新型コロナウイルスの影響や働き方改革の推進などの社会情勢もあり、在宅勤務が普及してきています。
今までは対面で行っていた新入社員の方への指導や研修もビデオ通話などを通じてオンラインで行わなくてはいけない状況に迫られている企業も多いのではないでしょうか。
今回は、オンラインでの部下指導や新人研修を行う際に注意しておくべき3つのポイントをご紹介します。
3つのポイントとは
1 オンラインの場合、感情情報が伝わりにくい
2 能力的信頼の獲得がしにくい
3 コミュニケーションは総量よりも頻度が大切
です。それぞれのポイントを解説します!
本記事の要約
ポイント①「オンラインの場合、感情情報が伝わりにくい」
1つ目のポイントは、オンラインでのコミュニケーションは感情が伝わりにくい点です。はじめに、なぜ感情が伝わりにくいかについて解説します。
オンラインでは感情情報が伝わりにくい理由
「メラビアンの法則」を聞いたことがあるでしょうか?
メラビアンの法則とは、人がコミュニケーションの中でどんな情報を元に相手の感情を判断しているのか、その割合を示した法則です。
メラビアンの法則によれば、人はコミュニケーションの際に
「言語情報7%、聴覚情報38%、視覚情報が55%」の割合で、相手の感情を判断しています。
たとえば、「ありがとう」という言葉を笑顔で穏やかなトーンで言われた場合と、無表情、低い声で抑揚をつけずに言われた場合とでは、同じ「ありがとう」という言葉であっても受ける印象は異なります。
「ありがとう」という感謝の言葉でも、言葉を発した人の表情や声の抑揚の付け方によっては感謝の意味ではなく、嫌みや嫉妬を意味に受け取られてしまうことがあるのです。
受け取り手にとって最も影響が大きいのは、顔の表情などの視覚情報です。つまり、どんな表情で「ありがとう」と言っているのかによって、本当に感謝しているのか、それとも口先だけでお礼を言っているのか、言われた側は判断しているのです。
メラビアンの法則を、チャットやメールに置き換えて考えてみると、なぜオンラインの場合に感情情報が伝わりにくいかが分かると思います。
チャットやメールは文字だけのやりとりですから、視覚情報と聴覚情報がなく、文面の「言語情報」だけになるからです。つまり、対面のコミュニケーションに比べて9割近くの情報がカットされている状態です。
そのため、メールやチャットなどのオンラインでのコミュニケーションでは、
・自分は怒っているつもりはないのに、相手は怒られていると感じた。
・感謝を伝えているつもりなのに、全然伝わっていなかった
などの誤解がよく起こります。
最近ではビデオ会議などで表情が伝わりやすくはなっていますが、対面に比べると細かい表情は読みとりににくいため、感情を伝えたり読み取ったりすることは難しいでしょう。
メールやチャットのコミュニケーションで気を付けること
では、メールやチャットなどがメインのオンラインでのコミュニケーションにおいて、どうしたら感情をうまく伝えることができるでしょうか?
たとえば部下に対して、
「次回からは◯◯◯を注意してほしい」と伝える際。そのまま「次回からは○○について注意してください。」と書くのではなく、
・びっくりマークやお辞儀などの絵文字を使う
・文章の後にスタンプを入れる
・語尾に伸ばし棒を入れて、柔らかい印象をつくる
などの工夫をすると、部下や新入社員の方にもきつい印象を与えません。
また、文章の冒頭にカッコ書きで「(全然怒ってないんだけど、メールだときつく聞こえるかもしれないけど)」などの前置きをした上で伝えてあげるなども方法として良いと思います。(カイラボではこれをやるメンバーが多いです。)
メールやチャットでの部下指導では、想像以上に相手にきつい印象を与えてしまうことがあります。そのため、絵文字や前置きなどで感情情報の補足をしっかりと行うことを心がけて、コミュニケーションを行ってみてください。
ポイント② 上司の能力的信頼の獲得しにくさ
2つ目のポイントは、オンラインでの研修は部下や新入社員からの能力的信頼が獲得にし悔い点です。
テレワークでは上司の能力的信頼の獲得しにくい理由
部下から上司への信頼は、大きく2つあると言われています。
2つの信頼とは「人間的な信頼と能力的な信頼」です。
同じ職場で上司と部下が仕事をしている状態であれば、上司の雰囲気や職場での立ち振る舞いなどを見て、部下は上司に対して「能力的な信頼」を抱いたかもしれません。
