃からの講演、研修の知見と併せてご紹介します。

2019年秋、厚生労働省発表の大卒・高卒の早期離職率

大卒者の早期離職率は32.0%

2019年秋の「新規学卒者の離職状況」データでは、大卒の早期離職率は32.0%です。

以前は早期離職については「七五三現象」などといわれていました。これは、新卒入社後3年以内の離職率について、

  • 中卒 約7割
  • 高卒 約5割
  • 大卒 約3割

という数字で長年推移してきたことから、「七五三現象」と名付けられました。

早期離職率推移大卒2019
(厚生労働省のWebサイトより)

今回発表されたデータでも、大卒者の3年以内離職率は32%ですから、約三割でほぼ例年通りであることがわかります。決して、最近の若者が昔に比べてすぐ辞めるようになったわけではないことがわかります。

なお、昨年の31.8%からは0.2ポイント上昇していますが、昨年からはほぼ横ばいと言っていいのではないでしょうか。

高卒者の早期離職率は39.2%

続いて、高卒者の早期離職率は39.2%です。

上記でもあげた「七五三現象」からもわかる通り、かつては「高卒新卒者の3年以内離職率はは五割」と言われていましたが、ここ数年は四割前後を推移しています。今回は40%を下回っており、経年の推移を見ても、高卒者の早期離職率は減少傾向にあることがわかります。

(厚生労働省のWebサイトより)

カイラボでは、早期離職の実態と対策について、早期離職白書2019の中で詳しくお伝えしています。ダイジェスト版の無料ダウンロードも可能ですので、是非ダウンロードしてご覧ください。

https://kailabo.com/corporate-site/document/rishoku

発表データの数字を見る上での5つのポイント

数字としては

  • 大卒新卒社の3年以内離職率 : 32.0%
  • 高卒新卒社の3年以内離職率 : 39.2%

ですが、この数字をそのまま鵜呑みしてしまうと、思い込みや誤解を生んでしまう可能性もあります。そこで、早期離職率の数字を見るうえで注意しておきたいポイントを5つご紹介させて頂きます。

ポイント1.大卒の早期離職率は変化していない

先程も書きましたが、大卒の早期離職率は大きく変化していません。

また、過去の数値を見ると、2000代では35%前後で推移をしていた時期もあります。一方、ここ数年は30~32%を推移しています。

「最近の若い人はすぐ辞める」というイメージをお持ちの方もいるかもしれませんが、数字でデータ上で見ると「最近の人が昔に比べて辞めている訳ではない」というのが大きなポイントです。

ポイント2:高卒の早期離職率は年々下がってきている

こちらも先程書きましたが、高卒者の早期離職率は減少傾向にあります。かつては「七五三現象」と呼ばれていた通り、高卒の早期離職率は約5割だった時期もありますが、今年は4割を切る水準になっています。

明らかに高卒新卒者は昔よりも辞めなくなってきています。

もし、「最近の高卒の人すぐ辞めるよね?」と思っている方は注意が必要です。日本全体では高卒新卒者は辞めなくなってきているのに、あなたの周りの高卒新卒者は辞めているのであれば、あなたの会社やあなたの知っている会社がそれだけ魅力のない会社なのかもしれません。

ポイント3:早期離職率は企業規模による差が激しい

大卒の早期離職率は32.0%ですが、実は大企業と小規模企業では早期離職率に大きな差があります。

2019年秋に厚生労働省が発表した「新規学卒者の離職状況」では企業規模別の早期離職率も発表しています。そのデータを見ると、

  • 大企業(従業員1000人以上):早期離職率が25.0%
  • 小規模な企業(従業員5人未満):早期離職率が57.7%

と、企業規模の応じて早期離職率に大きな差があることがわかります。ちなみに、100人~499人で32.2%と全体平均とほぼ同じ水準です。

過去の数値を見ても、「企業規模が大きければ大きいほど早期離職率が低い」という傾向は変わっていません。

人によっては、中小企業の方が「経営者との距離が近い・社員同士の距離が近いため辞めにくいではないか?」と思っている方もいますが、データ上はそんなことは言えません。
「大企業の方が早期離職率が低い」というのは事実なのです。

ポイント4:早期離職率は業種による違いも激しい

大卒者の早期離職率は32.0%と冒頭でお話させて頂きましたが、これは様々な業界を横断しての数字です。当然、業種によっての差もあります。

業種別に見た時、最も早期離職率が高い業界は「宿泊業飲食サービス業が50.4%」です。(「その他の業種」を除く)

宿泊業や飲食業は離職率が高いイメージがあると思いますが、実際にも50%を超える高い水準となっています。

一方で、早期離職率が10%を切っている業界もあります。

早期離職率が最も低いのは「電気・ガス・熱供給・水道業で9.2%」です。いわゆるインフラ系と呼ばれる業種です。

宿泊業飲食サービス業 : ほぼ毎年早期離職率が一番高く、ほぼ5割
電気ガスなどのインフラ: 毎年低く、1割前後

というのは、過去の数値を見てもほぼ同様です。

一概に早期離職率といっても業種による差が大きいため、平均と比較するだけでなく、業種別の平均と比較してみることをおすすめします。業種別の早期離職率も厚生労働省のWebサイトからご覧いただけます。

ポイント5:地方別、売上別などの差も現実には存在するはず

ここまで、事業所規模別と業種別で早期離職率に差があることをお伝えしておきました。実際には他にも、地方別の差、売上規模別の差、利益率別の差などもあると思いますが、厚生労働省からはそういったデータは発表されていません。

ただ、実際には「地域によって早期離職率の差が生じている」場合や「飲食業の中でも、大企業と中小企業での差が大きい」可能性は充分にあり得ます。

平均値との比較で一喜一憂せず、早期離職対策は自社の状況に合わせて行いましょう

今回は厚生労働省が発表したデータから早期離職率についてお伝えしました。

今回のデータから「最近に人は根性がなくて昔の人よりもすぐ辞めてしまう」というのが間違いであることはわかりました。

一方、データだけで「だから最近の人ってこうだよね」と決めつけてしまうのも危険です。また、「うちの会社は平均よりも早期離職率が低いからOK」と考えるのも危険です。

平均との比較で一喜一憂するのではなく、

  • 目の前にいる社員の方々がどういう考え方の人なのか?
  • 自分の会社では何が起きているのか?
  • 自分の会社の三年以内の離職率の推移はどうなっているのか?

などを把握した上で、「社会全体では早期離職率は、大きく変化していない。」という事実に対して、「自社の早期離職が上昇傾向にあるのは、どのようなことが起きているのだろうか?」と考えるヒントにしてください。