しかし、リモートワークや在宅勤務が中心となると、仕事をしているときの雰囲気や職場内での他の人との人間関係は見えにくくなってしまいます。能力的信頼を獲得するにはアウトプットの質、量、スピードが重視されますが、仕事によっては管理職は具体的なアウトプットを部下が見れる形では出さないケースもあります。そうなると必然的に、部下としては「上司は何の仕事をしているんだろう」と思ってしまいますし、能力的な信頼も獲得しにくくなります。
また、リモートワーク時に使用するチャットやビデオ通話ツールなどを上司がうまく操作できない場合には「上司はこの程度のツールも使えないのか」部下に思われてしまうかもしれません。
上司の能力的信頼が獲得しにくい場合の対策
チャットやビデオ会議ツールをつかいこなせないなど、上司の方がITリテラシーが低い場合、部下からの能力的信頼を得るためのハードルはあがります。
能力的信頼が十分ではないのに、「私が上司なのだから、私の言うことを聞きなさい」と言っても、部下を納得させることは難しいでしょう。
能力的信頼の獲得が難しいのであれば、もう一つの信頼である「人間的な信頼」を獲得できるように意識してみましょう。
たとえば
・この上司は、しっかり話を聞いてくれる人だ
・この上司の話すことは一貫性があってブレない
・仕事に対する考え方が尊敬できる
など人間的に魅力がある、尊敬できると思ってもらえる言動をこころがけることです。
また、能力的な信頼を獲得するために、チャットやビデオ通話の使い方を勉強するなどしてITリテラシーを高めていくことにも取り組んでみてもいいかもしれません。
ポイント③ コミュニケーションは総量よりも頻度が大切
3つ目のポイントは、オンラインでのコミュニケーションは、総量よりも頻度を重視するという点です。
オンライン研修の普及でコミュニケーションの頻度は落ちる
同じ職場で同じ時間仕事をする今までの働き方であれば、
・部下と昼ご飯を食べにいって、コミュニケーションを取る
・何気なく話しかけて雑談をする
・帰りに飲みに行って、会社では話せないことを聞く
など、部下とコミュニケーションを図ってきた上司の方も多いのではないでしょうか。
リモートワークが主流になってくると、こういった今までのコミュニケーションは難しく、結果的にコミュニケーションの量が減っていきます。
コミュニケーションは総量よりも頻度が大切
心理学の用語で「ザイオンス効果」という心理効果があります。ザイオンス効果とは、別名「単純接触効果」とも言われます。簡単に言えば「接触が増えれば増えるほど、相手の好感度・印象はよくなる」という効果です。
ザイオンス効果を部下とのコミュニケーションに当てはまれば、「一度のコミュニケーションに多くの時間を割くよりも、1日にどれだけコミュニケーションを取ったか」の方が信頼関係を築く上では大切です。
たとえば、LINEなどのチャットツールでスタンプを送るだけでもいいと思います。コミュニケーションの質としては決して高くなくても、お互いにやりとりをしている回数が多くなるとそれだけで信頼関係を築くことができるからです。
信頼関係を築く上では第一印象が重要
ただし、ザイオンス効果は注意点があります。
接触が増えれば増えるほど印象が良くなるというザイオンス効果ですが、この効果が有効なのは「最初に良い印象を抱いていた場合」である点です。
最初に好印象を持った相手とはコミュニケーションの回数が増えるに従って印象は良くなりますが、最初に印象が悪かった場合には、「コミュニケーションをとればとるほど、印象が悪くなってしまう」ということが起きるのです。
ですから、上司が部下にどういう第一印象をもたれるかは非常に大切です。
・見た目や言葉遣い
・新入社員への最初のちょっとした声かけ
・最初の自己紹介の仕方
など、良い印象を抱いてもらえるように意識してみてください。
その上で、コミュニケーションの総量よりも頻度を大切にしてみましょう。
在宅勤務でもオンラインでのやりとりでも部下指導はできる!
今回、オンラインでの部下指導での気を付けるべきポイントして
- オンラインの場合、感情情報が伝わりにくい
- 能力的信頼の獲得がしにくい
- コミュニケーションは総量よりも頻度が大切
の3点をお伝えしました。
今後は、リモートワーク、オンライン会議、オンライン研修など普及していき、働き方もどんどん変わっていくはずです。
今まで対面だと当たり前に出来ていたことが出来なくなる可能性もあるため、上司や管理職の方にとってはストレスや苦痛を感じることもあるかもしれません。
しかし、上司や先輩社員の方々が変化に適用していかなければ、その部下や若手社員は育っていきません。
「在宅だから部下育成が出来ない」ではなく、今回ご紹介した3つのポイントをしっかり意識しながら今までの対面と同じように部会育成に取り組んでみてください。